お風呂で

「れーな、いい?」

「まだ」


 ……体にタオルなんて巻いたことないから、これでいいのか分からないんだけど。……よし、これで多分落ちないはず。仮に落ちても、私は気にしないし……いや、やっぱり裸は流石に恥ずかしいな。


「瑠奈、やっぱり一人で入らない?」

「なんで?」

「タオル巻いたままだと、体洗えない」

「……体洗う時は見ないから」


 体洗う時以外もあんまり見ないで欲しいんだけど。


「はぁ……先入ってるから」

「う、うん」


 私は先にお風呂場に入った。……私は取り敢えず、シャワーを出した。

 ……これ、椅子座っていいのかな。

 そう考えていると、お風呂場の扉が開き、タオルを巻いた瑠奈が入ってきた。

 流石瑠奈。タオルを巻くのが早い。……私と比べてだけど。


「……れーな、頭洗うよ。そこ、座って」

「……ん。ありがと」


 もう既に後悔し始めてるんだけど。……なんで私はさっき一人で入るって粘らなかったんだ。


「シャワー、かけるよ」

「……うん」

「熱くない?」

「普通」


 瑠奈は私にシャワーをかけるのをやめて、シャンプーを手に付け、私の髪を洗ってくれている。

 ……私は目の前の鏡を見ないように、目を閉じた。

 鏡から瑠奈が見えると、恥ずかしくなってきてしまうから。タオルを巻いているとはいえ……いや、むしろ巻いてるからこそ、その下を想像してしまう。


「痛くない?」

「……大丈夫」

「シャワー、かけるね」

「ん」

 

 私は髪についたシャンプーを洗い流してもらう。


「……瑠奈、寒くない?」

「大丈夫だよ。私にもシャワーかけたし」

「そう」

「……背中、洗っていい?」

「……タオル取ったら前、見えちゃうから」

「ま、前は見えないから」


 ……確かに普通だったら見えないだろうけど、鏡があるんだよ。

 私はそれを瑠奈に伝える。


「ま、前にタオルをかけるように置いておけば見えないから」

「……無理」


 背中だけならともかく……お尻、見えちゃう。


「……すぐ、洗うから、ちょっとだけ後ろ向いてて」

「わ、分かった」

「……ごめん」

「だ、大丈夫だよ」


 瑠奈が後ろを向いてくれたのを確認して、私はタオルを取って、早く体を洗う。……早くしないと、瑠奈が寒いだろうし。


 私は体に付いたボディーソープを洗い流す。

 そして、またタオルを体に巻こうとするんだけど……巻けない。……ただでさえ巻くのに苦労したのに、濡れたタオルを巻ける気がしないんだけど。

 ……もう体も洗ったし、このまま上がろうかな。いや、でもお風呂に入らなかったら、瑠奈の家に来た意味が……


「瑠奈」

「終わった?」

「それは終わった」


 そう言うと、瑠奈はこっちを向こうとしてくる。


「ちょ、待って!」


 私は抱きつくようにして、瑠奈の目を手で塞ぐ。

 

「れ、れーな!?」

「私、今タオル巻いてないから」

「――ッ、そ、それって今、裸で……」

「は、離れるから。目、閉じてて」

「う、うん」


 瑠奈がこっちを向こうとしたことを責める……のは、違うよね。どう考えても、私の言い方が悪かったし。

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