【中編】幼馴染(女子)と身体が入れ替わった結果、幼馴染が俺のことを好きだと知ってしまった!

羊光

第1話 入れ替わってる!

「これはどういうことかしら?」


 ソラはとても驚いていた。


「なんだか、変な感覚だな。自分の顔が目の前にあるっていうのはさ。男女が入れ替わるって、漫画とか映画にあるけど、まさか自分たちで体験するとは思わなかったよな」


「大地、なんで、そんなに冷静なのよ!」


 ソラは俺の体を強く揺さぶった。


「おいおい、これは君の体なんだ。元に戻った時のことを考えて、もっと大切に扱いなよ」


「うるさいわね。こんな状況、発狂したくもなるわよ! 私たち、入れ替わっているのよ!?」


「君の名は? って、言えばいいかな?」


「ボケるなんて、余裕があるわね!」


 ソラはいつものように俺を叩く。


「痛い! 加減しろ! お前、今俺の体! 高校三年生七月まで野球でそれなりに鍛えていたんだぞ!」


 俺はかなり必死に訴えた。


 いつものソラの文芸部パンチなら何ともない。

 だけど、元高校球児のパンチは普通に痛い。


「ご、ごめんなさい。つい、いつもの癖で……」


 ソラは本気で申し訳なさそうだった。


「とにかく、一度、状況を整理しよう」


 俺とソラは現在、登校途中にある神社にいる。

 神社の石段に腰を下ろした。


 今日はいつものように二人で登校中、いきなり雷雨に襲われ、一旦、神社に避難した。

 直後、超至近に雷が落ち、二人が入れ替わってしまう。


 とここまでの出来事を整理してみたが……


「うん、わけが分からないわよ!」


 ソラは頭を抱えた。


「よし分かったぞ」


 対して、俺はドヤ顔で言ってやった。


「私の顔で気持ち悪い表情にならないでくれるかしら?」


「そんなことを言うと泣いちゃうぞ」


 俺はぶりっ娘っぽい言い方をしてみた。


「気持ち悪いからやめてくれるかしら?」


 直後にソラは俺(ソラの体)の右肩を漫画なら「メキメキ」という擬音を使われそうなくらい思いっきり握った。


「痛い痛い。ソラ、いいのか!? 自分の体だぞ!」


「……それで何が分かったの?」


 ソラは俺を解放してくれる。


「さっきの落雷。実は俺たちを直撃していたんだ。それで俺たちの体は四散して、死亡し、現在は霊体のような状態で……ソラさん、なんで両手の関節をパキパキとさせているんですか!?」


「大地の理論が正しいか、確かめる為に首を絞めてみようと思ったのよ?」


「馬鹿な真似は止せ!」


 まぁ、さっきから痛いし、苦しいから多分生きている。


「とにかく、一旦、家に帰ろうか。こんな状態じゃ、学校どころじゃないだろ?」


 俺は立ち上がった。


「駄目……」とソラが呟く。


「駄目ってなんだよ?」


「無遅刻無欠席じゃ無くなっちゃう……」


 それを聞いて、俺は溜息をついた。


「そんなことか。それはしょうがないだろ」


「でも……」


 ソラは歯切れが悪かった。

 学校へ行くことを諦めていないようだ。


「じゃあ、行くか」


「えっ? いいの?」


「ここで強引に欠席したら、ソラが落ち込みそうだからさ。それにいつ戻れるか分からないから、ずっと学校を休むわけにも行かないだろ。三年生二学期の九月この時期にさ」


「あ、ありがとう…………!」


 ソラはとても安心したようだった。


「だとしたら、早く学校に行こう。遅刻もしたくないんだろ?」


「うん!」


 俺とソラは神社の石段を降りて学校へ向かう。


 時間がギリギリなので俺たちは走った。

 学校まで大した距離じゃないはずだが…………


「はぁ……はぁ……」


 俺はすぐに息切れを起こした。

 分かっていたが、この体ソラ、って体力無さすぎだろ……


「何しているの、早く!」


 対して、俺の体を得たソラはとても元気そうだった。


「ソラ、お願い……俺の荷物を持って……」


 俺はバッグをソラに渡そうとする。


「だらしないな……」


 だらしないのはお前の体だ!


 いやらしい意味ではなく、運動能力的な意味である。


「それにしても大地の体、すっごく動きやすい。体が軽い、もう何も怖くない、って感じだわ」


 じゃあ、駄目じゃないか?

 元ネタのアニメは知らないけど、死亡フラグらしいじゃん。


「それにしてもお前の体、本当に重い……」


「女の子の体を重いって言わないでよ」


「特にこれが重い……」


 俺はあまり考えずに胸を触った。


「おお! 凄い!」


 昔、一緒にふろに入った時はぺったんこだったのになぁ……

 女の子って不思議だ!


「凄い! ……じゃない!! 何、ナチュラルに私の胸を触っているのよ!?」


「今は俺のだ!」


「うっさい! って、本当に時間が無くなって来たわ! 荷物は持つから、頑張って走って!」


 結局、俺は絶望的な運動能力のソラの体で学校まで必死に走った。


 俺の努力は無駄にならず、予鈴とほぼ同時に教室へ到着する。


「大地……じゃなかった。ソラ、バッグ!」と言いながら、ソラがバッグを俺に向かって投げる。


「わっ、うわっ!」


 俺はバッグをどうにか受け止めた。


 一言、文句を言おうとしたら、もうソラは自分の教室へ行ってしまった。

 

 俺が自分の席に着くと隣の席の田口が驚く。


 んっ?

 どうして、そんなに驚いて……あっ!


「ソラ……じゃなくて、大地! 教室、逆だ!」


 いつもの癖で、お互いに自分の教室へ行ってしまった。

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