2. フラグをへし折るために

2. フラグをへし折るために




 オレは女神からもう一度人生をやり直すセカンドチャンスをもらった。もちろん魔王を倒すためではない。オレが幸せな人生を歩むためだ。


 そもそもこの世界では『勇者の試練』を乗り越えれば誰でも勇者になれる。勇者の試練とは、この世界の地水火風光闇の6属性の精霊に加護をもらうこと。まぁ……その試練が大変なんだが。今思えばそれもあの時うんざりしていた。とりあえず今回の人生では、魔王は他の人に倒してもらおう。それがいい。そして今回は『男』ではなく『女』として転生する。


 目の前に目映い光が見えてくる……もうすぐオレは新たな人生を女として始めることになる。今度こそハッピーライフを掴みとるぞ!



 ◇◇◇



 光が収まるととても温かな腕のぬくもりを感じる。そう。私は今産まれ、母に抱かれている。あぁ~なんていい匂いなんだ。


「おぎゃー!おぎゃー!」


 どうやら無事女の子に生まれてきたようね。しかし赤ん坊の声ってこんなに可愛いのね。自分の声だけど……。


「奥様!元気なお嬢様です」


「ありがとうございます。私達のところに来てくれて……」


「旦那様にも早く知らせないと」


 ん?ちょっと待って。転生したけど、この人は私の母じゃなかったわね。もしかしたら男じゃなくて女を選んだから生まれる場所も親も変わったのかしら。それならなおさら違う人生が歩めるわね!そんな時私の父親らしき人物が部屋に入ってくる。


「リアナ!よく頑張った!」


「あなた、娘が生まれましたよ。元気で可愛らしい子ですよ」


「おおっ!これが我が娘か。名前はどうしようか?」


 この人が私の新たな両親か。とても優しそう。とりあえず良かったわ。


「うふふ。まだ決めていないのよ。ねぇアナタ。どんな名前がいいかしら?」


「そうだなぁ。愛娘の名付けだから悩むなぁ」


 両親が名前について悩んでいるみたいだ。さて、どうしたものか。


「そうだわ!『イデア』という名前はどうかしら?この世界を救ったとされる女神の名前よ。それに私たちの娘にはぴったりだと思うの」


「ああ良い名前じゃないか。これからよろしくな。イデア」


 こうして私は新しい人生のスタートを切ることができた。とにかく今は2回目の赤ちゃんプレイを楽しみましょうか。


 そして時は流れ、私が生まれてから早くも3年が経過している。父親は騎士団の仕事のため家を空けることが多くなった。そのため母親が家事全般をこなしていた。どうやら騎士の家系らしい。


 母親の名前はリアナ=ライオット。年齢は22歳。金髪ロングヘアーでスタイルもよく美人である。ちなみに私は母親譲りの金髪碧眼だ。将来は間違いなく美女になるだろうとか思ってみたりもする。母親は料理が上手く、いつも美味しいご飯を食べさせてくれた。また優しく接してくれたおかげで寂しくはなかった。


 父親の名前はジーク=ライオット。28歳のイケメンで高身長の好青年である。職業は騎士をしており、国では結構偉い立場にいるようだ。この前、街に出掛けたときに騎士姿の父親を見たことがある。そのときはとてもカッコよかった。


 なんの不満もなく幸せに生活をし続けているけど、やはり不安要素があったのか。転生したとはいえ、身近に『剣』があるのか……。前世では剣に興味をもってしまい、剣術を教えてもらうことになる。何とかそのフラグをへし折らないと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る