ぬいはモフるか焼くしかない
鱗青
ぬいはモフるか焼くしかない・前編
まぁ、油断があったのは否定しない。私にも責任の四分の一、いや半分、うーん…大体のところ悪かった。自分のミス。粉飾せずに申告致します。
ここ数週間かけた大仕事がアガって、社長のポケットマネーから打ち上げ代がでた。ちょっとハイになっちゃった仕事仲間とちょっと羽目を外した宴会をして、飲んで騒いで歌ってスポッチャ行って、締めにラーメンを食べて…
数少ない男の社員なんかは女性社員といちゃつきながら、ホテル街に消えて行ったりして。
オトコとオンナとか。好きだの恋しただの、ヤったとかヤラないとか。そういうの全般、面倒くさいし苦手。
まー仕事としては?それがゴハンのためでもあるし?しゃーないかな、やってやるか!…って感じではある。なんせウエディングプランナーなんて職種だからね。
某少年漫画のキャラじゃないけど「ただそれだけのこと」ってわけ。
「美由紀ちゃんそういうの、男嫌いって言うんじゃないかなぁ?あ!実は…もんのすごい面食いなんでしょ!絶対そう!だからそんな小柄で可愛いのに彼氏できないのかもよ」
「すいませぇん、私、男の人の外見の良し悪しとか興味ないんですよ〜子供の頃なんかぬいぐるみに囲まれてて〜」
「へ〜ぇ、そうなのぉ。じゃあ今も実家に?ぬいぐるみがたくさんあったりするんだ?」
「灰になりました。火事で、全部」
ニヘラ顔で知った風なことを言ってきた男の先輩にも適当に笑って流した(ラリアットからの植え込みへ裏投げをかましてやりたかったけど、退職する際の楽しみにとっておく)。私は笑顔のまま家路につく。明日からはやっとの連休。しかも贅沢に五連休なのだ!
予定してあるのはおもにルームシェア中の女友達との女子会(恋愛相談したいらしい!仕事よりも身が入りそう)に、趣味のスポーツ観戦、カフェで限定ランチとデザート、それに通信ゲーム。インドア・オタク・非恋愛主義の私にとっては夢の生活。サーモンランは明日の夜もあるし、Twitterのフォロワーさんは腕に覚えありの
急行電車に飛び乗り一路、愛すべき我が地元、川崎へ。
入社してから三年に渡り住んでいる女性専用マンションに帰ろうと繁華街を歩いていた。
駅から続く繁華街は、日付が変わる前の土曜ということもあり、宵闇を明るい色で重ね塗りしたような電飾の光輝を浴びながら大人達が闊歩する。私はひとり、鼻歌まじりにヒールを音高く鳴らしながら、とある神社の前を通り過ぎた。
で、踵を返す。ちょっとだけ戻り、神社の前へ。石段を上って鳥居をくぐり、お賽銭を備えて柏手。
「今日も
顔を上げる。大鈴の後ろにある巨大な絵馬にプリントされた、キティちゃんのかすれかけた姿が私を見下ろす。そう、ここは某サンリオが建てたキャラクター神社。建物は少し古めかしくなってきてはいるけれど、
父方のお爺ちゃんの家から火事に焼け出される形で引っ越してしまい、紆余曲折あって私の家族は現在、千葉県住まいだ。私だけここへ十年ぶりに戻ってきたのは、単純に職場が近かったのと子供の頃のノスタルジーに惹かれたのと物価の安さと手頃な賃貸が見つかったのと…まぁ偶然のようなもの。
この神社は私が生まれる前から既に商店街のど真ん中にあって、幼い頃はよく両親に連れられて縁日に来た覚えがある。
うん、ルーチン終わり。このお参りはほぼ毎日続けている。なんとなく、ゲン担ぎで。
で、振り返り参道を戻る。鳥居をくぐりかけて…
「お、わぁっ⁉︎」
ヒールが石段上を滑った。一瞬全てがスローモーションになる。
私は思った。あ、これ死ぬかも。
