第2話 序章2節 第4次クルナ会戦勃発
―アーレ・ブランドン共和国
本拠地 ブランドン城
「さて、ヘンリー・ウィリアムズ少佐」
「ハッ!」
「君はこの戦局をどう見るかね?」
古びた王室の一角にある格式のある部屋。
そこに居るのは二人のみ。
最初に声を出したのはアレックス・モリス中将。アーレ・ブランドン共和国軍第三師団を預かる老練の司令官である。
「リフォルエンデの進軍2万に対し、ハビンガム軍は4万の軍勢で迎え撃つ体制で整えているようです、数で言えばハビンガム軍の圧勝のように見えますが・・・」
モリス中将に促され、戦局を説明する方はヘンリー・ウィリアム少佐。同じく共和国軍第三師団では大隊の指揮官兼師団参謀を務める。
「問題はやはり・・・新型の兵器か」
「閣下、これは私の推論ではありますが申し上げても宜しいでしょうか?」
「うむ、聞こうか」
「リフォルエンデ軍の今回の進軍は新兵器の開発に伴って前より計画されたものでは無いかと思われます」
「ほぅ・・・ではこれは報復戦では無いと?」
「ハッ、ハビンガムが相手ともなればやはり敵としてはあの戦象部隊を攻略しない事にはどうにも出来ないでしょう、しかし、今回起こす戦で、その勝機を見出したと考えられます」
「なるほどな・・・少佐、君は今回の戦は数では無く、質が勝る方が勝つと?」
「・・・いえ、実際には始まって見ない事には分かりませんが、どちらにせよこの戦争は双方にとって多くの犠牲を生むものと予測されます」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その言葉を聞き入れ、モリスはしばらく沈黙する。
「よし、儂の方からも軍部に進言してみよう・・・」
「ハッ、その際は是非とも私を双方が迎え撃つ軍隊の指揮を!必ずやこの身を持って閣下のお役に立てるよう期待に応えて見せましょう」
「うむ、その時は頼むぞ!」
―ガルバギア暦 1289年
第4次クルナ会戦勃発
ガルバギア暦1289年
ハビンガム暦 254年
鉱山国リフォルエンデはハビンガム朝の支配地域であるクルナ平野に2万の軍勢を引き進軍を行う。それに対するハビンガム軍は4万の兵を持って之に立ち向かう形をとった。
こうしてリフォルエンデとハビンガムの間に幾度かの争いが勃発。そして漁夫の利と称してアーレ・ブランドン共和国は双方に2万の軍勢を配置する形で陣を敷く。これにより、当事者同士の争いはより一層気の抜けない展開になっていった。
―リフォルエンデ最高評議会場
ハビンガム侵攻作戦会議。
「今回の戦いは今までとは違う!言うなればこれは聖戦である!長年我々を苦しめてきたハビンガム王朝を我らの武と知を持って押し返し、見事それを制した暁には慈愛を持って貧困に喘ぐハビンガム民を救済すべく・・・」
意気軒昂に持論を語るはリフォル・イリ・バンダリ国家元首。言わずもがなこのリフォルエンデの最高権力者その人である。
だが、その熱い演説に対し、周りの空気は冷ややかなものであった。誰もがこの戦争の本当の目的が新兵器を実践投入する名目であると考えているからである。
ハビンガム4万に対しこちらはその半分の2万。
だが、それでも彼らには危機感も、緊迫した緊張感も無かった。それは、試作の段階で何度もあの新兵器の恐ろしき破壊力を目の当たりにしていたからである。
新兵器150mm式榴弾砲(ネオ・ラピッドファイア)はリフォルエンデの最新兵器であり、これまでの従来の大砲とは比べ物にならない程の威力を秘めている。
その威力も申ことながらそれ以上に特質すべき点はやはりその射撃速度と命中精度である。従来の大砲は発射から着弾までを放射線状に描く事によって流れる為、その命中精度はお世辞にも良いとは言えず、発射速度も撃ってくる事さえ分かれば目で見て避けれる程度であった。
だが、この150mm式榴弾砲は込める弾の重量を大幅に軽量化し、且、速度を速める事によって更なる破壊力と命中精度を上げる事に成功。その威力たるや着弾した半径5m圏内ならば兵士、兵器をほぼ無力化出来るという実験結果のお墨付きまであり、いかにあの巨体を持った象であってもこれらを無傷で突破出来ることは叶わないだろうと言う圧倒的見解が、逆に軍の士気を下げているとなれば皮肉な話である。
そのおかげもあり、今回の最高司令官が老練のマルティネス・ハーバー元帥に選ばれた事に対してもさほどの反対は出なかった。ハーバーはロンドニア出身の元傭兵軍人ではあるが、ここリフォルエンデが開拓された時にも在籍していた古株である。だが、その当時リフォルエンデに居たその殆どがハビンガム朝から流れた、褐色のハビンガンであった為、北西系の白い肌を持つノースウェスタンのハーバーの事を良しと
しない人間は少なくなかった。
そんなハーバーが元帥将までのし上がれて来れたのは故に、その功績によるものである。別名、『不敗の名将』とまで呼ばれた彼の功績は、四方を囲む各国からの侵略を見事までに完封したとされるその防衛戦術を高く評価されたものである事は、その手に握る元帥杖が物語っている。
だが、今回の作戦は防衛戦で無く、侵略戦という事もあり、彼の起用は見送られるだろうとの見解が強かった中でのその抜擢には各幕僚達から驚きや多少の批判の声が上がるとという見方をするものも多かったが、蓋を開けてみれば・・・。
欠伸を嚙み潰して眠気を堪えている上級軍人達を見れば一目瞭然だろう。
軍属の誰もがこの戦争に積極的でない事は明白であり、この戦争が国家元首であるバンダリの主導によって動いているのもまた明白であった。
「元帥閣下、今回もその堅実なる手腕が振るわれる事を楽しみにしていますよ」
ハーバーに握手を求めるは、カイラーサ・グルカン。リフォルエンデ軍の上級大将であり、その指揮権の半分を統括する軍事司令官の一人。リフォルエンデ軍の二代巨頭の一角、グルカン派の会長その人である。
「ハハハ、どうも私は攻めるのは苦手でね・・・今回はてっきり君が指揮するものと思ったのだが」
返す手でハーバーも半場本音のような事を口にする。
「何を仰いますか、私のようなハビンガム出身の古びた軍人など、連中に良いように手玉にされるのがオチでしょう、ハーバー元帥、貴方ならきっと連中の分厚い野面皮に大きな風穴を開けてくると私は信じてますがね」
「ハハハ、まぁご期待に応えられるかどうかは・・・しかし全力を持ってリフォルエンデに貢献させて頂こうじゃないか」
皮肉や毒の応酬が続く会話も、ハーバーが敬礼を示す事で途絶える。
その後ハーバーはゆっくりと会議場を後にし、自身の元帥室へ戻っていく。
格式のある立派な椅子に座り込み、軍帽を鼻の位置まで下げて深いため息を吐いた。
「ふぅー、こんな時は是非ともうまいコーヒーでも欲しい所だな、グランデ産の紅茶も悪くないが、今はどちらかと言うとコーヒーの気分だ」
誰に言う訳でも無く独り言のように呟くハーバー。しかし、その横にいた従者がすぐさま反応する。
「ハッ、それではすぐにお持ちいたします」
「あ、君、それとウォン准尉にここへ来るように伝えておいてくれ」
「分かりました、すぐに此方へ来るよう要請します」
「ふむ・・・」
ーーーーーーーーー
戦争というきな臭い空気が漂い、人々が慌ただしく駆け巡る中、ウォン・リオン准尉はただ一人、ぼっーと空を見ていた。
ウォンはウェスタニア大陸に多く見られるサウイースタン人種であり、その特徴とも言える黒い髪と目が印象的ではあるが、その見た目はお世辞にも美男子とは言い難いものであった。締まりのない軍服は所々で皺が目立ち、その美しい黒髪もボサボサして纏まりがない。長身であるが、細身でよく周りからは『軍服を来た一般人』などと揶揄される始末であった。
