時間(とき)

不動のねこ

第1話 レモンの味の恋

朝はやく起きてリビングにでた。

 すると、そこにはソファに座ってテレビを見ている母さんがいた。

「おはよう」

 俺がそう声をかけると、振り返って笑顔を見せた。

「あら? 今日はずいぶん早いのね?」

「うん……なんか目が覚めちゃったからさ」

 俺は母そういえば、昨日、お風呂に入ってなかったよね?」

 ジャンル:ホラーサスペンス 母さんの隣りに座りながら聞いてみた。

「あーっ! そうだったわね~」

 ジャンル:恋愛ドラマ 母さんも忘れていたようだ。

 俺は脱衣所に行って洗濯機回すよ!」

「ありがと~」

 洗濯機を回しておいた。

 それから朝食を食べようとテーブルに向かうと

 ジャンル:グルメ

 ジャンル:スポーツ

 ジャンル:ミステリー

 ジャンル:ファンタジー

 ジャンル:エッセイ

 ジャンル:SF

 ジャンル:冒険

 ジャンル:学園あれ? これって……」

 ジャンル別に分かれてる!? なんじゃこりゃ!? 俺はその事に驚いていると、

「どうしたの?」

 母さんがやってきた。

「うわぁ!?」

 突然後ろから現れた母さんにびっくりしてしまった。

「なにやってんの?」

 呆れたような顔をする母さん。

「それよりこのジャンル分けされてるのはなんなんだよ!?」

「ああそれね、昨日の夜にやったのよ」

 母さん曰く、

 ・父さんは仕事があるし夜遅いため、いつもは朝だからジャンル別にした方が見やすいと思って」

「でもこんな事できるのかよ?」

「えぇ、パソコンやスマホで出来るらしいわよ」

 へぇ~そんな事ができるんだ。

「まぁいいじゃん、ご飯食べようぜ」

「それもそうね」

 こうしていただきます!」

 俺達は朝食を食べることにした。

 そして食後、食器を洗っていると

「翔和くん……」

 背後から聞こえてきたか細い声に振り向くと、 そこには、寝癖をつけた美少女が立っていた。

「ど、どうしたの凛?」

 あの……」

「うん」

「歯ブラシを忘れてしまいました」

「あー、わかった持って行くよ」

「お願いします」

 俺は急いで洗面台に向かい歯ブラシを渡す。

 そしてまたキッチンに戻ると、今度は母さんが話しかけてきた。

「ねぇ翔和ちゃん……凛ちゃんとはどこまでいったの?」

 ニヤリとした顔で質問してくる母さん。

 これは絶対に何か企んでいる顔だ……。

 それにしてもどこに行ったかって言われてもなぁ……

「特に何もないけど?」

「嘘ばっかり! 私にはわかるんだからね〜」

「本当に何もないんだけど……」

「ふ〜ん……そうなんだ~」

「何だよ?」

「べっつにぃ~♪」

 意味深な態度をとる母さんに俺は首を傾げることしか出来なかった。

 学校に着いた俺は自分の席に座っていた。

 今日もおはよ~若宮!」

「おはよう藤さん」

「なぁなぁ! 今日の数学の授業ってさ―――」

 藤さんのマシンガントークを聞き流しながら、ぼけ~っと外を見る。

 相変わらず雨が強く降っていた。

 傘を差していても服が濡れてしまうほどお~い聞いてるか?」

「ごめん、ちょっと考え事をしてた……」

「まったく……それでさ、その先生が言った言葉がこれなんだよ!」

「ほぉ~」

「『人生に正解はない』ってさ! なんか深いこと言ってるなと思ったわけ!!」

 確かにそうだな……」

「だろ? でもさ、それってただ問題を先延ばしにしてるだけじゃないのかなって思うんだよなぁ……」

 藤さんの話を聞いていると、チャイムが鳴った。

 それと同時に担任の後藤が教室に入ってくる。

「ホームルーム始めるぞ~」

 クラス委員長が号令をかけ、皆が立ちあがる。

 しかし俺は、座ったまま窓の外を眺めていた。

「おい常盤木!」

「はい!」

 急に呼ばれて驚いた俺は反射的に立ち上がる。

 するとクラスのみんながクスクスと笑ってきた。すまんな、驚かせてしまって。だがお前も悪いんだからな」

「えっ、俺が悪いんですか?」

「当たり前だろうが。全く……早く席につけ」

「はい……」

 俺が渋々座り直すと、また笑い声が聞こえてくる常盤木のやつ、マジで面白いな」

「本当ね」

「もう笑うしかないよねw」

 俺は恥ずかしくなり頬を掻いて苦笑いをするしかなかった。

「じゃあ連絡事項を言うぞ」

 そのあと、いつも通り授業が始まり昼休みになった。

 購買

 人がいないな…… まぁいっか。

 俺は適当にパンを買って外に出ることにした。

「おっ、晴れてるじゃん」

 雨が止んでいたので俺は屋上に向かった。

 階段を上がり扉を開けると、そこには1人の少女がいた。

 彼女はこちらに気こんにちは」

「おう」

「今日もいい天気ですね」

「ああ……」

「どうかしましたか?」

「別に何でもないよ」

「そうですか」

 俺の返事に納得したようで、微笑みながら前を向いてしまう。……」

「……」

 しばらく沈黙が続いた後、凛は弁当箱を取り出し蓋を開けた。

「あの、よかったら一緒に食べませんか?」

「いいのか?」

「はい、もちろんです」

「ありがとう」

 俺はお礼を言い、彼女の隣りで同じように昼食今日も雨だね……」

「ああ、梅雨だから仕方ないな」

「うん……」

「どうしたんだ?」

 いつも元気な彼女が珍しく落ち込んでいるようだ。何かあったのだろうか?