だって頭からいっちゃってるし回転力中途半端で足りないから、クルンと回って尻もちつくとかないだろうし。頚椎ポッキリコース。
脳裏に一瞬見えた。水滴、炎。
これアレね、走馬灯───
幼稚園の頃火事にあったときの記憶。引っ越すことになったきっかけ。自宅の放火全焼…
どうせなら、もっと楽しい記憶ならいいのに。
「ぐわぁっ」
ん?何この太くて変な声。
どぶちゃ。
側頭部に生あったかくて、気持ち良い弾力。深みのある香気が鼻奥をくすぐった。
「あっ
肩を打った。肘を打った。腰の後ろを思い切り叩きつけた。───でも、不思議と骨折はしていないみたい。
私はよろよろと立ち上がって、自分の手足を確認した。汚れたけど、左袖口のボタンが吹っ飛んでるぐらいで服は破けていない。というか、頭の下に何かが挟まりその加減で受け身になったらしく怪我らしい怪我すらしていない。
「あンの〜大丈夫っすか?思っくそ下敷きになっしゃっすけど」
若い子なのだろう、非常に聞き取りづらい滑舌のいたわり…だけどありがたくて恥ずかしくて私はすっくと立ち上がった。
「え?ええ、はい、あっハイ、平気です全然大丈夫です!えとその、助けてくれてありがとう!」
慌てて両手を振りながら振り向くと、そこには誰も立っていない。少し離れて歩いていたサラリーマンがギョッとしていた。
「うッわ、これぇ、かな〜り傷開いてゃっすね。完ッ全にほつれかかってっすわ」
「え?そうなんです?どこ?」
自分のスーツを確認しつつ、今度は反対側を向いた。しかし私の眼前には誰もいない。そちら側は神社の石段…
いや…
…え?
石段を下りきったところ。
地面との境目に、足を投げ出してへたり込んだコロッコロに丸いワニのぬいぐるみが置いてあって。
で、その傍から跪いて助けようとしているらしい?黄色い狸のぬいぐるみがいて、私を恐怖の顔相で見上げている。
ぬいぐるみ。そう───まごうかたなき、ふわふわもこもこの、手足なんか指とか作られてなくて丸まってるだけの、
「ぃっ、い、ぃぎゃああああああ!」
「ひっ、ひええええええええええ?」
黄色い狸が犬も狂い死にしそうな絶叫。私もつられて悲鳴を上げてしまった。
「あのー、どうかしましたか?」
後ろからおずおず尋ねられる。この恐怖体験が夢ではないと分かる衝撃と、誰かがいてくれる安心感に動転しながら私はその相手にこの驚天動地の事態を説明しようとした。
「あ、あの、あのそこの、それ、ぬいぐるみが、しゃべ、しゃべってて…」
言いながら私の言葉が尻すぼんでいく。
「ぬいぐる…み…が……」
「まさか…嘘でしょ…」
口に手を当てながら相手が見ているのは私のほう。そして、その相手はこれまた真っ赤な犬の、ぬいぐるみ。
「そンの人間、俺っぁちの
「え、いや、そう言われましてもね⁉︎私仕事帰りでして、今夜は彼女とデートで」
「ンな
「そ、そうですね。だ、誰かー‼︎」
黄狸、ワニを放してゆらりと短い足で立ち上がる。
赤犬、胴体に埋まった喉から信じられない声で助けを求める。
ワニ、私を睨みつけている。よく見たら額に大きな『ノ』の字傷がある。
うん。逃げた。
だって、それ以外の選択肢ある?いやない(反語)。私の脳内モニターに表示されていたコマンドは【逃げる/逃げる】って感じ。
本能的に振り返る。やー、ホラーゲームとかなら絶対にやっちゃいけない行為なんだけど。大体すぐ後ろにクリーチャーとかゾンビが来てて、やられる!…なんだけど…
そこはぬいぐるみ。私の脚力にはついてこれないようだった。高校でハンドボール部のエース、走り込みでもトップだった自分に感謝!
