イケメンキャラ絶対華々しく散らすマンの池面幌広先生、更生したってよ
白ごじ
第1話 科学者、へそくりを死守するの巻
彼には人間を描く才能があった。
彼の描き出す主人公、仲間、ヒロイン、ライバルキャラ、名無しのモブに至ってさえ、必ず誰かに愛される魅力があった。辛口で有名なコメンテーターも、彼の漫画をひとたび読めば「作者は人間の生き様を描く世紀の天才だ」と褒め称えた。
誰もが認める、漫画の天才。人間ドラマの申し子。
しかしネット通販の口コミレビューには、星5と星1が拮抗する大合戦。
じつは彼には、唯一だが絶対的と言って良い悪癖があった。
死ぬのだ。
主人公が。
ハードボイルドものになれば、路地裏で空を見上げながら死ぬ。
ハーレムものになれば、多くの女に泣いて惜しまれながら死ぬ。
ファンタジーものになれば黒幕と世界の未来をかけて決戦の末死ぬし、医者ものになれば自分が不治の難病にかかって死ぬ。
ファンレターでどれだけ嘆き節が届こうとも、最終回では華々しく死ぬ。
なんなら、最初は主人公だけだったのに、最近ではライバルも死ぬようになった。
悪癖の悪化に、一人の娘が涙を流した。
「主人公は絶対死ぬから、ライバルを好きになるようにしてきたのに。もう誰を好きになっても絶望するしかないの?」
「見るのを止めれば良いじゃないか」
「やだ。面白いもん。お父さんの発明でどうにかしてよ」
「いやぁ、さすがにそれは」
「そういえばタンスのへそくりのこと、お母さんは知らないんだっけ?」
「娘のためだ! 私が彼の悪癖を止めようじゃないか!」
自分の宣言に頭を抱えた科学者が送ったのは、ファンレターとぬいぐるみが一つ。
「これは私の会社が開発した、一緒に眠ると明晰夢の補助ができるぬいぐるみです。まるで現実のような明晰夢を見ることができます。夢を編集することもできるので、漫画のネタの足しにもなると思います。是非使ってみてください」
伝説と化す「誰も死なない池面シリーズ」が登場するまで、もう間もなく。
イケメンキャラ絶対華々しく散らすマンの池面幌広先生、更生したってよ 白ごじ @shirogoji
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