第七十三話:合宿開始!
ゴールデンウイークが終わり、遂にやってきました合宿当日。
俺達
「さぁツルギ、お前の番だ!」
「これ。はい上がり」
「あぁー!? また俺の負けかよ!」
俺達は道中の暇をトランプで潰していた。
というか
「もう一回だツルギ!」
「お前全敗しすぎ。少し休もうぜ」
流石にそろそろトランプも飽きてきた。
俺は窓の外を見る。
森林の緑しか見えないな。
「そういえば、合宿施設って山奥でしたっけ?」
「らしいな。学園が運営してるっていう修行専門の施設だって」
ソラに合宿のしおりを見せながら、俺が説明する。
県を跨いだ先にある山奥。そこに建てられた巨大修行施設。
そこが今回の合宿場所だ。
サモンの修行に適した様々な設備があるらしい。
そして広い。山二つ分はあるらしい。
改めて思うけど、この世界サモンに力入れすぎだろ。
山二つ丸々サモンの修行場ってなんだよ。
そんなこんなで一時間後。
俺達は目的地に到着した。
「おぉ~、これ全部学園が持ってる施設なのか」
俺は目の前にそびえ立つホテルを見上げながら、そう漏らす。
いやだって、見るからに豪華なホテルよ。
パッと見はリゾート地にあるやつよ。
でもこれだけで終わらないのが、聖徳寺学園のスゴいところ。
「ツルギくん……これ本当に学園が運営してるんですか」
「らしいな。これに追加で各種修行施設があるらしい」
「私……なんだか目が回ってきそうです」
「俺もだよ。実際目にしたらスゲーな」
俺とソラが唖然としている横で、炎神は子供のようにはしゃいでいた。
アイツは単純だな。
「中々良さそうなホテルね。これは期待できそうだわ」
「アイが言うと更に恐れを感じるんだが」
「お金持ちの施設です」
リアルお嬢様の言葉で、ソラが更にポカンとした顔になる。
俺も間抜け面を晒しそうだ。
「全員集まれー! 移動するで御座る!」
というか伊達先生よ、バス移動も鎧武者スタイルだったのか。
汗だくになるくらいなら止めればいいのに。
一度ホテルから離れて、道を進む。
すると巨大なホテルの裏側には、巨大なドームが建っていた。
またドームですよ。この世界の人たちドーム好きだな。
俺達一年生はドームの中に案内されて、中央のスタジアムに通された。
「……なんだあれは?」
速水が中央スタジアムに用意されているものを見て、そう口にする。
それは他の生徒も同様であった。
広々としたスタジアムに並んでいるのは、何やら謎めいた機械達。
機械的な二本のアームと、中央には召喚器が埋め込まれている。
生徒一同が頭に疑問符を浮かべていると、一人の男の声がスタジアムに鳴り響いた。
「ようこそ。一年生諸君」
ライトに照らされて、スタジアム中央に現れたのは長い金髪の男。
入学式で大きなインパクトを残した人物だからか、生徒全員が驚いた。
「驚いたな、まさか
速水が言うように、スタジアムに登場したのは
政帝、政誠司だ。
「今回の合宿は、六帝評議会もサポートをする。存分に研鑽をしてくれたまえ」
学園最強の組織がサポートすると聞いて、一年生がざわめく。
まぁ無理もないか。流れ的に六帝と戦う可能性まで考えられてしまうからな。
まぁ運次第だと思うけど。
「まぁそう警戒はしないでくれたまえ。
俺と炎神は同時に「ちぇー」と言ってしまった。
上級生組はあくまで補助だけらしい。
「では僕から、この合宿について説明をさせてもらおう」
政帝が指を鳴らすと、スタジアムのモニターが表示された。
かっこいい演出だな。
「知っての通り、合宿は五日間。その期間内で君達一年生には三つの試練に挑んでもらう」
三つの試練?
いや俺は知ってるんだけどね。
「心技体を強める事を目的とした試練だ。その達成度合いによって君たちの成績が決定する」
つまり試練の内容次第では成績が落ちるし、上がる事もある。
成績が落ちるという事は、クラスの降格もありうるという事だ。
それを理解した生徒たちが、顔を強張らせる。
「途中でドロップアウトする事も可能だが、その場合の進退は保証しかねる」
サモン至上主義とはいえ、中々怖い世界だな。
不出来を見せ過ぎたら最悪退学ってことじゃないか。
まぁ俺はドロップアウトなんかするつもり無いけど。
「宿泊施設は和室と洋室を用意してある。洋室を選んだ生徒は道中に見たであろうホテルだ」
うんうん。いかにも豪華なホテルだったからな。
洋室を選んだ生徒が露骨に喜んでいる。
「なぁツルギ。お前どっち選んだんだ?」
「和室。炎神は?」
「俺も和室だ。やっぱり布団が一番だからな」
和室を選んだ生徒たちもテンションが上がり始めている。
わかるぞその気持ち。
豪華な旅館があると思うだろ?
「そして和室を選んだ生徒だが」
スタジアムのモニターに宿泊場所が写真と共に表示される。
その瞬間、スタジアムから音が消えた。
うん。俺は知ってたよ。知ってて和室を選んだよ。
「ホテルから少し離れた場所に
和室組の悲痛な叫びが鳴り響いた。
まぁ落差がありすぎるもんな。
「なんだよみんな。お寺も味があっていいじゃんか」
「おっ、炎神わかってるじゃんか」
俺と炎神はお寺でも満足だ。
まぁ俺の場合は他にも目的があるんだけどな。
「ちなみに原則部屋の交換はできない。交換を望む生徒はサモンで交渉することだ」
あっ、和室組の目に闘志が宿った。
洋室組も警戒心をむき出しにしている。
うーん、このピリピリムードよ。
「まぁ部屋の交渉は後にしてもらおう。早速だが君達一年生には、第一の試練に挑んでもらう」
政帝がそう言った瞬間、後方に並んでいた機械達が次々に分散し始めた。
機械に埋め込まれた召喚器が、次々に一年生の召喚器に無線接続する。
ちなみに俺も接続された。
「今スタジアムに散らばったのは、UFコーポレーションが開発したファイトロイドだ。君達にはこのファイトロイドと戦ってもらう」
「要するにこのロボットとファイトして勝てばいいのか?」
炎神が疑問を口にすると、政帝は「そうだ」と肯定した。
「ただしこのファイトは通常のファイトではない。特殊ルール【ボスファイト】となる」
「【ボスファイト】……ってなんだ?」
炎神が知らないようなので、俺が解説する。
「簡単に言えば【ボスファイト】専用のカードを採用したデッキを相手にする特殊ルールだ」
「専用カード? 普通のサモンのカードとは違うのか?」
「通常のファイトでは使えない代わりに、普通のカードよりも強い。それをいかにして攻略するかを試すってわけだ」
「なるほどな。分かりやすくて良いじゃねーか!」
やる気を燃やす炎神。
それは俺も同じだ。
この特殊ルールは普通と違うファイトができるから楽しいんだ。
「今回の【ボスファイト】は三つのデッキを用意してある。どのデッキと戦うかは完全にランダムだ」
ちなみに今回のボスデッキは以下の通りだ。
モンスター効果無効デッキ。
魔法カード無効デッキ。
超鉄壁回復デッキ。
うん。どれも倒しごたえがあるデッキだな。
強いて言えばモンスター効果無効デッキは、少し遠慮したいけど。
「第一の試練は【ボスファイト】をクリアせよだ。クリアした者から宿で休める。クリアできない生徒は、このスタジアムで寝泊まりだ」
よく見たらテントらしき袋が用意されているな。
毎年いるんだろうな……クリアできない人。
「それではターゲットロックされた生徒から挑んでもらおうか」
俺はターゲットロックしてきたファイトロイドの前に移動する。
他の生徒も同じだ。
「準備はできたね? それでは第一の試練、開始だ!」
「「「サモンファイト! レディー、ゴー!」」」
俺達一年生は一斉にファイトを始めた。
さーて、俺の相手はどんなデッキなのかな?
できればモンスター効果無効デッキ以外でお願いしたいんだけど。
『ワタシのターン。スタートフェイズ。メインフェイズ』
ちなみに【ボスファイト】での先攻は強制的にボス側がするルールだ。
『ワタシは〈【
機械的な音声と共に、ファイトロイドの場には三体のメカ鹿が召喚された。
〈【試練獣一型】スキルキャンセラー〉P11000 ヒット3
「……」
『〈スキルキャンセラー〉が場に存在する限り、相手の場のモンスター効果は全て無効となります。ワタシはこれでターンエンド』
ファイトロイド:ライフ10 手札2枚
場:〈【試練獣一型】スキルキャンセラー〉(A、B、C)
うん……心の中で叫ばせてください。
ど畜生ォォォォォォォォォ!!!
大ハズレじゃねーかぁぁぁ!!!
「俺……これ相手にしなきゃいけないの?」
面倒臭さの極みだなこれ。
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