吸水実験
二枚目のオムツが私の荷物に増えた。
怪人のせいで世間からゴミ箱がだいぶ減り、この惨めなゴミが捨てられない。
……いや、あっても捨てられない。
こんな私の名前がバッチリ書かれたオムツなんか捨てられない。
なんで袋の中身全部に記載済みなんだ。
それ以上に、なんでおもらしするまで気付かないんだ私は。
撮影前までは普通に行けてただろう。
撮影中になにかされたか?
魔法だったら私に気づけ無いわけないし。
魔法でないとしたら薬か?
いや撮影中は自分で持ち込んだペットボトルしか飲んでないし。
駅のトイレで一日を振り返りながら検討するが、気付かない。
各駅電車だから良かったが、特急に乗ってたらどうなったのだろう。
そんな事を考えているうちに、三枚目を替える必要が生じた。
なんで気づけ無いんだ。
だが、今私はハンドバッグとこのオムツのパッケージを隠すための紙袋ぐらいしかない。
もう使用済みオムツを入れる場所なんか無いぞ。使用前より後の方が大きくなるのだから。
ずいぶん膨れるなこれ。
……いや、こんだけ厚いんだ。二回以上耐えられるんじゃないか?
ネットで調べた所、幼児用オムツの最大級水量は1リットルだそうな。
大人用は出て来ないが、これもそのくらい行けるだろうか。
いや、推測は不味い。
撮影中に飲みきれなかったペットボトルの水を満杯にした。
それを、今当てているオムツに流し込む。
――冷たい気持ち悪い気持ち悪い。
だが……500ml耐えた。
まだ余裕はありそうだ。
二回目を流し込む。
……溢れた。こんなに分厚いのに1リットル無理なのか。
いや……それよりこんなに膨れ上がるのか。
元の状態の4倍ぐらいだろうか。
これを持って帰るのは憂鬱だ。
絞らないと……絞らな……絞れない。
いや高すぎるだろ保水力。
パッケージを見た。
横モレ防止徹底、何があっても漏れませんと書いてある。
なるほどそうだろうよこのやろう。どう持って帰れば良いんだこれ。
そんな事をやっているうちに帰宅中で通算五回目のオモラシが始まる。
吸水限界のオムツということもあり、流石にあふれる。横からではなく上から。
メーカーもこんな回数のオモラシは想定していないようだこの野郎。
トイレの個室に居たのでそのまま便器の中に流れていく。
明らかに普通の排泄とは違うこの音は音姫で対応出来ない。
他に人は居ないだろうか。居ないはずだ。はずだきっと。
全く小さくならないオムツを外し、丸めて紙袋の一番下に入れる。
オムツのパッケージが浮き上がるがもう手で抱えて何とかするしか無い。
一度使ったオムツを当てる。
冷えていて気持ちが悪い。
これを当てて帰るとなると憂鬱だが、もう覚悟を決めるしか無い。
そして個室を出たところで、六回目が始まった。
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