ただ、その外見で誰もが唯一認める所は、そんな容姿でも彼が賭けている丸眼鏡だけは何故か常に奇麗に手入れされており、その時だけは何処か『彼の知将』を思わせる風貌を漂わせているようにも見えたと言う。
リフォルエンデはその標高が高い事もあり、天気は変わりやすく、その殆どが曇りに覆われている。しかしながらその雲は奥深く、澄み切った空気と相まって深い味わいがあるとウォンは感じていた。
このままいくと来週には雪が降りそうだな・・・。
ウォンはそう呟くと軍帽を取り、頭をポリポリと掻く。
やれやれ・・・・。
ウォンを知るものでの彼の渾名は『ヤレヨレのウォン』規律正しい軍務に置いて彼の態度はまさにその名の通りのだらしなさがその言動や服装に現れた言葉でもある。
「ウォン准尉!」
褐色色の若い男がウォンを見つけ慌ててこちらへ駆けてくる。階級は少尉だった。
「マルティネス・ハーバー元帥がお呼びである、すぐに出頭せよの事だ!」
その言葉を聞き、ウォンは少しため息をつく。
「はぁ~・・・やれやれ、大佐も人が悪いな、どうせ俺の意見なんかまともに聞きやしないだろうに」
「…・・・は?」
「あ、いや、こっちの話です、すぐに行きます」
そう言うとウォンはまた帽子を上げ、頭をポリポリ掻きながらゆっくりと歩き始めた。
ーーーーーーーーーー
「よぅ、どうだリフォルエンデは、多少は慣れたか?」
「中々に空気が清んで良い所ですね、大佐・・・あ、いや元帥閣下が気に入るのも分かる気がします」
「お、おい!貴様、元帥閣下に向ってなんだその口の聞き方は!!」
「良い・・・ああ、それと、何か飲むかね?」
「では私は紅茶を」
そこまで聞くとハーバーは手で従者に合図し、席を外すように要請すると同時に飲み物を持ってくるよう命じた。
「それにしても『大佐』か、懐かしい響きだ」
「すみません、どうもロンドニア時代の呼び名が癖になってしまって…」
「まぁ、いいさ・・・それで向こうの方はどんな感じだ」
「相変わらずですよ、目下血の気が多いのはハビンガムとアーレ・ブランドンぐらいです、まぁさすがに攻め入るなんて事はしないでしょうがね」
「そうだろうな・・・ロンドニア軍は儂が抜けた後でも中々に手強い」
「それに君も、か」
ハーバーはウォンに目を向け、コーヒーを少し飲む。
「それにしても君が紅茶派だったとはな」
「正直言うとコーヒーは苦手でしてね、私から言わせれば無骨な飲み物ですよ、香りは素晴らしいけど、色が良くない」
「その点紅茶は香りも色も、そして味も申し分ないと来ている、芸術に自信がある者なら誰だって紅茶を選ぶに決まってます」
「ハハハ、そこまで言われると儂も黙ってはいられないな、この香りに深い色合い、そしてコクと苦みを楽しめないのでは一介の大人としてはどうかと思うがね」
ハーバーが言い返すと、ウォンはお手上げとも言うべく肩をすくめる。
「ところで、私をこんな所へ呼び出したのは嗜好品論争をする為じゃ無いのでしょう?」
「そりゃそうだ、さすがにその為に君をわざわざロンドニアから引き抜いたのであれば割に合わなさすぎる」
「・・・今回、総司令官に任命されたそうですね」
「ああ、まぁそうなるとは思っていたが、事前に君を呼び出しておいて正解だったな」
「儂は攻めるのはどうも性に合わなくてな」
「・・・同感ですね、私も戦争は嫌いです」
「おいおい、私は何もそこまでは言っておらんぞ」
「そうでしょうか?私にはそう聞こえましたが」
「全く、傭兵軍人というのはどいつもこいつも口だけは達者な連中ばかりに育つ」
「その頂点に君臨されるが君がここに・・・」
ウォンは大げさに腰を落とす。
「冗談はよせ・・・しかし今回の戦争、周りは楽勝だなどと言うが、儂はそうは思ってない」
「・・・・・・・・・・・・」
