第12話
ミネアは、ベッドに潜り込むと、ほっと安堵して、布団にくるまった。
(夜に眠れるの、久しぶりだわ)
ミネアは、天井を見上げ、窓辺に浮かぶ三日月の光に視線を移した。
(私は、カルデア王の愛人の子だったんだ。お母さんって、どんな人だったんだろう)
ミネアは、死んでしまった母を想い、複雑な気持ちになった。
(病死ということは、体が弱かったのだろうか。。)
そして、本当の父であるカルデア王は、まだ生きているのだと気づいた。
(でも、私の父は、ランビーノだけよ。そう、今になって現れるなんて。。私には関係ない話だわ)
ミネアは、悶々と考えた末、ランビーノだけが親であり、家族なのだと結論付ける。
(それにしても、タンジア王子は、一体何者なのだろう。昼間の告白は、どんな意図があったのだろう)
タンジア王子を思い浮かべると、王子の口づけ、吐息が思い出される。ミネアは、顔をぶんぶんと振り、タンジア王子を頭から消そうとする。しかし、消そうとすればするほど、王子の顔がくっきりと頭に焼き付けられる。
(私、どうしちゃったんだろう。。)
ミネアは、タンジア王子に告白され、恋に落ちてしまったことに気づいていなかった。タンジア王子の口づけを思い出せば胸が苦しくなり、王子の顔が頭から離れず、次に、ユーナ姫が脳裏に浮かび、切ない気持ちになった。
(だめだめ、本題に戻らないと。。とにかく、今回のカリューシャの真の目的が何なのか。問題は、一体どこにあるのかを突き止めないといけないわ)
ミネアは、月光に魅せられ、目を細める。
(そうだわ、タンジア王子に、直に聞いてみようか。もしくは、王子の書斎、少し調べてみようか)
ミネアは、妙案だと自分に言い聞かせる。
(でも、私が王子の部屋を調べる間に、カリューシャが襲ってきたら。。そう考えると、本人に直接聞いてみた方が良いかしら)
ミネアは、王子に聞いてみることに決めた途端、王子に近づくことになると気づいた。もしもまた口づけをされたらと、胸がドキドキと熱くなる。
(私、何を期待しているんだろう。。とにかく、休めるときに、休まないと!)
ミネアは、ぎゅっと目を瞑った。疲労は溜まっていたようで、程なく睡魔が襲ってきた。
翌日、ランビーノはサーリャの地へと発とうとしていた。城の前で、ミネアはランビーノを見送った。
「ミネア、とにかく気をつけて。油断するな」
ランビーノは、心配そうにミネアを見て言った。
「大丈夫よ。気を緩めないから。あのさ、、」
ミネアは、出発しようとするランビーノを呼び止めた。
「どうした?」
いつになくしおらしいミネアを、ランビーノは怪訝に見て言った。
「いや、なんか、恋ってなんなのかな?って思って。。ほら、カルデア王とサリーンも危険な恋に落ちて、私が生まれて。。って考えてたら、恋ってなんなのかなって」
「ん?ミネア、誰かに恋してるのか?」
ランビーノは、時々、鋭い観察力を発揮する。ミネアの頭には、タンジア王子が思い浮び、否定するように首を何度も横に振った。
「そんなこと、ないに決まってるでしょ!」
ミネアの赤くなった顔を見て、ランビーノは、複雑な気持ちになった。
(いつの間に、そんな相手が。。くそ。俺の娘に、誰が手をつけたんだ)
ランビーノは、もやもやとした気持ちを抱きながらも、
「まあ、恋は魔物。自分ではどうすることもできないからな。精々、悩むんだな」
と言い、ミネアの頭を不器用に撫でると、
「じゃあ、行ってくるな」
と手を振り、去って行く。ミネアは、ランビーノの黒い背中を見送りながら、
(なんの解決にもなってないじゃない!?)
と、苦笑いをして、溜め息をついた。
一方、タンジア王子は、ミネアに話があると言われ、浮足だっていた。
(ああ、ミネア。私の気持ちは、何も変わっていないからな)
ミネアに振られたあの日、王子の落ち込みはひどく、夕食は喉も通らない程であった。
(確かに、ユーナ姫の幸せを壊すことで、私が幸せになるのは、間違っているのかもしれない)
タンジア王子は、人の幸せか、自分の幸せか、どちらが正解なのか、答えのない問題に思い悩んでいた。答えがでないからか、結婚式は、3週間後であるのに、何も行動できていかなった。
そんな中、ミネアに話があると言われ、タンジア王子は、天にも上る気持ちで、何かを期待していた。
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