一ヶ月目の成長発表

――このように、小鳥ちゃんの学校では、幼稚園から高校までの全員が小鳥ちゃんをサポートしてくれています。


――え、幼稚園の子にまでオムツを替えてもらっているのですか?


――はい、ちょうどオムツを必要とする年代の弟や妹が居る子が多いようで、とても上手なんですよ。



スタジオのスクリーンに、私が園児にオムツを替えられている様子が映し出される。


とても正面なんか見てられず、うつむくしか無い。



――彼女は学校で、一ヶ月でおむつを外し、この番組の残り11ヶ月をどうするか悩ませるのが目標と語っていたそうです。


――お、それは期待できそうですね。



――では、そんな彼女のオモラシポイントは今どんな具合でしょうか。


ジャラララララ……



"□□□6"








"□□56"








"□556"








"-556"



"ジャ~ン"



――え~!?



――なんとマイナス500超え!

――成長があったのか怪しい数字です!!



――どうも我慢が授業一回分も続かないようで、休み時間の度におむつ替えをされていたようでして。


――え、それでは尿の過剰生成か、水の飲み過ぎかなにかなのでは。


――それが健康上の問題は無く、一回あたりの量も一時間としては妥当なのです。


――では本当にただのオモラシですか。


――そうなりますね。



――幼稚園児のほうがお姉さんなんじゃないですか?


"ハハハハ"



好き勝手言ってくれて……私だって、私だって授業中にトイレに行かせてくれたらこんなことにはならないのに……


休みの日には、起きてる間はオムツ使わなくなったんだぞ家にいる限りは。

オネショは……まぁうん。買い物中も耐えきるの無理だけどさ。



――さて、四人中二人が罰ゲームですが、小鳥ちゃんは……えー、何ポイントからでしたか?

――300です。 余裕ですね。

――健康診断もここまでじゃなかったんですがねー


"ハハハハハ"




おのれおのれおのれおのれ……



――さて、罰ゲームですが、今日からこちらを当てていただきます。



そういうと、スタジオの扉が開いてキャスター……いやあれ交換台だな。学校にあるのと同じやつ。

その上になんか束? ……なんか載ってる。



――こちらですが……小鳥さん。これなんだと思います?


……布っぽいような気はしますが……何かはさっぱりです。




――わかりませんか、では正解ですが……これは布おむつです。


布? 布だと何が変わるの?



――布おむつですが、紙と違い洗って使い回せるので環境に優しくなっております。

――それにコストが少なく、一回替えば何百回だって使い回せるのです。


――本当は成形パッドというもののほうが布おむつとしても主流なのですが、あえて通常の布おむつとなっております。


――あとはそうですね……トイレトレーニングはこちらのほうが進みやすいそうですよ? 不快感はこちらのほうがあるみたいですし。


"クスクスクスクス"


……




――さて布おむつですが、紙と違いゴムもテープも着いていません。


――なので、おむつカバーも合わせて使うことになります。

――こちらです。



そういって司会者が手に取ったものがスクリーンに映し出される。


それは、黄色い生地で、そこに日曜日の朝に放送されてそうな魔法使いっぽい少女が大きく貼り付けられた……



――それ、子供用じゃないんですか?


――はい、今までのものと違い、本当に子供用ですね。

――それを、小鳥ちゃんのために、特別に大人サイズにしてもらった物となります。




思わずなにか言おうとした。


顔が熱いのを感じる。


だが口が開くばかりで、声が出ない。




――それと、今回も名前欄があるんですが、ちょっと読み上げてもらえますか?


――はい、えーと……あれ? 学校欄が幼稚園ってなってますね。

――え、小鳥ちゃん、落第ですか?



――いえ、流石にそこまではしません。

――ただ、今後小鳥ちゃんには幼稚園児を含む、全学年に対し、お姉ちゃんと敬っていただくことになります。


――みんなオムツ外れたお姉さんですしね。


"ハハハハハ"


なんで……なんでこんなことに。




――さて、オムツの用意が出来ました。

――小鳥ちゃん、こちらに横になってください。




……当てないとだめ?




――ダメです。




会場の圧力に負け、おずおずと交換台に横になり、カエルのポーズをとった。


そして、転落防止ベルトを装着される。



――あー、紙おむつがこんなに膨れてますね……何回やっちゃったんですか?


えーと……その……5回です。




――とても高校生とは思えないですね。

――はい、お尻を拭けた所で、スペシャルゲストをお呼びしております。 どうぞ。



そしてまた会場の扉が開き、そこから入ってきたのは、見たことのある子だった。



――はい、お名前を教えてくれるかな?


――川上るみです


――るみちゃん、としはいくつ?


――ごさい!!


――はい、ありがとうございます。

――るみちゃんは小鳥ちゃんの学校の附属幼稚園に通う年中さんでして、なんと学園で一番おむつ替えがうまいのだそうです。

――小鳥ちゃんとは12歳差ですね。


"クスクスクス"


そう、この子……怪人が出たあの日から必ず私より先に来ていて、朝の学校指定のおむつに替える時は毎日この子がやるようになっていたのだ。

休み時間のおむつ替えは交代だから上手い下手でばらつきがあるのだが、この子だけは元がうまい上に回数を積んで、本当にズレない確実なおむつ替えをするのだ。


ってまさか……



――るみちゃん、布おむつは当ててあげられますか?


――はい、小鳥お姉ちゃ……ううん、小鳥ちゃんのためにたくさん練習してきました!



言い直したな……まさか本当に……



――では小鳥ちゃん、いつものように、お願いしてみてください。


……カメラの前で?


――早く、どうぞ。




…………るみちゃん……オムツをか

――ちょっと待った!


――今日からるみ"お姉ちゃん"と呼ばないとだめですよ。

――るみちゃんはとっくにオムツはずれしているのですから。


るみお……お姉ちゃん……オムツを……替え……て、くださ……い……



――はい、ちゃんと言えました。

――では、るみちゃん。お願いします。


――はーい。

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