「敵の敵は敵とな、ハビンガム南方の4万もそうだが、その南西にアーレ・ブランドン軍も間違いなく軍を配置するだろう、隙を見せれば奴らの格好の餌食だ」
「それで閣下は、どうされるおつもりでしょうか?」
「・・・・・・・・・ふむ、正直言うと儂は途中まで攻めてある程度アレの威力を見せつけたら引き返そうと考えておるよ、それでも今回の目的は十分に達成できよう」
「だが、それに対して敵がどう動くか・・・じゃな」
ここまで言うとハーバーはまた大きくため息をつく。従者によってウォンの紅茶が運ばれたのもまた同時であった。
「それで、『フェザール城の英雄』である、ウォン君の意見を是非聞きたいと思ってな」
「またそれですか、何が英雄なものか・・・」
ウォンは苦笑しながら紅茶を啜った。
「私は誇張や伝手が尾を引いて君の背中を押しただなど思ってはおらんぞ?」
「はぁ・・・あれはたまたま上手くいったんですよ」
ーーーーーーーーー
ガルバギア暦 1282年
ハビンガム暦 247年
今から7年前、ウォンが20歳で傭兵階級下士官時代の事である。ロンドニアの国境にあるフェザール城がハビンガム軍によって完全に包囲され、その籠城は確実となった。フェザール城に取り残された軍勢はわずか1000足らずと付近の住民、それに対しハビンガム軍はなんと10万という大軍を率いてフェザール城を完全に攻め落とす直前であった。
その恐ろしい軍勢にしてさらにそれを指揮していたのは降伏すら生ぬるいとしてその全てを蹂躙せんとするハビンガムの将、シャーフール・ギャネンドラ将軍であった。
そんな圧倒的な戦況の中、ウォンは少数精鋭を引き連れて囮を買う事を王に申し出、わずか数十騎で荷馬車を囲いシャーフールを引き付けるよう、あたかも王を護衛するかのように城を抜け出す事に成功する。
シャーフールはその行動を思索したが、どのみちこの軍勢をどうこうする事は出来ないと判断、それよりもこの強固なまでの軍勢を抜け出し、さらに逃亡されたとあっては己の、強いてはハビンガム朝の名折れにもなりかねない為、自らが陣を引きウォン軍を追従する事を決意する。
しかし、少数精鋭であるウォン軍にその足が届く事は叶わず、さらに、それ自体も陽動であると気づき、慌てて元へ引き返す頃にはフェザール城は自軍の降伏勧告に応じ、無血開城にて一滴の血を流さず事も無く終戦していたという事実であった。
これに激怒したシャーフールは、部下に『何故故に降伏を促したか!』と問えば、慌てた部下は『将がここを離れてすぐにロンドニアの大軍がフェザール城救出の為、進軍中との伝達あり、降伏を認めるならば全軍を引く』との事であったが、後にこれはウォンが流したデマであった事が後に発覚した。
これにより、フェザールはハビンガムに制圧された形ではあるが、その犠牲を一人も出さずに済んだと言われている。
後にこれを『フェザール城籠城戦における完全救出劇』と称し、その当人であるウォン・リオン士官はのちに『フェザール城の英雄』と呼ばれるのである。
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「たまたまか・・・あの状況でシャーフールの威光によって軍が一本化されていたと分析できるヤツなど中々におらんじゃろうて」
「ええ、ですからそれが賭けだったんです、もしシャーフールの部下に私の嘘を見抜く、それでなくても疑うような者がいれば私は今頃、磔にされて見せしめにされていたでしょう」
「そう言う事を簡単に言ってのけるのが君の恐ろしい所だと、私は思っているがね・・・」
「それで儂としては今回も、その叡智に肖りたいと思う訳だが」
その時、ウォンは初めてこの部屋で帽子を少し上げ頭を掻くと「やれやれ・・・」と呟いた。
「私としても、別に特段策があるわけじゃ無いんです、先ほど閣下がお話したのと同様、示威的な効果を見せて後は即撤退と言うのが正解でしょう」
