二回目だし

「何が欲しいの?」


 私は家に着くなり、瑠奈にそう言った。

 ここに来るまでに私は、交換って言うくらいだから何か欲しい物があるんだろうって予想をしたから。


「えっ……ほ、欲しいって言うか……」


 ……? 私が持ってる物で何か欲しいから交換って言ったんじゃないの?

 

「わ、分かるでしょ」

「分かんないけど」

「ほ、ほんとにわかんないの? 意地悪じゃなくて?」


 分かるんならとっくに渡してる。

 何故か瑠奈がなかなか言ってくれないので、私はリビングに向かった。

 ずっとここに立ってるのも疲れるし。


「お、お邪魔します」


 瑠奈はそう言って私に着いてきた。

 私がソファに座ると、瑠奈も隣に座ってきた。


「早く言って」

「……れ、れーなのが欲しい」


 瑠奈は顔を赤らめながらそう言ってきた。

 ……それは分かってるよ。私の何が欲しいのかを聞いてるんだけど。


「私の何?」

「ひ、引かない?」


 瑠奈は涙を滲ませてそう聞いてきた。

 いや、そこまで恥ずかしがってまで欲しいものなの? と言うか、今更私が瑠奈を引くことなんてないと思う。……だって、付き合ってから結構色々あったし、なんなら付き合う時だってかなり病んでたし。


「引かない」

「し、信じるから」

「うん」 

「……し、下着、です……れーなの、下着、が、欲しい……です」


 耳の先まで真っ赤にしながら、下を向きそう言ってきた瑠奈。

 ……そこまで恥ずかしがるようなことかな。だってもう、一回貸してるし、なんなら今履いてるじゃん。

 私の下着を返してもらって、また私の下着を貸すってのもおかしな話だけど、まぁいいか。


「いいよ」

「い、いいの?」


 昨日だって貸したんだから、そんなに驚かなくても。


「好きに取っていいよ」


 瑠奈がどれがいいかとか分からないし、自分で選んでもらった方がいいに決まってる。

 なんでまた貸してほしいのかは分からないけど、別に瑠奈ならいい。


「わ、私が!? い、いいの!?」


 心做しかさっきより顔を真っ赤にしながら、驚いている瑠奈。

 昨日だって自分で選んでたでしょ。


「二回目だし」

「……は? 二回、目?」


 私がそう言った瞬間、さっきまでの恥ずかしがってた瑠奈の雰囲気が消え、何故か今は怒っている気がする。


「……瑠奈? なんで怒ってるの?」

「なんで? なんでって……当たり前でしょ。逆になんで怒らないと思ったの?」

「普通に事実だし」


 私がそう言うと、瑠奈は黙り込んでしまった。……黙ってても分かる……めちゃくちゃ怒ってる。

 どうしよう。何に怒ってるのか全く分からない。


「ごめん」


 取り敢えず私は謝っておいた。何に怒ってるかは分からずに謝るのもどうかとは思うけど、謝らないよりはマシだと思う。


「――に?」

「何?」


 聞き取れなかったので、私はそう聞き返す。


「……誰に?」


 誰に? 誰にって何が? 

 私は訳が分からず、首を傾げる。

 すると、瑠奈は下唇を噛んで、泣きそうな目になりながら言う。


「言いたく、ないんだ」


 ……言いたくないも何も、私は理解すら出来てないんだけど。


「キスとかは?」

「キス?」

「……したの?」

「してないけど」


 なんで急にそんな話になったのかは分からないけど、私はそう答えた。いや、仮に昨日してたんだとしたら、瑠奈も知ってるでしょ。


「そっか。じゃあ、それだけなんだ」

「……?」


 本格的に理解が出来てないけど、瑠奈が機嫌を取り戻してくれた? いや、ちょっとだけ怒ってるけど、さっきよりはマシな気がする。


「れーな、立って? それで、目、閉じて」


 なんで? って聞きたい。けど、せっかく機嫌が治ってきてるんだから、ここでまた怒らせるのは嫌だ。

 そう考えた私は、よく分からないまま、瑠奈の言う通りにした。

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