相当めんどくさい女

 お昼ご飯を食べた私は特にすることも無いので帰ろうとしたんだけど、瑠奈に止められた。


「特にすることもないと思うんだけど」

「一緒にいるだけでもいいじゃん。……なんなら今日も泊まっていけばいいよ」

「昨日だっていきなりだったし、流石に今日は帰る」


 普通に瑠奈のお父さんと会うの緊張するし、着替えも一日分しか持ってきてないし。


「で、でも……お、お風呂壊れたんでしょ? 一日じゃ直らないと思うし……」


 ……一日で直そうと思えば直せるのかもしれないけど、少なくともまだ直ってない。……スマホを見た時に気がついたんだけど、まだ業者の人を呼んでなくてお風呂直ってないから、今日こそお風呂屋さんに行ってきてってメッセージがお母さんからきてたんだよね。


「いや、一日で直るよ」


 私は別にシャワーで済ませてもいいんだけど、今は業者の人が何かやっててシャワーすらも使えないらしいから、お風呂屋さんに行くしかない。流石にシャワーすら浴びないのは嫌だし。

 ただそれを瑠奈に行ったら、今日も泊まらされそうだし……瑠奈の家のお風呂を借りるのは、着替えがないから無理だし。

 わざわざ着替えを持ってくるのも、正直めんどくさい。瑠奈の家よりお風呂屋さんの方が、私の家から近いし。


「……じゃあ、せめてもう少し一緒にいよ?」

「……5時位には帰るから」

「うん」


 瑠奈といること自体は嫌じゃない……むしろ好きだし、普段だったら嬉しいんだけど……今日は昨日のこともあるし……出来れば帰りたかったけど、ここで逃げたらいつまでも逃げちゃいそうだから、5時に帰ることにした。


 ……5時に帰るのはいいんだけど、することがないのはほんとなんだよね。

 

「私の部屋行こ」

「……もう、今日は触らせたりしないから」


 そう言って私は胸を隠すようにする。……流石に今日は昨日みたいになる訳にはいかない。


「わ、分かってるから!」

「……ん」


 瑠奈の言葉に頷いて、瑠奈と一緒に部屋に入った。

 ベッドにもたれ掛かるようにして、私は座った。……すると自然と私の隣に瑠奈が座ってきて、肩に頭を乗せてきた。

 

「れーな、好きだよ」

「私も好きだけど」

「……ほんとに?」

「……ほんと」


 信じてくれたのかな。

 

「キス、していい?」

「……好きにして」

「この前みたいに、れーながしたいか、したくないかを教えて」

「……今は、どっちでもいい」


 昨日のあれで、そういう気持ちは満たされてるから、どうしてもキスしたいとは思わない。でも、してくれるならしてくれるで嬉しいとは思う。……瑠奈が病んでるんだとしたら、私って相当めんどくさい女だな……


 そう考えていると私は、瑠奈に唇を重ねられていた。


「んっ」


 少し考え事をしてたせいで、びっくりして思わず声が出てしまった。

 

「嬉しい?」


 唇を離した瑠奈がそう聞いてくる。


「……嬉しい」

「私も嬉しいよ。……れーなが少しは私に恋愛感情を持ってくれたのは分かった。だから、もっと好きにさせるから」


 少し? ……もうとっくに大好きなんだけど。……と言うか私は少ししか恋愛感情持ってない相手に、キスとか、体触らせたりすると思われてるの? 


「いや、普通に――」


 私が普通に大好きなことを伝えようとすると、瑠奈に唇を重ねられ、いえなかった。

 ……嬉しいけどさ、言わせてよ。……まぁ、少しでも信じて貰えただけいいか。……多分。

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