縫いぐるみ好きな御守り様

なつめオオカミ

第1話 御守り様

昔…と言っても歴史の長い中ではごく最近…戦争の頃だったか…

一つの縫いぐるみを貰ったんだ。

その頃は金になるものは全部売ったりして皆生き残るのに精一杯。とてもじゃ無いけど嗜好品なんて持てなかった。

ぬいぐるみなんて尚更だったのに…疎開先に行く前の女の子から貰ったんだ。

まあ、ぬいぐるみとは言っても今の様な可愛らしいクマの縫いぐるみ見たいな奴じゃなくてボロボロの…ツギハギだらけの…うん、頑張って作ったんだろうなぁ布切れを集めて…鉄の回収もあっただろうに針糸を隠し持って…丁度いいサイズだったよ、抱きしめられるくらいの…大変だったろうにな。

その子は私に言ったんだ、早く戦争が終わってお父ちゃんが帰ってきます様にって…

もちろん私にはそんな力はない…だけど毎日の様に祈ってたんだ。

あの子の家族が無事に戻ってきます様にって、あの子と家族が無事に生きて笑いえる様ににって。

祈りが通じたのかは知らないけどて終戦が伝えられて暫くしてお礼に来てくれたんだ。

また家族で揃う事が出来ました。貴方様のおかげですって。

いやぁ嬉しかったな〜生まれてこの方感謝なんてされなかったからさ。

それからだ、私がこの家を護ろうって決めたのは。

恩返しじゃ無いけど守りたかったんだ綺麗だったあの子とか家庭を、

気付いたのかは知らないけれどあの子の家族も私に供物を捧げる様になった。

それが始まり、必ずあの子がくれた様なぬいぐるみ…子供が自分で作ったやつをくれる様になった。子供に幸が多いことを祈ってだって。私もお礼に祈った

だからかな?此処の家の子供は結構長生きで家族に囲まれて幸せそうに旅立つんだ。

え?どこに?…天の原だよ。あの世ってヤツ?聞いたことぐらいあるでしょ

聞いてくれて有難う嬢ちゃん。コレは貰って行くよ。

君の人生に幸在らんこと…

そう言って我が家の御守り様は不恰好な縫いぐるみを手にして姿を消した。

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縫いぐるみ好きな御守り様 なつめオオカミ @natsumeookami

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