「実はね、今度友達と一緒に旅行に行くことになって楽しみだったんだけど、それがまさか雨のせいで中止になっちゃうなんて……」

「そっか……」

「せっかくの夏休みなのに、ずっと家にいるのは寂しいよ」

「まぁでもさ、延期したらいいんじゃないか?」

「そうだけど……」

「ならいいじゃん。俺だって家でゲームするだけだしさ」

「でも……」

「まぁ、俺のことは気にしないでいいから。それに、予定がなくなったからって俺の家に来なくて大丈夫だぞ?」

「……」

「えっ? なんで無言になるの?」

「別に……なんでもありません」

 絶対嘘だろ!?」

「あ、あの翔和くん……これはどういう状況なんでしょうか?」

「さぁ?」

 凛が困惑しているのも無理はない。

 何故なら、現在進行形で俺は凛の膝枕をしているからだ。

 凛曰く、最近寝不足なので寝ふふふっ……」

「ど、どうしたんだ?」

「いえ、ちょっと思い出し笑いをしてしまいました……」

「そ、そうなんだ」

「はい。それにしても……」

「それにしても?」

「こうしてると昔を思い出しますね」

 そう言って優しく頭を撫……」

「んっ……んんっ」

 俺は寝返りを打ち、凛のお腹に顔を埋める。

 そしてそのまま顔を左右に動かした。

「んっ……くすぐったいですよ」

「すまん……なんか心地よくてさ」

「それは良かったです……けど……」

「けど?」

「もう少し……ゆっくりしてもらっても構いませ……」

「……」

「スー……スー……」

「……あれ?」

「……」

「もしかしなくても、寝ちゃってる?」………………

「ふふっ、可愛い寝顔だなぁ~」…………

「よし、起こさないようにしよう!」

 私は、そっと彼の手を握る。

 その温もりを感じていると心が落ち着く。

 彼は私にとって、とても大切な存在なのだと改めて思う。

 こうやって手を繋いでいるだけで安心できる。ねぇ、翔和くん」

「なんだよ?」

「呼んでみただけ~♪」

「なんだそりゃ……」

「えへへ~」

「はいはい。それで何がしたいんだ?」

「特に何も~」

「なんじゃそら」

 呆ただこうしていたいなって思ったの!」

「そうか。じゃあ好きなだけしとけ」

「うん!」

「……」

「えっ、それだけ?」

「他に何かして欲しいのか?」

「えーと……ぎゅってしてほしいかな?」

「はいよ」

 えっ……本当にしてくれるんですか?」

「別にこれぐらい構わないぞ」

「嬉しいです! では早速……」

「ちょい待った」

「はい?」

「そんなに勢いよく飛び込んでくると危ないぞ?」

「あっ! ごめんなさい!!」

 わかればよろしい」

「あの……翔和くん?」

「なに?」

「どうして私の胸を揉んでいるのですか?」

「そこに胸があるからだよ」

「意味がわかりませんよ!?」

「じゃあ聞くが、目の前に大きな山があったら触らずにはいられないだろうが!! この気持ちわかるか!?」

「全然、分かりませんよぉ〜」

「チッ……つまらない女だぜ」

「ひどっ!?」

「はぁ……癒される……」

「えっ、急にどうしたのですか?」

 凛の太ももは柔らかくて最高だね……」

「えっ!? あ、ありがとうございます///」

「それにいい匂いだし……」

「も、もうやめてください〜!!!!」

「はい、やめるわ。もう十分堪能させてもらったし」

