ゲームに夢中になって
「あ、もうこんな時間だ」
私はふと、スマホを見ると6時を回っていたことに気がついたので、そう言う。
「あ、ほんとだ」
「ごめん、こんな時間まで居て」
「いや、私も気づかなかったし、楽しかったからいいよ」
私は美菜璃にそう言われながら、内心美菜璃の親がまだ帰ってきてないことに安堵した。だって帰ってきたのなら、挨拶をしないと普通に失礼だから。ただ残念なことに、私のさっき決めた覚悟はとっくの前にどこかへ旅立ってしまっている。
「そろそろ帰るね」
私はコントローラーを置き、美菜璃にそう言いながら立ち上がる。
「大丈夫? もう外結構暗いけど……」
「多分大丈夫」
そう言い私はそそくさと階段をおり、見送りに来てくれた美菜璃に「お邪魔しました」と言い、家を出た。
最後に美菜璃が「気をつけて帰ってね。またいつでも来ていいから〜」と言っていた。
そして私は自分の家へ向かいながら、もう一度、念の為にスマホを見た。
【れーな、まだ? プリント渡すだけでしょ?】
【何してるの?】
【れーな?】
【大丈夫?】
【浮気じゃないよね?】
まぁ、流石に気の所為なんてことは無いか。
さっき美菜璃の家で見た時はよく私は動揺の声を挙げなかったものだ。
取り敢えずこのまま返信しないのは不味そうなので私は返信をしようとする。とは言っても、最後に瑠奈から来ているメッセージは約二時間前なんだけどさ。……うん。すぐ帰るって言ってたし、どう考えてもまずいよね、これ。
【ごめん】
私がそうメッセージを返すと驚くほど早いスピードで既読がつき、メッセージが帰ってきた。
【何に対して謝ってるの?】
それはそうだ。これだけのメッセージだったら、浮気をしてごめんのメッセージとも捉えられてしまう。
【返信が遅くなったのと、家に帰るのが遅くなったこと】
【なんで遅くなったの?】
……美菜璃の家で遊んでたから……なんて言ったらまずいことは分かる。けど、上手い言い訳が思いつかないし、ここで嘘をついて、何かの拍子にバレたら、今日の学校での事の二の舞だ。
よし、ここは正直に言おう。嘘は良くないって分かったし。
【美菜璃の家で遊んでた】
そうメッセージを打つと、一気にメッセージが流れてきた。
【は?】
【プリント届けるだけって言ったでしょ?】
【何してたの?】
【だから私について行って欲しくなかったんだ】
最後のは、何がだからなのかは分からないけど、ここも正直に言えば大丈夫なはず。
【普通にゲームしてた】
【その子熱だったんじゃないの? 嘘だったってこと?】
【私が行った頃には治ってたみたい】
よし、今のところは嘘もついてないし、誤解を招くような発言もないはず。
【今は帰ってきてるの?】
【帰ってる】
【待ってる】
【いや、もう6時過ぎてるし、帰らないと危ない】
今帰って言ってる私が言うのもなんだが、すぐ近くであっても危ないものは危ないのだ。私と違って瑠奈は可愛いし、やっぱり危ない。
【私はすぐそこだから大丈夫だよ! れーなの方が今帰ってるって危ないじゃん!】
正論すぎて、何も言い返せない。
いや、すぐそこだから大丈夫な訳では無い、とは言えそうだけど……余計私の逃げ道がなくなりそうだから、諦めよう。
後単純に容姿的に私は大丈夫そう。
【それとも、れーなは帰ってきた時に私が居るの、嫌?】
【別に】
嫌な訳では無い。ただ、危ないから言ってるだけだ。
そして私は自分の家が見えてきたので、もう着くとメッセージを送り、スマホを仕舞った。
そして扉の前に立ち、瑠奈が包丁とか持ってませんように……と祈りながら、空いているであろう扉を開ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます