幸せな誕生日のプレゼントは指輪とイビツなぬいぐるみでした。【KAC20232参加作品】
うり北 うりこ
優しい彼と誕生日
3月5日。今日は私の18歳の誕生日。2つ年上の彼とのデートに浮かれながら、少しでも彼好みになろうとあまり趣味ではない可愛らしい小花柄のワンピースに袖を通す。
「ハルカ、誕生日おめでとう。今日から大人の仲間入りだね」
「ありがとう、ユキくん。大人って言ってもお酒も飲めないし、税金を払わなくちゃいけなくなっただけな気がするけどね」
「それだけじゃないよ。いつでもハルカと結婚できるようになった」
あまい、あまーい、ユキくんからの言葉。ユキくんとの結婚を想像して頬が火照れば可愛いって言ってくれるものだから、幸せの大洪水で溺れてしまいそう。ユキくんは本当に私を喜ばせる天才だ。
「ハルカ、手を出して」
きたきたきたきたーーー!! これは100%指輪だろう。間違いない。浮かれた私が手を伸ばせば、やっぱり指輪をはめてくれた。
可愛すぎるデザインは好みではないけど、左手の薬指の指輪が嬉しくて涙が溢れた。
「嬉しい、ありがとう……」
「あと、これ」
そう言って渡してくれたのは、手のひらサイズのぬいぐるみ。確かに大好きなキャラクターだけど、それはイビツで手作り感満載だ。
「ありがとう。えっと……」
「……ハルカが欲しがってたやつ。買えなくて作ったんだけど、変だよな。ごめん、やっぱりなしで」
その言葉にシールを貯めて応募していた非売品のぬいぐるみを思い出す。確かに服装が似ている気がする。
「すごく嬉しい。大切にするね」
ユキくんの気持ちが嬉しくて、優しくぬいぐるみを撫でれば縫い目の間から髪の毛が1本出ているのを見つけた。きっと、作っている時に入ってしまったのだろう。髪をサッと捨てて、なくさないようにぬいぐるみは大事に鞄へとしまった。
この時の私は知らなかったのだ。何本も何本もぬいぐるみの縫い目の間から髪の毛が出てくることを。綿の代わりにユキくんの髪の毛が詰められているという事実を──。
幸せな誕生日のプレゼントは指輪とイビツなぬいぐるみでした。【KAC20232参加作品】 うり北 うりこ @u-Riko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます