第六十七話:クラス分けと意外な再会?

 衝撃の入学式が終わり、会場を出た俺達新入生。

 次はお待ちかねのクラス分けだ。

 とは言っても、事前に知らされてはいるんだけどな。

 俺は新入生向けの資料に記載されているクラス分けのリストを確認する。


「俺は1年A組か」


 ちなみにソラ、アイ、速水はやみ炎神えんじんもA組だ。

 なんか都合よく感じるだろ?

 でも俺からすれば納得の結果でもあるんだ。

 何故ならこのクラス分け、基本的には実技試験の成績によって決められる。

 下からE組、D組、C組、B組、A組という順位付け。

 つまり俺達は実技試験においては優秀な成績を残したという事になる。

 なお筆記試験の結果はクラス分けには影響しない。じゃあなんで筆記試験をやったんだ。

 あと学力も考慮してクラス分けしろよ。普通はそうだぞ。この学校頭サモン脳かよ。


 まぁそれはともかく。

 俺はこれからお世話になる教室へと到着するのだった。


「あっ、ツルギくんも同じクラスなんですね」

「というかゼラニウムは全員同じクラスだな」

「よかったです。私一人別のクラスだったらどうしようかと」

「大丈夫だろ。その時は俺がそっちのクラスに遊びに行くし」


 とりあえずソラの頭をよしよししておく。

 なんか絶妙に良い感じの位置に頭がくるんだよな。


「わわっ、ツルギくん」

「おっと失礼」

「ツルギ、女子の頭は気軽に撫でるものじゃないわよ」


 あっ、アイも来た。


「こっち来なさいソラ。髪直してあげるわ」

「はいです」


 アイよ、いつの間にブラシを用意したんだ。


「そういえばアイ。一人暮らしはどうなんだ?」

「……じゅ、順調よ」

「そうか。じゃあ今度遊びに行くか」

「あそっ!? そ、それはまた後日に……」


 なんか歯切れ悪いなアイよ。

 どうしたんだ?


