少し脅そうとしただけで……
チャイムの音と同時に私は美菜璃に起こされた。
いや、もうちょっと早く起こして欲しかったんだけど……チャイムと同時に起こされても。
……後、寝る前に美菜璃が言ってた髪といとくって私の髪の話だったみたいなんだけど。起こされた時されてたし。
まぁ、でもよく考えたらそりゃそうだよね。自分の髪をとくことをわざわざ私に言ったりはしない。
……瑠奈に見られてないことを祈ろう。いや、見られてたとしても髪をとかれてただけだし、大丈夫かな。
授業に集中しよ。
授業が終わり、休み時間になった。
私は瑠奈がさっきの、美菜璃が私の髪をといてたのを見ていて、こっちに来るかもしれないと警戒してそそくさと私はトイレに逃げた。
普通にトイレに行きたかったってのもあるし。
適当にチャイムがなる少し前まで時間を潰そうとスマホを弄っていると瑠奈からメッセージが来た。
【どこ?】
……これはさっきのを見て怒っているのか、単純にもっと前の美菜璃と手を繋ごうとしたのをまだ怒っているのか、もっと単純に私に会いたいだけか。
【なんで?】
質問に質問で返すのは私のコミュニケーション能力がない証拠だ。
【さっき何してたの?】
もしかして瑠奈もコミュニケーション能力ないのかな。……仮にそうだったとしても私の数十倍はあるに決まってる。……いや、0に何をかけても0か。
と言うかこれ、誤魔化せない? いやだってさっき私寝てたし、勝手に美菜璃がしてきたって言えば……美菜璃へのヘイトが余計に溜まるだけか。
【寝てた】
上手いこと、美菜璃にヘイトが行かないように、尚且つ私にも誤解が生まれないように心がけながら私は瑠奈にメッセージを返信する。
【寝てる間に何か頼んだ?】
質問ばっかりだし、最近の私は瑠奈に問い詰められてばかりな気がする。……私が悪いのもあるし、単純に瑠奈が心配性なのもある。どっちもどっちか。
【この話はやめよう】
私がそうメッセージを送った瞬間、瑠奈からメッセージの嵐が送られてくる。
【は?】
【それ、なにか後ろめたいことがあるって事?】
【今どこ?】
……まぁ、なんとなく予想はついてた。でも、私だって何も考えずに、ああ言った訳じゃない。
【後ろめたいこととかないから。この話をやめないなら、瑠奈に貸してる下着今返してもらうから】
ちょっと強引だけど、今日の私にはこんな切り札があったんだよ。
流石の瑠奈もあと一限とはいえ、ノーパンで学校生活を送りたいとは思わないでしょ。
【……それって、私の履いたやつが欲しいってこと?】
いや、何を言ってるの? 返してって話で、欲しいって話では無い。
【分かった。れーなとの交換なら忘れる】
いや、何も言ってないんだけど。何がわかったの? 後交換って何? 私の下着を何と交換するの?
【今日、れーなの家でね】
なんか私の知らない……いや、知ってはいるけど、止める間もなく勝手に事が決まっていくんだけど。
【やっぱり今の無しで】
なんだか怖くなってきたので、私がそうメッセージを送っても、既読が着くことはなかった。
……もやもやしながらも、チャイムが鳴りそうだったので、私は教室に戻った。
そして授業が終わり、放課後になった。
美菜璃とは既に挨拶を済ませ別れている。
今、私は瑠奈と一緒に帰っていた。
「瑠奈」
「何?」
「いや、交換って何?」
「れ、れーなが言ったんでしょ!」
言ってない。一言たりともそんなこと言ってないと思うんだけど。
「言ってないから。私はただ下着を返してもらうって、ちょっと脅そうとしただけ」
そうだ。少し脅そうとしただけで、本当に返してもらおうとは考えてない。だって、朝に瑠奈から明後日くらいに返すって言って貰えてたし、別に焦ることでもない。そもそも、私の下着が瑠奈の元にあるからって、ちゃんと洗ってるやつだし、仮に洗ってないやつだとして、何ができるって言うんだ。
「だから返せる時に返してくれたらいいから」
「でも、私はもう交換したい気分になっちゃってる」
「……そもそも、私のなんだから交換とか、ないよ」
「交換しないならさっきの事、忘れないから」
さっきのことってどっちだろ。どっちか一つだったら誤魔化せる可能性もあるし……
「あの子と手を繋ごうとしたことと、あの子に髪をとかされて、頭を撫でられてたこと」
まるで私の思考を読むようにして瑠奈が答える。
……私、頭結局撫でられてたんだ。それは知らなかった。
「手はともかく、もしかして頭とか髪は勝手にやられた? だったら大丈夫。すぐにそんなこと出来ないようにしてくるから」
「……交換しよう」
瑠奈に貸してる下着と何を交換するのかは分からなかったけど、このままじゃ本当に美菜璃に危険が及びそうだったので、私は咄嗟にそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます