体育とブルマ、そしてオムツ(厚)
ヒーローでアイドルだが、学生でもある。
三時間目の授業を終えた小鳥は、席を立ち廊下へ向かう。
普段、誰かと話すことはあまりない。
アイドル業と同じで、強すぎるのが原因でボッチ化が進んでいたのだ。
が、今は違った。
――小鳥ちゃん、オムツ替えるの?
今では、クラス生徒が普通に話しかけてくる。
そう、オムツを当てるようになったことで、イメージが激変し、話しやすくなったのだ。
小鳥の性格に特に嫌われるような要素は無い。
本当に、ただ強すぎるそれが世間を怖がらせているのだった。
そこに、オムツが外れないという要素が追加され、突如として親しみやすくなったのである。
小鳥自身がどう思うかはともかく、事務所の狙いは劇薬どころでない効果があった。
形が違えばイジメのネタや脅しになりかねないそれは、小鳥の実力とネットで広まり済みという事実で一切なかった。
実際、大変遺憾ながらオムツは今も当てていおり、かつ使用済みであった。
多少我慢が出来るようにはなったが、多少止まりであった。
一時間という時間を我慢し通す、というのは未だ無理であった。
――……漏らしてないわ、普通におトイレよ。
嘘である。登校から現在までに通算4度漏らしている。
回数が多い分一回あたりの量も多いわけではなく、その上で複数回使う前提のオムツである。
まだ吸水量には余裕があった。
ちなみにちょっと前までは膀胱で生産からのオムツ直送で、我慢以前の問題であった。
我慢出来るようになっただけでもすごい成長であった。
だが、次の授業が体育なのだ。
世間の学校の体操着がどんどん短パンへ移行する中、この学校はどういうわけか未だブルマを採用し続けている。
小鳥が更衣室でなく、トイレに向かおうとしている理由はいくつかある。
1:おむつを見られるのが嫌だ
すでにバレてはいる。
だからといってプライベートで見られても良いということにはならない。
しかもどう見ても子供用デザインで名前が記載済みのオムツである。ひらがなでだ。
『撮影だからあのオムツだった』と『普段からこのオムツなんだ』では違うのである。
2:オモラシサインを見られたくない
オムツだけだったら『宣伝目的』とか『契約上の都合』だとか言い張れないこともない……と思う。
だが、現在当てているオムツのオモラシサインが真っ青で黄色く膨れ上がった状態を見られたら、嘘としか思われないだろう。
四回漏らしているので、すでに青く染まり、オムツ自体も黄色く大きくなっている。
3:ブルマが履けなくなる。
流石に事が事なので事前に試していたのだが、この異様に膨れるオムツではブルマが履けなくなるのである。
漏らす前だったらなんとか押し込めるのだが、一回でも漏らせばそもそも履けなくなってしまうのだ。
面倒がってブルマのサイズを変えなかった過去の自分が恨めしい。
身長はあまり変わっていないのだが、BWHだけは凄まじい速度で魅惑的な凹凸へと発育していた。
こうしてすでにキツくなっていたブルマに、オムツが加わって詰め込み困難と化したのである。
オムツがまるわかりだが、見られるよりは良い。
4:オムツが捨てられない。
ブルマを履く前に、新品に当て直す必要がある。
だが使用済みのおむつは名前入りだし、無くてもオムツと言えば小鳥ぐらいに強烈なイメージがすでに染み付いている。
そんなものを学校には捨てられない。
吸水力に余裕があるので普段なら同じオムツに漏らし続け、帰りの駅のトイレで替えるのだが、体育ということで今日は話が違うのだ。
ブルマを履くために、おむつを替えねばならないのだ。
という4つの理由なのだが、当然言えない。
――オムツだったら、気にしなくて良いよ。みんなわかってるから。
わかられても困るんだよ何がわかるんだ。
なんでか非常に寛容なクラスメイト達を後目にトイレへ向かい、おむつを替える。
早速トイレにてテープを外す。
ビリッという音が出るこれを隠すのは無理……いや入る前に散々周囲を見た。大丈夫なはずだ。
そうしてオムツを替え、新しいオムツを当てた。
オムツを早く隠したいので速やかにブルマを履こうとした。
……お尻でつっかえた。半分も隠せない。
太ったか? いや一日でそんな変わるわけがない。
下を向くが、胸が邪魔で見えない。
一旦外してオムツの前側を見る。
よく見たら柄が微妙に違う上に、前のより分厚い。
兎が人参を抱えているのは同じだが、兎はこちらのほうが成長している。
何より、先程まで当てていたのは「Big Baby」と書かれているが、今度のは「Ultra BIG Baby」になっている。
大慌てでネットでメーカーのHPの商品一覧を見た。
あった。
・UltraBIGモデル
・安心の16回対応。脅威の1.5L吸水を実現。
小鳥がこないだモデルをした物の、吸水力強化版だった。
ただ『近々パッケージ変更予定』と書いてある。つまりこれが次の仕事なのだ。
ちなみに先程まで当てていやたやつは『Bigモデル』で、だいたいこれの半分ほどの性能である。
四回漏らしたオムツの膨れ具合と比べても、一度も漏らしていないこのUltraの方が分厚い。
そういえば、最初にもらった袋を使い切り、新しいのを降ろし持ち込んだのであった。
恥ずかしくてパッケージは紙袋に包っぱなしで碌に見ていなかったのだが、まさか違う……しかも倍以上厚いのをよこされるなんて想像していなかった。
今朝、先生が唐突に話しかけてきたことを思い出す。
――青空、オムツがキツイようならブルマ無しでもいいぞ。
あのときは睨み返したが、現在大真面目に選択肢に入ってしまっている。
つまり
1:オムツ無し、ノーパンブルマで体育を乗り切る。
オモラシは耐えきる。
2:ブルマ無し、オムツ丸出しで体育を乗り切る。
オモラシは耐えきる。
この2つ、オモラシは耐えきるという点が同じだが、してしまった場合の結末が変わるのだ。
1の場合、オムツをしていないのでそのまま水たまりを作り、体育を中断させてしまう。
そして今後いかなる時も無言の圧力によりオムツを当てっぱなしにすることを余儀なくされる。
治ってもだ。
2の場合、中断させるようなことにはならないだろう。多分。
ただ、オムツが丸出しであることでオモラシサインを見られかねず、さらに、自分はこんなにも分厚いオムツが必要なのだと思われかねない。
だが治ったら……外せると思う。多分。 最悪宣伝だと言い張れる。
……結局オムツ当てることになる。
1時間耐える自信はあるか? そんなものはないのだ。
出来るなら休憩時間ごとにトイレに駆け込みオムツは保険程度にしている。
今自分にできるのは、指名され立っている時のオモラシを避け、平時もオモラシの最中であると悟られないことぐらいである。
そして、毎度体育のたびにこの判定を繰り返す。
……無理である。
なにより体育祭やら球技祭やらもそのうちあるのだ。
後々を考えれば、絶対にオムツで行くべきである。
他にオムツはない。オモラシ済みのオムツでいくのも嫌だ。
だが、恥辱を噛みしめるしかないのか。
今日の体育は何だったか……少なくとも体育館ではないのは間違いない。
キーンコーンカーンコーン……
チャイムが鳴った。
もう行くしか無い。
勢いをつけてトイレから出た。
まだ廊下から生徒が教室に戻りきっていない。
――青空小鳥だ。
――本当に普段からオムツなんだな。
――がんばれー
視線が自分の下半身に集中する。
這い回るような感覚から逃げるべく、校庭へ走った。
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