お礼したら…

 艶元さんがくれたクッキーは、とてもおいしかった。

 

 明日お礼言わなきゃ。

 

 そして次の日艶元さんにお礼を言おうと教室に向かうと…

 

 何やら女子会みたいに艶元さんのまわりにたくさんの女子がいてとてもじゃないけど艶元さんを呼べる雰囲気じゃなかった。

 

「キャ〜、運命じゃん‼︎」

「すごー‼︎」

 なんて聞こえてきた。

 

 そして、なぜかポンと艶元さんのクラスの男子に肩を叩かれて

「ドンマイ」

 なんて言われた。

 

 …

 

「え?」

「それがさー、艶元さんどうやら好きな人がいるらしいんだよー。かなりのイケメンらしいぞ」

 

 なんて言われた。

 

 …うん。

 オレに話しかけてくれるけどオレに恋愛感情がないのは知っていた。

 

 

 …

 

 

 てか、お礼言いそびれたな…。

 

 …

 

 

 オレは、家に帰ると髪を全開にあげる。

 

 学校では、なんか…

 イキがってんじゃねーよって思われたくないからおろしている。

 

 あー、髪スッキリ‼︎

 

「あ、お兄ちゃん。おかえり、じゃ行ってきます」

「ん?どこ行くの?今日塾休みだよね?」

「うん、でもお姉ちゃんと勉強するの」

 

 …

 

 艶元さんか。

 

 てかさ、家隣なんだよな⁉︎

 なんかすごっ。

 

 今さらだけどほんとすごっ。

 

「あんまりお姉さんに迷惑かけるんじゃないぞ」

「はーい。」

 

 妹は、元気よく出かけて行った。

 

 後で艶元さんにお礼言わなきゃだな。

 

 クッキーのお礼もまだしてないし…。

 

 学校で言おうと思ったけど…

 また男どもが騒ぎ出したらやなんだよなぁ。

 

 妹帰ってきたらお礼しに行こうかな。

 

 

「ただいまー」

 と元気よく妹が帰ってきたのでお隣の艶元さんにお礼をと。

 

 

 ピンポーン

「はーい」

 と艶元さんが出てきた。

 

「あの、妹がお世話になりまして。よかったらこれどうぞ」

 とジュースを差し出した。

 

「あ、わざわざいいんですよ」

「いえ、受け取ってください」

「じゃあ」

 

 と、おばさんの譲り合いみたいなやりとりをした。

 

「それじゃあ、また学校で」

「えっ?同じ学校なんですか?」

 

 …

 

 艶元さん…

 オレ同じ学校なんだけど…

 

 おはようってあいさつもしたよね?

 

 てか、この前傘に入れてくれたりしたけどやっぱりオレは、一人の人間として認識されていない…のかな。

 

 同じ制服だったからあの時は認識してくれていただけなのかもしれないな。

 

 …うん。

 そうね。

 きっと…

 

 続く。

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