第3話 栄光なる名誉を!

さぁ、少女客様!

次はどのぬいぐるみへロックオンするのかー!




生物海洋系最強(ぬいぐるみ人気的に)を誇るイルカの『トシエちゃん』選手を見て……しかしスルー!!



気づいてもらっただけに、手にも取ってもらえなかったことにトシエちゃん選手、非常に悔しそうだー!


ああーっと!いけません!悔しいからといって

ピチピチ跳ねてはいけませんー!

ぬいぐるみの本分を忘れてはいけませんー!





少女客様、今度は怪しさ激ヤバな海外アニメのキャラクターぬいぐるみ、

『パープルモンスター』選手の棚も…抜けたー!




さらに王道のテディベア売り場も駆け抜けように

通り抜けてゆく少女客様ー!


おっと、ここで親御さんに変化が!

安堵の表情を見せる親御さんー!


わかります、テディベアの価格はピンキリ、

高価なものも普通にありますからね~。


できることならチョイスしてほしくない

ところでしょう。





あ!



ああああっ!!!



取ったー!!



少女客様が手に取ったぞーー!!





これは!





特別コーナーで展示されていた…





犬型ロボットだー!




これは予期せぬキラーコンテンツー!




小さい女の子が、愛らしいぬいぐるみではなく、

NOTふわモコな犬型ロボットに食いつくなんてー!


これが現代の児童事情なのかー!



犬型ロボット選手を抱きかえる少女客様!

これはもはや「二度と離しません」といった心情の表れかー!



ああーっ!見てください!


あの少女客様のあどけなく、無邪気な、

今日一番の笑顔!



間違いありません!

これは犬型ロボット選手で間違いありません!



犬型ロボット選手の勝利を確信させる、

少女客様の満点スマイルーーー!!!



10万越えのおねだりとは、親御さんの心情を察せざる得ませんー!!




おおっと!

ここで親御さんが少女客様への介入だー!


親御さん、少女客様への

『本心の確認』行動を見せたー!



「本当にこれでいいの?」と聞く親御さんー!


少女の頷きを前にしても2度、3度と念押しして確認する親御さんー!


10万越えの出費を回避させようと必死だー!



対して、揺るがない気持ちの少女客様ー!



おおっと!少女客様!


レジへと伸びる通路を遮るように立つ親御さんを、

素早い動きでクリアー!


素晴らしい動きだー!

これには世界屈指のプレミアリーグのサッカー選手も

刮目不可避な華麗なフットワーク!


親御さんを躱したその先にあるのはディフェンダーはおろかキーパーさえも居ない、

ガラ空きのゴールポストというレジカウンターだけだー!




そして!


そしてとうとうレジまでたどり着いた少女客様!


犬型ロボット選手をカウンターに乗せて、

試合終ああああああーーーーーっ!!


届かないー!

少女客様の手が、カウンターまで届かないー!



精一杯背伸びをして手を伸ばすも、しかしカウンターまで届かないー!


これではまだ購入確定基準に達していないー!

どうする少女客様ーーー!



おっとここで、レジ担当の『おばぁ』がカウンターから出てきたぞー!


気を効かせたおばぁのナイスセービング!!



おばぁ、少女客様の前に跪ひざまづくと、


少女客様の手から犬型ロボット選手を…受け取ったー!




こ…この光景はーーーーー!!!



あの、フランスの超広大美術館に展示されている、

世界最高峰の芸術作品……


 『ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョセフィーヌの戴冠』



そのものではありませんかー!



いや!

これはむしろ、絵師が持つ未来が視るスキルにより、


少女客様とおばぁの、この光景を目の当たりにして、


絵師の中で爆発したインスピレーションがあったからこそ、かの名画を誕生させることができた、


奇跡のワンシーンといっても

過言ではありませんーーーーー!!!





そして!


そしてこの段階で!


レジカウンターに置いていませんが、おばぁの手に渡った時点で購入確定基準に達したと判断!



栄光ある名誉を手にした者が決定しました!!






その者は……



犬型ロボット選手ーーー!!!






まさか!まさか!


この店でぬいぐるみが選ばれない時が来ようとは

誰が予測できたでしょうか!



これまでの歴史において革命的な出来事!



ぬいぐるみ達から続々と漏れる、小さな、しかし深く重いため息!


しかし我々ぬいぐるみはこの現実を受け止めなければ

なりません。





!!!!!?!




こ、これは…!!


店内に広がる温かなこの雰囲気!



勝者たる犬型ロボット選手を称え、祝福する、


ぬいぐるみ達の気持ちが店内を包み込んでいます!



そうです!

試合が終われば種別など関係ありません!


素晴らしい!

まさに素晴らしきヌイグルミシップ!



おめでとう!


おめでとう!犬型ロボット選手!















我々『ぬいぐるみのおうち』のぬいぐるみ一同は、


新たなる来訪者を楽しみに待っていたいと思います!





それでは、これで実況を終了させて頂きます!



皆様、ありがとうございました!


またその時が来る日まで、


さようなら!


さようならー!

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「ぬいぐるみ」は聖女に選ばれたい! ~ これより、ぬいぐるみ達による『御息女に選ばれ購入』される名誉を懸けた試合を開催致します ~ 白鴉2式 @hacua

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