冒険を始めるにはもう遅い異世界 パローナツ~冒険家を夢見る記憶喪失の魔女たちは、今はつまらない現代異世界を夢と冒険で再点火する。~

紅茶ごくごく星人

序章 転生者の回生

プロローグ 転生者と謎のマミー

獣の唸り声のような目覚まし音で、俺は目を覚ました。

最悪の目覚めだった。

気がつくと、目の前は真っ赤に染まっていた。


吐き気に襲われながら、ぼやけた視界で目を凝らす。尖ったシルエットの樹がいくつも見えた。

その中にひとつ、小さな人影を見つけた。


「「子供...だろうか...?」」


おそらく。これは事故だ。車と、人の。

轢かれるはずだったのは子供で、でも実際に轢かれたのは俺。


「「...でも、」」


もし俺が。こんな俺が、最期に未来あるあの子の身代わりとなって死ねたなら...それほど気分の悪いものではないはずだ。


「「...来世はきっと全てが上手く行って、こんな辛い目には合わなくて済む人生が欲しい。」」


目を閉じると、不思議と心地よかった。

ねちょねちょとした感触の血と芝生のベットが、まるで毛皮に包まれているかのようにふかふかに思えた。


俺は眠った。次目覚めたらきっと...こんな世界とは、さよならだ。



><><><><><



苦しい...。気持ちが悪い...。

俺は横向きに寝転がっていた


昨日のことは1ミリたりとも覚えていない。

意識が朦朧としていて、俺がどこの誰なのかさえもわからない。


でもこれだけ気持ちが悪いのならば、昨日はとても楽しいパーティだったはずだ。

そして俺は調子に乗って酒を飲みすぎた...きっとそうに違いない。


もやもやとしていた視界が少しずつ晴れてきた。


目の前に、どこか見ていて安心するような丸い木のテーブルの脚が見える。

さらにその先には、正座に折り畳まれた、綺麗な脚が見える...。


...なんだこの脚は。

なんて綺麗なんだ。俺の奥さんだろうか、そうだといいな...。


そんなことを思っているうちに、マイスイートレッグは視界から消えていた


気がつくと「とん、とん、とん」と、心地よい足音が俺に近づいてくる

トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン...


そしてその足音の子守唄は俺のすぐ後ろまでやって来て...消えてしまった

あたりは静寂に包まれた。


.......................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................い.....................。


「?」

真っ暗で無音だった空間に、微かな音が混じった


「いい加減......」


突然聞こえてきた懐かしい女性の声に戸惑い、俺はつい首を傾げた。

...否、傾げようとした。


「起きなさーいっ!!!!」

俺の首は傾げ切れる前に、母なる足によってドンッ!と音を立てて勢いよく蹴り飛ばされ、ねじきれそうになった。


とても痛い。涙が出そうだ。

さっきまで朦朧としていた意識が、痛みによって覚まされた。


しかし俺の意識を覚ました痛みのほとんどが、首を蹴られた痛みではなかった


「騙された。彼女(ハニー)じゃなくて母親(マミー)だったのか。」


俺の知らないオカンは大きな物干し竿のようなものを地面にトンと叩きつけた。

そうすると、蹴っ飛ばされていたはずの俺の身体は謎のパワーで最初の机のそばに戻されていた。


俺はすぐに起き上がり、机の向かい側にいる謎のマミーと対峙した。

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