僕は君が好き
僕はペンを持った
第1話
僕は小野 健太、普通の高校1年生だ。
見た目も普通、性格も普通。言わば量産型ってやつなのかもしれない。
悪く言えば冴えないんだ、そう、冴えない。
そんな冴えない僕には好きな人がいる。
クラスのマドンナ 河野 朱里さんだ。
朱里さんは容姿端麗、成績優秀、オマケに性格も良いときた。好きにならないワケがない。クラスのマドンナってついたら大体そんなもんさ。冴えない男子の理想そのものを体現しているんだから。
もちろんその子と接点がある訳でもない。
冴えない男がマドンナと話して良いわけが無い。
そんな自己嫌悪も冴えない所を際立たせていて嫌になる。でもそうだろう?マドンナだぞマドンナ、住む世界が違うといっても過言じゃない。
その時、不意に彼女が振り返り目が合った。
考えている間に無意識に見てしまっていたのだろうか。
僕はすぐ目を逸らした。彼女をずっと見ていたことを知られたら恥ずかしくて死んでしまう。
横目で見ているくらいがちょうどいいのだ。
目が合った嬉しさと気恥しさを隠して、妄想に戻ろうとしたその時、彼女が僕の名前を呼んだのだ。
「小野くん。」
僕はびっくりして金縛りにあったように動くことが出来なかった。もちろん彼女の顔を見ることも。
何かの間違いだろう。そう思うことにして僕は妄想に戻ることにした。
「小野くんってば」
もう一度僕を呼ぶ声。さすがに気のせいでは済まされなかった。
「どうかした?」
僕は声を振り絞って応答した。
「さっきから何言ってるの?独り言?」
何を言っているのか分からなかった
「ほら今も、何言っているのか分からなかったって。なんか、ナレーションみたいだね」
彼女はクスッと笑いながら言った。
僕は馬鹿だ。今までの妄想のことを全て口に出してしまっていたらしい。
「私の事でも考えてたのかな?私は全然構わないけど、ちょっと気をつけた方がいいと思うよ」
そう言って彼女は元の会話に戻って行った。
恥ずかしくて死にそうだ。まさか全て聴かれてしまったとは。
今思えばさっきから色々な所から視線を感じていたかもしれない。もちろん今も感じている。
といっても妄想を口に出すなんてどれだけ口が軽いんだろうか....
「はぁ」
ため息をついて机に突っ伏す。
それにしても、好きな子との会話がこんな会話なんて最悪だ。
それでも僕の名前を呼んでくれた、僕を見て笑ってくれた、それだけで嬉しかった。
僕は変態なのかもしれない
「馬鹿げてる」
そう言って目を閉じ眠りについた。
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