なくしたモノ

鳴代由

なくしたモノ

 つい昨日のことだ。半年ほど行方がわからなくなっていたピアスが見つかった。蝶々の形をした、私のお気に入りのピアスだ。それが見つかった。ただ見つかっただけなら、私も「良かった」だけで済む。だがその見つかり方に少し違和感があった。


 そのピアスは、朝起きたとき、机の上に置かれていたのだ。掃除をしていて見つけたとか、別の探し物をしていて見つけたとか、それならまだしも、寝る前はなにも置かれていなかった机に、朝起きてみればピアスが片方、ぽつんと置かれていた。まさかまさか、偽物ではないだろうかと疑ってもみたが、蝶々の羽が小さく欠けていたのが、かえって私の物だという証拠にもなってしまった。


 見つかり方に少しの不安を覚え、気に入っていたピアスだったが、一旦、引き出しの奥にしまう。なんとなく気味が悪くて、早速着けようという気分にはなれなかった。


 そしてそのピアスが見つかってから、夜を越して、今このときまで、どこからか視線を感じるということが続いている。食事をとるときも、本を読んでいるときも、トイレや風呂に入っているときでさえ、誰かに見られている、という感覚だけがあった。


 最初は気のせいだと思い込んでいたが、それが妙に気になるものだから、家の扉という扉を開けて誰かがいるのか確認した。だが誰もいなかった。ほら、気のせいだった、と安心したのも束の間、また視線を感じる。さすがに気味が悪い。ちなみに、私は幽霊というものは信じていない。現実的ではないからだ。だからこの視線も、泥棒か何かが家に入り込んだのではないかと思っていた。……それも私が家中を調べたことにより違うことが証明されてしまったのだが。


 だったらこの視線を感じるのはなんなのだろうか。私はふと、後ろを振り返る。その瞬間、私の顔が引きつっていくのがわかった。


『僕が見つけてあげたんだ。喜んでくれた?』


 そう言うのは小さな、猫のぬいぐるみ。右腕が取れていて、耳のところは糸がほつれかけている、古くなったからと数年前に捨てたはずのぬいぐるみだった。

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なくしたモノ 鳴代由 @nari_shiro26

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