0-2 転生先:フォレストオオカミ・ゾンビ
謎の異臭が鼻をつんざく。
これは...獣の匂い?
「「ネコニス様、近くに来るとこんなに臭かったのか...」」
俺はまた、意識を朦朧とさせていた
重いまぶたを開くと、徐々に光が入ってくる。
獣の匂いの他に、木や草のような香りもして、ここが森なんじゃないかと思えてくる。
もしかして、事故現場に戻ったのだろうか?
目の焦点があってきた。水色っぽいものに白っぽいもの、そして黒っぽいものが見える。
体の感覚が少しずつはっきりしていく。
そんな時、いきなり恐ろしいほど肺が苦しくなって、俺はおえええええええっと何かを吐き出した。
「ゲフゥッ!」
勢いよく真上に水が吹き飛んだ。
その拍子に俺の意識もはっきりとして、仰向けになっていた体を噴水のように勢いよく起き上がらせた。
「おおうっ!?お前生きてたのか!?いやー良かったな!」
?お、おう、ありがとうな...
声の方に振り向くと、暗いグレーの毛をしたオオカミが座っていた。
オオカミ?なんで?
そんなことを考える暇もなく目の前にいきなり、世界観にそぐわない光のエフェクトが走った。
景色よりも近く、視界そのものに沿うような形で、無数のアイコンや文字が現れる。
なんだこれは...。
ふむふむ、どうやら目の前のオオカミは<フォレストオオカミ>という動物らしい。
分類は「魔物カテゴリ・狼種」、分布の欄には「放浪性」と書かれている...
あれぇ...これVRゲーム?
さっきまでの神さまとの件はゲームのチュートリアルだったのか?
ショックだ。ネコニス様が現実に存在しないなんて、俺はもう生きていけない。
うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!いやああああああああ!!!!!!はあああああああああああん!!!!!ハルモニアああああああああああ!!!この!ちくしょう!こんなゲームやめてやる!やめて...やめ...
どうしたらゲームをやめられるのか、俺にはわからなかった。
「おーい、何無言で突っ立ってるんだ?」
え、ああ。ごめん。
「だから、おい...やっぱり死んでるのか?」
聞こえていないのか...?さっきまでの俺のやかましい叫びが、全くもって。
確かに相手がオオカミで俺が人間なら、言葉が伝わらなくても仕方ないのかもしれない...
でも、俺は相手(オオカミ)の言葉を理解していた。
これは一体...
少しだけ妙な予感がして、それをかき消したくて、
俺は全力の大声で「「おはようございまああああああああああす!!!!!!!!!!!!!!」」と叫んだ。
...。
「そんな口パクパクさせてもわかんね...ああ!腹が減ったんだな!」
やはり目の前のオオカミには聞こえなかったようだ。
無言で激しく口をパクパクさせるおまぬけな姿を晒してしまった。
俺は急いで、そばにある池の水面を見た。
俺の身体は最初に想像していた〈人間〉の姿ではなく、四足を地につけ歩くあの〈オオカミ〉の姿をしていた。
さっき俺に話しかけてきたフォレストオオカミと少し似ているが...雰囲気が大きく異なっていた。
目がドロドロで、牙も黄ばんでいる。毛もボサボサで、とても醜い姿をしていた。
少し眺めていると、先ほどと同じように電子的な説明文が表示された。
《フォレストオオカミ・
書かれていた名前を呟くと、視界の右上に蛍光灯のような緑色のバーが現れた。
バーはすぐさまドーナツのような形に変わり、その穴の真ん中には〈LifeSpan 99%〉という文字が浮かび上がった。
その円の左には白い文字でまた《フォレストオオカミ・ゾンビ》という名前が出現した。
やはりこれはゲーム...いや、どうだろう...こんな本物臭い感触のゲームあるのか...?
そんなことを考えながら、ボロボロの前足の先っちょで、池の水面を揺蕩わせる。
程よい日光の暖かさに包まれて、冷たい水の感触が余計に心地いい。
しかしまた池に溺れるんじゃないかと思われたのか、おせっかいなオオカミに陸地に引っ張り戻された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます