ゾンビになった夜に

僕は気の遠くなるような道のりを歩いた

遠くに見える建物が

近づいてきたり離れていったりした

月明かりが

誰も居ない農道を照らした

鼻から流れ落ちる血が

殺伐とした金属の匂いを放った

少女から奪った自転車を

僕は水田の用水路に投げ捨てた

そうして

明るい街の光を求めて果てしない跛行を続けた


ゾンビになった哀しみに

僕は押しつぶされそうになりながら

人間だったころ

好きだった女のヴァギナを想いながら


道はどんどん寂しい場所にそれていった

まるで孤独な人の人生のように

やかましいカエルの声だけが聞こえてきた

人の気配はどこにもなかった

もう永遠に柔らかいベッドのうえに横たわることはない

温かい風呂につかることもまたない

僕はゾンビになったのだ

死肉を求めてさまよい歩くだけの夜明けが

これからの僕を待ち受けていた

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