「おーいツルギー!」


 今度は炎神か。いそがしいなぁ。


「どうした」

「俺らの組って、サモンが強かった奴らばっかなんだよな?」

「そうだな。サモンの実技が優秀だった奴が集まってる」

「入学式にいた九頭竜くずりゅうってやつは、どこにいるんだ?」

「あぁ、アイツなら別のクラスだぞ」

「なーんだそうか……え?」


 炎神が見事なギャグ顔を披露しているが、事実だ。


「中等部から持ち上がりの生徒は、一律S組だったか」

「速水、解説サンキュ」

「S組? どういうことだ?」


 俺は炎神にクラス分けについて説明する。

 俺達高等部からの編入組は、AからEのクラスに分けられる。

 ただし、中等部から持ち上がった生徒はこの限りではない。

 中等部からの持ち上がり組は、全員A組の更に上、S組に配属されているのだ。


「つまりあの九頭竜って奴はS組にいる」

「へー……S組かぁ、俺らより強いのかな?」

「どうだろうな? 中等部からの持ち上がりってだけで、実は俺達の方が強いかもな」


 実際S組への配属は暫定的なものでもある。

 成績次第では2年生に進級した時に、A以下のクラスへ降格する事も珍しくないとか。

 ちなみにこれはアニメ知識。


「逆に言えば、この1年の頑張り次第で俺達がS組に進級する可能性もあるというわけだ」

「速水、解説サンキュ」

「なるほど……つまりS組の奴に勝てばいいんだな」

「炎神は単純だなぁ。まぁ正解だけど」


 そんな話をしていると、髪を整え終えたソラとアイが参加してきた。


「そういえば、S組の教室ってどこにあるんですか?」

「そうね。隣ではないみたいだけど」

「二人とも、窓の外見てみ」


 俺は教室の窓を指さす。

 ソラ達がそちらに目線を向けると、窓の外には不自然なほどに豪華な造りの建物が一つ建っていた。


「……ねぇツルギ。まさかとは思うのだけど」

「あれ、丸々S組の教室な」

「格差ってレベルじゃないですね」

「ちなみに設備もすごいらしいぜ。椅子なんか全員分の高級ゲーミングチェアがあるとか」

「それ、よく教育委員会に怒られないわね」


 アイよ、俺も同じ気持ちだ。

 まぁでも、今年の頑張り次第では、俺達も来年あそこに行けるんだ。

 頑張りましょう。


「とりあえず目指すべきは、来年S組だな」

「そうだな。天川の言う通りだ」


 来年へ向けてのやる気が燃える俺達。

 だけどそんな俺達に話しかける者が一人。


「残念だけど、先にS組へ進級するのは……この僕だ!」

「お、お前は」


 金髪に、どこか身なりの良さを感じる風貌。

 俺はコイツに覚えがあるぞ。

 俺はコイツとファイトした気がするぞ。

 名前は確か……ざ、こ……


「ざこ太郎!」

太郎だ! 失礼な奴だな君は!」

「あぁそういえばそんな名前だったな」


 そうだそうだ。俺のチュートリアル戦の相手だ。

 今思い出したぞ。機械使いの財前ざいぜんだ。


「てか、お前も聖徳寺学園だったんだな」

「当たり前だ。僕は偉大なる王になる男だからな」

「その割には東校で猿山の大将をしてたみたいだけど」

「何事も練習が必要なのさ。それよりも天川ツルギ!」


 ビシィっと俺に指さしてくる財前。


「僕は君に勝つため、進化を遂げてきた! 今度こそ君を負かして、僕のプライドを取り戻す!」

「そうか。頑張ってくれ」

「他人事みたいに言うな!」

「だって負ける気しないもん。あとテメェの弟をどうにかしろ」

「本当に失礼な男だな君は! あと何故半蔵を知っている」

「お前の弟がウチの妹にしつこく絡んでくる。いい加減アイツをしばくの疲れたって妹が言ってるんだよ」

「最近半蔵の様子が変なのはそのせいか……」


 ようし、とりあえず言いたいクレームは言えた。満足だ。


「ともかく! 僕は夏のランキング戦で君に勝つ! それまで負けるんじゃないぞ!」

「へいへい。善処します」

「真面目に取り合ってくれないか!?」


 えー面倒くさいもん。

 と言いますか。


「S組になる方法なら、ランキング戦よりも手っ取り早い方法があるだろ。なぁ炎神」

「そうだよなツルギ」


 うむ。見事な意思疎通だ。

 それはそれとして、速水やソラが疑惑の目で俺達を見てくるけど。


「天川、武井、何を考えている」

「ツルギくん……まさかとは思いますが」

「ツルギー、今からS組に殴り込みに行こうぜ」

「いいね。行こう行こう」

「行かせるか!」


 速水に拳骨を貰ってしまった。

 何故!?


「なんだよ速水。止めるなよ」

「入学初日だぞ。騒ぎを起こすな!」

「でも強いやつを一狩りしたいじゃん」

「携帯ゲーム感覚で恐ろしい事を言うな。せめて明日にしろ」

「速水くんも、なんだかツルギくんに染まってますね」


 うーむ、そこまで言われては仕方ない。

 今日のところは勘弁してやるか。

 と考えていたら、担任の先生が入って来た。


「皆の者、席に着くでござる」


 あぁ、うん。口調と音でわかった。

 というかアニメ知識で知ってた。

 A組の担任は伊達だて権左衛門ごんざえもん先生だ。

 相変わらずの鎧武者スタイルである。


「拙者が諸君らの担任となる伊達権左衛門でござる」


 席に着くや、始まる先生の自己紹介。

 だがここで皆が、あることに気付く。


「むむ? 一人欠席しておるのか?」


 一カ所だけ空席。というか俺の隣が空席。

 あぁ、この席の人なら。


「先生。炎神ならさっきS組へ殴り込みに行きました」

「何!? 初日から威勢のいい武士でござ……いや違う! 急いで連れ戻すでござる!」


 大急ぎで教室を出る伊達先生。

 数分後、炎神は伊達先生に連れられて、教室に戻ってきた。

 S組への殴り込みは失敗したらしい。


 ……後で殴り込み計画立てるか。

 まぁそれよりも俺の関心が向いてるのは……


「(六帝りくてい評議会……あそこに入ってやりたいな)」


 色々と出来そうだし、ね。

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