異世界の仕事人は空気を読むのが得意です(おまけ)

どこかのサトウ

ベアールの気持ち

 やぁ、僕の名前はベアール。大きな熊のぬいぐるみなんだ。


 僕を作ってくれた職人さんの名前はロディさん。僕のご主人なんだ。


 ご主人は作ったぬいぐるみには名前をつけないんだけど、ご主人と仲の良い素敵な女性、マーリィさんが僕をベアールと呼ぶんだ。


 だから僕の名前はベアール。僕は彼女が大好き! でも残念だけど、彼女は僕を買って帰ることはできないらしい。


 優しいご主人は、他の人が僕を買わないようにと工房の中に移してくれたんだ。


 ご主人の仕事場はとても綺麗。僕たちはそこでご主人の手によって生み出される。


 凄いんだよ。大きな布を割いて、糸と針を使って縫い合わせて、綿を入れて形作っていくんだ。


 腕も確かなんだって。丁寧な作りだって僕の仲間を買っていったお客さんが、ご主人を褒めていたから。


 そんなご主人と僕との関係は、この工房の中だと一番古いんじゃないかな。


 ご主人には特殊な力があって、ぬいぐるみを操ることができるんだ。僕だちぬいぐるみに意識を集中すれば、僕たちの耳や目を通して、見たり聞いたりできるんだ。


 昔のご主人は、僕たちを直接操って色々とやっていたようなんだ。でもマーリィさんと出会ってからは、僕たちを直接操って、何かをさせようとはしなくなったんだ。


 僕たちをもっともっと大事にしてくれるようになったんだ。だから僕はマーリィさんが大好き。


 ご主人とマーリィさんが一緒になったら、きっと僕も二人と一緒にいられるようになると思うんだ。だがら、ご主人には頑張って欲しいのだけれど……


 苦しい——お腹が痛い——何か出ちゃう——


「ぐふっ」


「「「 ベアール! 」」」


 み、みんな、だ、大丈夫だよ。僕はまだ頑張れる。


 マーリィさん、どうかご主人に愛想を尽かして、見捨てないでください……


 おわり

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