 うぅ……」

「まぁまぁ、拗ねるなって」

「べ、別に拗ねていませんよ?」

「そうかい。まぁとりあえず俺から言いたいことは一つだけだな」

「な、なんでしょう?」

「ありがとな」

「いえ、どういたしましてです」

「いらっしゃいませ~」

 今日はバイトの日だ。

 そして今はお客さんがいないのでレジで暇つぶしをしている。

 まぁ、仕事中だから遊んだりはしないけど。

「常盤木君、お疲れ様。休憩入っていいよ」

「はい。それじゃあお先に失礼します」

「はい、行ってらっしゃい」

 店長に見送れながら俺はバックヤードに入り、制服から私服へと着替える。

 それから店内に戻り、いつも通りアイスコーヒーを作りお待たせしました」

「ありがとう」

 カウンターで座っている常連さんの席に置いた。

「いつものね」

「はい」

 いつものとは、ホットのブラックコーヒーのこと。

 俺も最初は驚いたが、今ではすっかり慣れてしまった。

「それにしても暑いな~。まだ6月なのにこんな気温だと7月にはもっと暑くなるんじゃないか?」

「そうですね。夏バテとか気をつけないといけませんし、体調管理にも注意しないとダメですよ」「まぁ、そうだね。君は大丈夫そうだけど」

「そうでもないですよ。結構、熱っぽい時ありますし」

「そうなのか? あまりそう見えないけど」

「見た目に出ないタイプなんじゃないでしょうか? でも、最近は少し体が怠くて……」

「それは大変じゃないか。風邪でも引いたの?」

「いえ、そういうわけではないと思いますけど……」

「そっか。ならいいんだけど」

「心配してくれてありがとうございます」

「気にすることはないさ」

「それでも感謝してますよ」

「律儀だねぇ……」

「そうですか?」

「ああ、そんなところも君の長所だよね」

「なんか照れるな……。それより、何か用事でもあったんですか?」

「んっ? どうしてだい?」

「だって、いつもここで飲んでるのに、わざわざ声をかけてきたから何かあったのかと」

「いや、大したことではないんだよ。ただ、君が元気がないように見えたからさ。それにここ最近、シフトに入っていなかっただろう?」

「……確かに。言われてみると休んでましたね」

「だろう?」

「すみません……迷惑かけてしまって……」

「謝ることなんてないよ。ただ……その……」

「その?」

「僕に出来ることがあったら何でも言って欲しいんだ。その……僕は君のことが好きだから……」

「………………えっ?」

「あっ、いや、今のは違っ……!」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「えっと……その……」

「あの……」

「な、なんでもない! 忘れてくれ!」

「あっ! ちょっと!」

 呼び止めるも、彼は逃げるように店を後にしてしまった。

 残されたのは俺と静寂だけ。

 そして、店に入ってきた新たな客の声が聞こえてくる。

「いらっしゃいませー」

 俺ははぁ……」

 ため息をつき、頭を抱えた。

 ――――――

【後書き】

 こんにちは、久賀琥珀です。

 今回は短めのお話となりました。

 次回は、凛目線の話になります。

 

 

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