「そこのお前っ!待っしゅおっ‼︎」
この世の誰が必死の形相で追いすがってくる人外を待つというのか?いや、そんなバカはいない。
私の部屋は繁華街から商店街に入ったすぐ、一階にコロナ不況も乗り切った根性も体型も太いお爺さんが営業している豆腐屋のある、五階建てマンション。の、三階。
エレベーターに駆け込んでスイッチをガチャガチャ押して、降りる時もドアに当たりながらまろび出る。左に曲がり、角部屋に飛び込む。
玄関を閉めたらずっと息を詰めていたのを思い出して、爆発みたいに咳き込んだ。滝汗がメイクを押し流していく。
ルームシェアしている女友達のスニーカーがきちんと並べてあった。もう安全だ。帰ってこられた…
膝立ちからの四つん這い。廊下をずりずり進む。
リビングには誰もいない。2LDKの間取りの二部屋をそれぞれの個室にしているのだ。あの子はもう自室で
シャワーを浴びて、自分の部屋でベッドへダイブ。横になると急に睡魔が押し寄せた。
きっと一眠りすれば酒が見せた幻覚なのだと悟るだろう。それから五連休を楽しむのだ。なんせ働きづめだったのだから。
目覚めは爽快。部屋着のまましばらく布団でぐだぐだLINEなんかしちゃったりして。
起き出してリビングに行ったら、エビのシーザーサラダとあとは焼くだけになっているピザトーストがラップをかけてあり、コーヒーマシンはなんとこの時間にタイマーセットされていた!
ひゃあ〜ありがたい!も、ママ!これはもう嫁を超えてママ!
おいしくありがたく頂いている間にメール。サーモンランの予定が先延ばしになった。あらら。
でもまあいいか。それなら今日は仕事の忙しさにかまけてサボっていた家事当番をやっつけて時間を潰して、昼ごはんは私の行きつけのカフェのほうへ行こう。うん。
食器を洗って片付ける。全部の部屋に掃除機をかける。自室のパソコンでのんびりYouTubeを眺めているうちにもう昼近くになっていた。
おでかけファッションはシンプルなハーフパンツにシャツ。アクセントはキャップ。姿見の前でチェック。うん、スポーツカジュアルって感じかな。
商店街のカフェ『ぽるこ』は食べログなどのグルメ系情報サイトにはなぜか載っていないが、オムカレーが絶品の平成レトロな店だ。いつ行っても満席ではなくて、SPEEDかモー娘。がかかっている。滅多に姿を見せないオーナー兼店主の趣味よ、と女友達からは聞いている。
「こんにちはー!いつものとこもらいますねー」
「はーい。お冷やすぐ持っていきますねー」
マスターのいつもながら渋い声を聞きつつトイレから一番遠い窓際の席につき、メニュー立てからランチメニューのシートを抜いて眺める。
エッグベネディクト、キノコの煮込みハンバーグ、明太子カルボうどんに蕎麦粉のガレットか。昨日は飲み会で揚げ物ばっかりだったし…うん、決めた。
「すいませーん!」
私は手を挙げた。衝立の陰の席から返事。あっ、そうか、今日は大学休みなんだな。
なぜというに、この店は私のルームシェアしている女友達のバイト先でもあるのだ(むしろそれが縁で知ることができた。感謝!)。
シートを戻しながらなんとなく窓から外の街並みに目をやる。いい天気。街路樹の緑は宝石のように輝いているし、幼稚園児がカートに乗せられて運ばれていくし、徐行して車が走っていくし、背広姿の象さんが歩いているし…
「ブフゥッ⁉︎」
私は半ば立ち上がって窓に張り付く。
夜を彩るネオンではなく、この世の何よりも絶対的な存在、現実を構成する最強の要素、お天道様の光。その下で背広を上半身に引っ掛けた象さんぬいぐるみが、もっこもっこという擬音が聞こえてきそうな動きで道を私から見て右から左へ歩き去って行った。
いやいや、それどころじゃない。
ちょっと見渡しただけで、人間の姿に混じってあちこちにぬいぐるみや人形が歩いている。あ、あれは昨日見かけた赤い犬のサラリーマン!携帯を耳に押し当てながら忙しそうに視界をよぎっていく。
「どうしたの?ミュウミュウ」
テーブルにお冷が置かれる音。
「大変よチョコ…私おかしくなっちゃったみたい」
「え?何か面白いこと、あった?」
チョコこと
「いやそっちのおかしいじゃなくて、目玉?でも他のものはちゃんと見えてるから違うのかも…てことはおかしいのは頭?え待ってそれってもっとヤバいじゃん⁉︎」
「まあ落ち着いて、ミュウミュウ。とりあえず腰掛けて、お水でも飲んで落ち着いて?」
そうだ。こんなことじゃいけない。しっかり現実と向き合わなきゃ。
「ありがとうチョコ。やっぱりあんたはいい子だねぇ…」
「ふふっ、何言ってるの」
私はひとまず座り直す。アンティークのグラスに注がれたアップルフレーバーの水を口に含む。
「…ん?」
あれ。もういない。素早いなあ。
「注文、決めた?ミュウミュウ」
「え?ええ、ガレットをお願い…って、チョコ?」
「なぁに?」
「どこに…いるの?」
「やだなぁ目の前にいるじゃない」
恐る恐るテーブルの下を覗き込む。
「チョコ…?」
「ん?どうしたのそんな顔して。私の今日のメイク何か変かしら?」
「いや変とかそういうレベルの話じゃないんだけど…?」
そこには黒ビロードでできた短毛のウサギのぬいぐるみが小首を傾げて立っている。『ぽるこ』と刺繍したエプロンをかけて、私に向かって微笑んで…
「チョコ…だよね?あんたも、ぬいぐるみだったの…?」
ウサギさん───チョコは、ギョッとしてお盆を取り落とした。そこへ音高くドアを開けてドヤドヤと入店してきた者が二名。
「オィオィ居るじゃっしゃっすか!例の見破り人間!」
昨日の夜、神社前で会った黄狸だった。なぜか今日は安物そうなスカジャンを着ている。
「この俺のリサーチ力をナメんじゃねぇよ。俺が居るっつったら、居るんだよ」
太くて変な声。ぽこっ、という音の後に「イエス、ボス!」という叫び。
あのワニだった。トレンチコートの前を開いてぷりんとした腹を見せたスタイルでパナマ帽を伊達に被っている。
「蝶野美由紀。通称・ミュウミュウ。ブライダルコーディネート会社に勤務する二十一歳。犯歴なし、ハンドボール大会での優勝に貢献した過去あり。趣味はテレビでのプロレス観戦、ゲーム。座右の銘は『為せば成る』」
「…ん?ちょっとそれ私の履歴書じゃん⁉︎」
ワニはその通りだと言わんばかりに猪首をすくめ、どこからか引っ張り出してきた履歴書のコピーを振って見せた。
「俺達の姿がぬいぐるみだと見破れるのはもう確認するまでもないが…君には二、三質問したいことがある」
「しつもん」
気の抜けたおうむ返しをしてしまった。
「質問?ヌルぃっすよダルっしゃっすぉ。口封じ一択っしょ」
肩をいからせながら横入りしてきた黄狸をワニはパンチ一閃、床に転がした。黄狸はなぜか嬉しそうに「サンキュー、ボス!」と叫ぶ。
「済まんな、やかましくて。まあそう堅くならずに話をしようじゃないか」
「アンタみたいに柔らかそうになれたらいいけどねぇ」
「ふっ。軽口の余裕があるなら、まあ…その辺の普通の人間どもよりはマシそうだな」
私はなんというか、もうどうでもよくなって席についた。その対面に額に傷のあるワニと、復活した黄狸がちょこんと腰掛ける。ウサギの姿になってしまったチョコは、キッチンに続く壁の方から心配げにこちらを伺っている。そちらになんとなく作り笑顔で手を振ってあげた。
「まずはじめに。君が俺達をぬいぐるみだと看破できる能力、いわば
「じゃあ私以外の人達は…この街に暮らしてる人達にはアンタ達は人間に見えてるの?ってか、アンタ達をどう理解すればいいの?」
ワニは顎の下を太短い爪で掻きながら言葉を選ぶ。
「うむ、俺が世話になってる御仁によれば俺達ぬいとは『
「分かんないってば。見た目に反して難しい言葉使わないでよ」
「ふむ。ならば…聞いたことはないか?
