ぬいぐるみたちとクリスマスのよぞら

水渕成分

ぬいぐるみたちとクリスマスのよぞら

今日はクリスマスイブです。


 ピンクのウサギのぬいぐるみのウサはうれしいようなさびしいような気持ちでした。


 ウサは今日のクリスマスイブに4さいの女の子、まいちゃんにプレゼントされることになっています。


 まいちゃんは、なきむしで、かけっこはいつもさいごになっちゃうけど、とってもやさしい女の子。


 ウサは、まいちゃんに会えることをとてもたのしみにしています。


 だけど、そのときにはウサはいまサンタの国で、いっしょにいるたくさんのぬいぐるみたちとおわかれしなければなりません。


 ウサはそれがさびしいのでした。




 そんなとき、白いネコのぬいぐるみシロが話してきてくれたのです。

「ウサちゃん。ウサちゃん」


「なあに、シロちゃん」


「ウサちゃんは4さいのまいちゃんのところにいくんだよね」


「そうだけど」


「シロはおなじ4さいのくみちゃんの家にいくの。くみちゃんとまいちゃんはおとなりどうしの家でお友だちなんだって。だから、にんげんの国でもまた会えるよ。きっと」


 ウサの顔はぱあっと明るくなりました。にんげんの国でもシロちゃんに会えるならさびしくないでしょう。




 でも、12月24日の夜になってもサンタさんはぬいぐるみたちのへやにきません。


 そろそろいかなければいけないはずなのに。


 ぬいぐるみたちがそうおもっているとトナカイさんがやってきました。


「あ、トナカイさん」


 ぬいぐるみたちは、ほっとします。トナカイさんがきたということは、もうしゅっぱつなのでしょう。




 ところがトナカイさんは、うかないかお。

「みんなごめんね。今日はみんなをつれていけない」


「ええっ」

 ぬいぐるみたちは、おもわず声をあげます。

「どうしてなの?」


「サンタさんがみんなのことを作るときにはりきりすぎて、こしがいたくなっちゃったんだ。だから、そりにのれないんだよ」


 ぬいぐるみたちはおもいだします。サンタクロースのおじいさんは、それはそれはいっしょうけんめい、ていねいによい子たちにプレゼントするためのぬいぐるみたちを作っていたのです。


「だから、こしをいたくしちゃったのかあ」


「でも……」


 ウサはまいちゃんの顔をおもいうかべました。


 なきむしのまいちゃんのことです。クリスマスのプレゼントにウサがいけなくなったらたくさんないてしまうことでしょう。


 ウサは少しだけかんがえてからトナカイさんにいいました。

「トナカイさん。サンタさんはむりでもトナカイさんはそりを出せますか?」


 トナカイさんはちょっとびっくりしたようですが、答えてくれました。

「それは、ぼくだけなら出せるけど」


「では、そりを出してもらえませんか? わたしたちはお空からよい子たちのところにとびおりていけばいいんです」


「ええっ」

 トナカイさんもほかのぬいぐるみたちもびっくり。


 でも、シロがいってくれました。

「いこう。みんな。わたしもくみちゃんをなかせたくないんだ」


「うん。いこう」

「いこう」

 ぬいぐるみたちはみんなそういったのです。


 トナカイさんはかんしんしながらもいいました。

「うん。でも、そりはお空の高いところをとおるよ。だから、高いところからとびおりなければいけない。だいじょうぶ?」


「だいじょうぶです」

 ウサもほかのぬいぐるみたちもそういったのです。


 


 シャンシャンシャン シャンシャンシャン


 トナカイさんのひくそりは、星でいっぱいのクリスマスのよぞらをすずをならしながらはしっていきます。


「ついたよ。ここが君たちのいくにんげんの国だよ」


 そういってトナカイさんはそりを止めます。


 そりから下をみたウサはちょっとふるえます。おもったより高い。


 そんなウサの手をシロはとります。

「ウサちゃん。ああいったけど、わたしちょっとこわいんだ。いっしょにとびおりてくれるかな?」


「うん」

 ウサはおもいました。シロちゃんがいっしょならこわくない。


 そして、ふたりはてをにぎりあったまま、とびおりたのです。




(ほんとうにどうしちゃったんだろう)

 まいちゃんのママはおもいました。

(もうすぐ12月24日が終わっちゃうのにサンタさんはこない。きょねんはずっと前のじかんにきてくれたのに)。


 ママの前にはまちくたびれてねてしまったまいちゃんがいます。目のまわりには、ないてしまったなみだのあとがあります。


(これじゃあ、まいちゃんがかわいそう。ううん、それよりもサンタさんになにかじこでもあったんじゃないかしら)


 しんぱいするママの目の前でよぞらが大きくひかりました。


「え?」

 ママがおどろくまもなく、いっぽんのひかりがまいちゃんのへやにとびこんできて、まくらもとの大きなくつしたに入ったのです。


 おそるおそるくつしたの中をみるママ。そこにはかわいらしいピンクのウサギのぬいぐるみが入っていたのです。


(よかった。まいちゃん。メリークリスマス)。

 ママはほっとして、えがおになりました。




 つぎの日、ウサをだいじそうにだきかかえたまいちゃんは、くみちゃんに会いました。

「くみちゃん。メリークリスマス。この子はウサちゃんです。よろしくね」


 くみちゃんもいいました。

「まいちゃん。メリークリスマス。この子はシロちゃんです。よろしくね」


 ウサとシロはことばに出しませんでしたが、こころで話しました。

(よかったね。シロちゃん。メリークリスマス)。

(よかったね。ウサちゃん。メリークリスマス)。



 そのころサンタの国ではトナカイさんがサンタさんと話していました。

「サンタさん。ぬいぐるみたちがみんないい子で、たすかりましたよ」


「そりゃみんな、わしがたんせいこめて作った子たちじゃもの。いててて」


「ほらほらむりしないで。らいねんのクリスマスまでにはこしをなおしてくださいよ」


 トナカイさんはサンタさんのこしをさすりながらおもいました。

(ぬいぐるみたち、ありがとう。そして、にんげんの子どもたち、よかったね。メリークリスマス)。

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