瑠奈の家

 私はお母さんに瑠奈の家に泊まると連絡をしてから、着替えを持って瑠奈の家の前まで来た。

 もちろん隣には瑠奈がいる。


「れーな? どうしたの?」


 瑠奈が、家の前で不自然に止まった私を見てそう聞いてきたので、私は首を横に振り、なんでもないと答えた。ほんとは緊張してるんだけど、それを言っても理解されないだろうし。

 大丈夫。いくら私でも、挨拶くらい出来る。

 

 瑠奈が鍵を開けて、家に入っていくのに私はついて行く。


「ただいま〜」

「お邪魔します」


 特に声が帰ってくることなく、瑠奈は自分の部屋に向かって、歩いて行っている。

 ……これ、ついて行ったらいいんだよね?


「れーな? 来ないの?」

「……その前に、家誰もいないの?」

「今はいないよ」


 ……私の緊張を返して欲しい。

 なんか美菜璃の家に行った時もこんな感じだった気がする。……いや、今回は止まっていくんだし、確実に会うことになるか。


「先に言っといて」

「今度からはちゃんと言うね」


 今度があるかは分からないけど、私は頷いておいた。

 

「……いつ帰ってくるの」

「夕方くらいだと思うけど、なんで?」

「いや、普通に挨拶」


 心の準備をしときたいからだよ。


「瑠奈もついてきて」

「挨拶に?」

「そう」


 いくら心の準備をしてても、一人だとちょっと……いや、どうしても一人でしなきゃだめって時だったら出来るけど、今回はどうしても一人でしなきゃって訳じゃないし。


「……も、もしかして挨拶ってそういうこと?」

「うん?」


 挨拶は挨拶だと思うけど。


「わ、分かった! ……その、私の時も付き合ってもらっていい?」


 瑠奈は嬉しそうにそう言う。

 ……瑠奈の時? 瑠奈が瑠奈の親に挨拶なんてする必要ないし、私の親? いや、私の親だったら、もういっぱい会ってるし。

 まぁいいか。よく分からないけど、瑠奈が嬉しそうだし、いいや。


「分かった」

「れーな、好き!」


 そう言って瑠奈が抱きついてきた。

 そんなに嬉しい事だったのかな。


「私も、好き」


 私がそう返すと、瑠奈は何も言わずに抱きしめてる力を少しだけ強くしてきた。

 ……どういう感情の反応なんだろう。

 取り敢えず、可愛いし、頭でも撫でとこうかな。


「――ッ」


 瑠奈は私が痛くない程度に、更に力を強くしてギュッとしてきた。

 

 ……可愛いけど、いつまでこうしてるつもりなんだろ。

 

「……れーな、私の部屋行こ」


 私がそう思っていると、瑠奈は私を抱きしめるのをやめ、少し私から離れて顔を赤らめながらそう言う。


「分かった」


 瑠奈の部屋の場所は子供の頃に来たことあったから知ってたけど、最近はずっと瑠奈が私の家に来てたから、瑠奈の部屋に入るの久しぶりだな。


「お邪魔します」


 瑠奈が部屋に入って行くのについて行き、部屋に入る時に一応そう言った。

 部屋に入ると、瑠奈の匂いがした。……瑠奈の部屋なんだから当たり前か。と言うか、久しぶりに瑠奈の部屋に来て、最初に出てくる言葉が瑠奈の匂いがしたって……


「どう?」

「何が?」

「れーなが来るの久しぶりじゃん。結構変わってるでしょ?」


 まぁ、確かに。……なんというか、私の部屋とは違って、女の子らしい部屋……なのかな。……いや、私の部屋よりはよっぽど女の子らしいと思う。だって化粧品とか置いてあるし、その時点で私とは天と地ほどの差がある。

 

「いいんじゃない」

「適当に言ってる?」

「なんて言えばいいか分かんないし」


 私は部屋なんて、プライベートな空間さえあればいいと思ってるタイプだから、そんな私に感想を聞かれても、上手いこと答えられるはずない。


「あっ」


 私が適当にベッドに座ったら、瑠奈が声を上げた。

 

「だめだった?」

「う、ううん。大丈夫」


 ? よく分からないけど、嫌じゃないならいいか。

 

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