ワニ曰く、長い年月を経た器物には霊魂のようなものが宿り、それが一定のエネルギーときっかけを得て動き回ることができるになったもの…一種の精霊らしい。
「てか妖怪じゃん」
「はっ?妖怪じゃぇっすよフザけんなっす!」
「アンタには話してねーわよ不良狸!」
う〜っ!と唸り合う私と黄狸。
「擬似生命体、と考えてくれたらいいんじゃないかな。ハイおまちどおさま」
チョコが私の注文したランチを持ってきてくれた。
「たまにいるのよ。生まれつき私達のような付喪神や鬼などを見ちゃう人達が。ミュウミュウの場合、昨日まではそうじゃなかったわよね…何かきっかけがあったんじゃないかしら?」
「そう、それが俺も言いたかった。稀にいるんだ、事故や事件に巻き込まれたショックや怪我で、見破り能力を得てしまう人間が…わかりやすい説明ありがとう」
「い、いえ…」
モジモジしているチョコ。人間の姿に見えていた時も可愛かったけど、このフォルムだともう抱きしめたくなってしまうな。
「そういえば昨日、サンリオ神社の石段で滑って転んだんだけど…」
「そう!よっくもあんときはボスを下敷きにしゃっちゃっすね、謝れ!土下座しぇ這いつくばっぇ許しを乞え‼︎」
「黙れ」
ワニパンチ。黄狸の「ソーリー、ボス!」。
「あら、じゃあきっとそれがきっかけよ。打ちどころが悪かったのかもね」
「これ、治るの?」
ワニの声が一段と低くなる。
「治したいのか?」
「あったり前じゃない!誰が好き好んでこんな───」
ふと視線を感じて横を見下げる。チョコが、うるうるとした瞳で私のこちらをじっと見つめている。やめてよ!私が悪いみたいじゃない!
「───…百歩譲って、チョコはこのまんまでもいいとして…そこにいるようなガラの悪いぬいぐるみは願い下げ。日常生活で視界に入れたくないんだけど」
「ガラが悪いっすか?はっ、そりゃ褒め言葉っしゃっす。こちとらお嬢さん仕事やってんじゃねっす。御免被るっゃっすぉ!」
「は?仕事?アンタらになんの仕事ができるのよ…てゴメン、チョコ!こいつらに限った話だからね?」
ワニは鷹揚な笑みで名刺を出してきた。
“よろず相談事、スパッと解決!
家出、浮気調査、探し物などなんでも承ります。
「…何よこれ」
「見ての通りだが?」
「探偵?アンタ達が?」
いや、それもこの街なら可能なのか?なにせ私以外の人間は、こいつらのことを普通の人間と思って接してるわけだし。
「それにしても探偵ねぇ〜」
「っんしゅっそ、文句あんっのかぉ⁉︎ああ⁉︎」
「いいから黙れ」
「イエス、ボス!」
また殴られる黄狸。なんかだんだんこの
「あ、あの…それでその、相談…なんだけど…」
「え?いま?」
「あ、違うの。探偵さんに…庭田さんのほうに…」
「ん?ああ、俺に?依頼か?」
「ちょっとチョコ、相談って恋愛なんじゃなかったの?このデブサイクワニにそんなの持ちかけるとか正気?私にしときなよ、悩みなら聞くからさー」
「あ、あのねミュウミュウ、はじめはそのつもりだったんだけど、ちょうど探偵さんがいらっしゃるならお願いしたほうがいいかなー…って」
そこで庭田の目(瞳孔が爬虫類らしく縦に割れている。作りが凝ってるじゃん)がキラリと反射した。
「なんだい、
「はい。その…私…」
チョコは唇をキュッと引き結んで顔を上げた。
「ストーカーに狙われてるんです、私」
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