「ただ、問題は自軍がその通りに動いてくれるかですね・・・」
「・・・そこじゃな、いかに儂が総司令官とは言ってもそれをよく思ってない者もいる」
「じゃが、今回はそれはさておき、この戦争の主導権を握っているのがあのリフォル・イラ・バンダリ元首というのが中々に頭が痛くてな」
「やはり元首はハビンガムの領土の何割かをその手中に収めたいと考えているのでしょうか?」
「おそらくはな・・・そうなると儂の軍事作戦に大いに反対する事が目に見えている」
「つまり、今回の戦争はいつもの小競り合いに在らず・・・という事ですか」
「左様、よって儂と君の作戦も却下とされる可能性が高い」
そこで互いにカップを取り、共に飲み物を啜る。
「しかし、私はどうも戦争と言うものが苦手です、軍人なんてものは子供の憧れ程度の存在で十分だと思うのですがねぇ」
「全く同感だな、儂が言えた義理じゃないが、もし神がいるなら『何故お前らはいつも争ってばかりいるんだ!』と憤慨しているに違いない」
「しかし、それはそれとしてだ、君も儂もそれで飯が食えている以上、つまらん屁理屈で戦術を疎かには出来ない、さすがに今は無理だろうが、近いうちに君が考えるハンビガム侵攻作戦の考案を頼む、期限は三日後、よろしく頼むぞ」
ウォンはそれに対し最敬礼で答えながらも、心のどこかでまたやれやれ・・・と呟く。
元帥室から外に出ると、吹き抜けになった灰色の空から小さく冷たい霙が振ってくるのが見えた。
だが、それを美しいと思う程の余裕はあまり無く、それ以上に今回の戦争に対しての行く末を憂えるようまた頭をポリポリと掻く。
そしてゆっくりと歩きだし、やがてその後ろ姿も柱の陰に隠れて見えなくなった。
ーーーーーーーーー
―ハビンガム王朝首都
アルナーチャル城にて
クルナ平野防衛軍事会議が開かれる中、その空気は重苦しいものに包まれていた。
高齢である国王ダッカ・シャーミン・アルナーチャルはベッドに寝たきりではあるが目はしっかりと見開き、その意思強き顔立ちで会議に参加していた。
今では国の内政や軍事、それら全てを第一王子であるハゲルハットに委ねている。
「フン、糞忌々しいリフォルエンデの盗人どもめ!此方が大人しくすれば大きく出しゃばりよって!」
今まで戦象部隊を実践投入しなかっただけの此方の出方に仇で返すような真似をされた事にハゲルハットは大きく腹立っていた。
「しかし、兄者よ、さすがにこれでは我々も本気を出さざるおえまい・・・密偵は全て殺されたが辛うじてこの度の戦に備え賊国がおぞましい新兵器を開発したという情報だけは耳に入る事ができたのだ」
第二王子であるシャハが兄の怒りを宥めるようにハゲルハットに進言する。
「して、シャハよ、その新兵器とやらはやはり砲台か何かか?」
「いや、今回は自走こそできないにせよ車輪が付いているものらしい・・・そして従来のものよりも小さく、だがその威力はそれらの比では無いと」
「シャハよ、それはおかしいのではないか?何故小さくなった物が大きな破壊力を生むと言うのだ?」
「彼の賊国は、此方でも把握出来ない程の技術力があります故、もしや我らも存じぬ新たな手法で兵器の小型化に成功したものと推測されます」
「……そうか、そうか…クックック、新たな兵器を開発したか・・・」
先ほどまで苦虫を食らったかの如く唸っていたハゲルハットが突然笑いだす。
「ならばこちらも、"アレ"を投入するまでの事!!」
その言葉に会議に参加する重鎮達から多くの歓喜が響く。そしてその言葉に弟のシャハもニヤリと笑うのであった。
(どうせこの戦も何時もの小競り合いの類かと思ったが、今回は少しばかり楽しませてくれそうだ・・・)
そんな思惑を含みながら。
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