訃報
偉い人が死んだというニュースをテレビががなり立てていた
偉い人は紫色の服を着て別の世界から国会議事堂のなかへ降り立った人だった
いつも冗談を言いながら人の頭に鉈を振り下ろした
偉い人の遺産はどこか遠い国で百万人の人間を虐殺したことだった
偉い人がたくさん来て偉い人の葬式でいろいろな国の言葉を喋った
偉くない人たちは仕事帰りに缶ビールを飲みながら偉い人たちの宴を眺めていた
死ぬのは怖くないと思っていたがいざ死んでみると思った以上に怖かった
と偉い人がテレビのインタビューに答えて語った
偉くない人たちは街頭でしきりに感心しながら頷いていた
温泉に浸かりながらおれは人々が嘆き悲しむのを見ていた
死んだのが偉い人でよかった
死んだのがうちで飼っているハムスターのポチでなくて良かった
ポチが死んだらおれは当分立ち直れないところだった
死んだのが偉い人で本当に良かった
とおれは心の底から安堵して畳のうえに布団を敷いた
テレビでは生前の偉い人の顔が大写しになっていた
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