第4話
ミネアは、ランビーノから、タンジア王子の護衛が使命としてきたことを聞いた。
「タンジア王子を護衛?いったい、なぜ?」
ミネアは、連続殺人犯の重要指名手配犯の情報を掴んだところであった。
「今、やっと、犯人の足取りが掴めそうなところなのよ」
ミネアは、ふっくらと形の良い唇をつぼめて言う。もう手持ちの金がなくなってきている。ここで犯人を捕らえて、懸賞金をもらわなくてはと、焦っていた。
ランビーノも、ミネアの気持ちはわかっていた。自分も、金が入らなくては、野宿になってしまう。
しかし、今回は王からの勅命である。第一優先にしなければいけなかった。
「サーリャの地の件だ。石油がでたことで、領土の争いになってる。今回の件は、王からの勅命だ。懸賞金は諦めて、アリシア城にいかなければいけない」
ランビーノは目を曇らせ、苦い表情をする。ミネアは、ランビーノが目を曇らせるということは、よほど重要なことだと察知した。
「どうして、父さんが勅命を受けるの?」
ミネアは、素朴に疑問に思った。
「12のときだ。どうしても金がなくて、盗みや乞食みたいな生活から抜け出したくて、王の側近護衛軍に入隊したことがある。半年で腕をかわれて、王直々に勅命を受けるようになった。暗殺者の護衛や、仕末など、色々やったさ」
「そうなの。よっぽどお金がなかったのね。。」
ミネアは、剣の腕があっても、職につながらないことは、よくわかっていた。
「その通りだ。結局、小金が少し貯まったから、護衛軍を辞めた。辞めるときの条件が、勅命には従うことだったのさ」
ランビーノは、溜め息をついた。
「今回の件、俺一人で行こうと思う」
ランビーノに勅命がくるということは、暗殺者がかなり手強い相手だということだった。ランビーノは、ミネアをできるだけ巻き込みたくなかった。
「まさか。私も行くわ。お父さん一人では、心配だしね」
ミネアにとって、ランビーノは、心の支えだった。両親から捨てられて、ランビーノがいるからこそ、今まで生きてこれたのだ。
ランビーノは、ミネアの気持ちはわかっていた。それに、一度決めたことは決してゆずらない、頑固な一面があった。一人で行っても、必ず追ってくる。
「さあ、そうと決まったら、すぐにアリシア城に行きましょう」
ミネアは、青い瞳から力強い光を宿らせて言い、宿から発つ準備を始めた。
アリシア城では、ミーア王妃がやきもきと心配をしていた。
(ああ、こうしている間に、タンジア王子が殺されてしまうかもしれない)
そう思うと、いてもたってもいられなくなり、タンジア王子の部屋に行き、顔を見るとほっとする。一日に、そんな行動を、何回も繰り返していた。
「母様、私は大丈夫だから、落ち着いてください。これでは、母様が先に倒れてしまいますよ。。」
タンジア王子は、困ったように言い聞かせても、王妃は心配は消えなかった。
「なにしろ、今回の暗殺者は、あのカリューシャだというではないですか」
カリューシャは、世界で一番と言われる、伝説の剣士であった。カリューシャが狙った相手は必ず世から去っていた。ランビーノでさえも、カリューシャの名を聞くと、背筋が凍った。名剣士の誰もが恐れる最強の剣士であった。
「わかっています。だから、こちらも、ランビーノに勅命を送ってもらった。もうすぐ来てくれるでしょう」
「ランビーノは強い剣士ですが、カリューシャが相手では、厳しいでしょう。兵士を何人も護衛につけていても、心配で仕方ありません。サーリャの地になど、行かせなければ良かった」
王妃は両手で顔を覆って、涙を流した。タンジア王子は、王妃の肩を抱いて慰める。
「大丈夫です。私も武術は多少なりとも訓練しています。ランビーノも来てくれる。護衛の兵士もつけている。さすがのカリューシャでも、ここまでやっては来れませんよ」
タンジア王子は、優しく言い聞かせる。整った甘い顔立ちは、何十人もの女を泣かせるほど端正であった。カリューシャの名を聞いても落ち着きはらい、堂々としている。優しく勇敢な王子であった。
王妃は、タンジア王子が動揺していないことに安堵し、部屋へ戻っていく。しかし、流石のタンジア王子でも、本心はカリューシャには用心をし、夜は眠らずに息を潜ませていた。
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