スーパー☆オノマトペ無双〜追放された宮廷画家は、転生特典の『口からオノマトペが出るチートスキル』で無双する。お宅のお姫様も連れて行きます。戻ってきてと言われてももう遅いんだからねっ!〜
紅茶ごくごく星人
1.漫画家と姫君とオノマトペ編
1.お城とメラメラ
「ちゅんちゅんちゅんちゅんちゅん!」
さえずり。
ベッド。私は目が覚める。
「小鳥可愛過ぎ!
今日はいい日だな〜!まったく、漫画描き日和だぜ〜」
薄いカーテン越しに差し込む朝の日差し。
私は大きく背伸びをして-
コンコンコンコンコン!!
木製の扉を慌ただしく叩く音。
「はーい?
どうしたんですか?そんな何回もノックして」
「王様がお呼びでございます、至急謁見の間へ」
清楚なメイドさんの声。
「わかりました〜」
至急行かなくちゃならないのか...
本当はメイドさんと至急夜の始球式がしたいんだけどね☆
〜謁見の間にて〜
「な、なんじゃこのひどい絵は〜!?!?!?!?!?!?」
「わ、私にも全く...確かにあのものは転生者だったはず...何度も確認したのですが-」
「王様!いかがされましたでしょうか」
私が言うと、その場にいる全員がこちらを向いた。
数秒の沈黙。
どうやらみんなスーパーエレガントパーフェクト美女ウーマン少女である、この私の美貌に釘付けらしい。
「よくも貴様...騙したな!!!」
「は...?」
「は...?ではないッムシオデ・カズサ!!
貴様は画家系のチートスキルを持つ異世界転生者!そうであったな!?」
「はい、おっしゃる通り。
私こそ、言わずと知れた—」
くるりと回転し
「—ムシオデ・カズサでございます。」
自信満々の私の声色に、王様は一瞬たじろいた。
きっと私の名前の、響きの素晴らしさに感動したのだろう。
「な、なのになんだこの絵は!?全て白黒ではないか!!!」
「おお、こうも何枚も並べられると壮観ですね!我ながら誇らしいです!」
「ちがあああああああう!!!」
「は...?」
「は...?ではないッ!!!
貴様、白黒の絵しかかけぬのかあああああああ!?!?」
「いえ、描くことは可能ではあります」
「ではなぜ描かぬというのだ!?!?!?!?」
「私はまだ、先輩宮廷画家の皆様には遠く及ばない身...実際読者である王様からの評価も芳しくありません。」
「そりゃあ、こんな白黒の絵ばかり描いていてはな。」
「ですから、巻頭カラーを一向にもらえないのです。」
「は...?」
「巻頭カラーです。巻頭カラーをいただければ、彩豊かな扉絵を描いて差し上げますッ!」
「巻頭カラー...巻頭カラーとは、なんだ...?」
「.........は???巻頭カラーを......知らない......?」
「そのかわいそうなものを見るような目つきをやめろ!こっちがそんな顔したいわ!
その妙な反応、貴様がどんなふざけた用語が飛び交う世界から来たかは知らぬが......
ふん、もうよいわ!!!
貴様はただいまを持ってこの城から追放する!」
「え...?」
私はその時、やっと気がついた。
王様はとても怒っているようだった。
なんで...?
むしろ褒められるものだと...褒めちぎりに褒めちぎられ、褒めちぎられすぎてしまう......そんな光景を想像していた。
「私は......今までこんなにも尽くしてきたのに...
ひどい...ひどすぎる...」
「早く散れ!貴様の顔など二度と見たくもないわ!」
...わかった。そっちがその気なら私だってそうさせてもらう。
このチートスキルを使って...
「たった3週だけだったけど...今まで応援ありがとうございました。
ムシオデ・カズサの次回作に、ご期待ください。」
「誰が期待するか!!!!!」
私は顔を梅干しみたいにして怒鳴る王様に背を向け、謁見の間の豪華な絨毯を踏んでいく。
怨念深くずんずんと踏みながら進み、扉を押して出た。
「くすくす、あの人、クビになったんですって」
「うわー、追放が許されるのは小学生までだよねーくふふふふ」
このお城の中では有名な生意気双子メイド、メイスとガーキの声が聞こえてくる。
くっ...好き勝手言いやがって...涙が溢れてくるじゃねえか...
だが、それでいい。
それもこの城を出れば終わる。憎しみが私を強くするのだ。
そして...城を出た。
私は城に背を向けたまま歩きながら—
—呟いた。
「スキル発動準備」
<チートスキル:オノマトペ具現化発動>
<発動シークエンスを開始します。>
この洋風なファンタジー的世界観に似合わない、外的な存在に無理やり後付けされたであろう機械的システムメッセージが、視界に表示される。
<デンデン!デンデン!デンデン!デンデン!>
高揚的で不穏な効果音が、繰り返し鳴り響く。
<システムオールクリア。チートスキル:オノマトペ具現化発動可能です。>
「すうううううううううううううううう」
瞬間、私は思い切り息を吸う。吸って、吸って、吸って、吸って。
そして振り返り、憎き城に向かって口から言葉を発射するっ!!!
「メラメラメラメラメラメラメラメラメラメラァ!!!!!!!!!」
思いっきり口から出した言の葉が、燃え盛る文字型の熱線となり、ボウっと轟音を立てて射出される。
城に向かって。
ドかああああああああああン!!!!!
...という音が響いた。純白の城壁に激突した。
私の口から吹き出した、燃え盛る「メ」そして「ラ」の形をした文字が城を貫き、火柱をあげる。
城にはもくもくと煙が立ちのぼり、もう完全に火事だ。
「ざまあみやがれえーっ!!
はーっはっはっはあーーーっ!!!もっと燃えるがいいや!!!!!!」
.........
はあ、すっきりした!!!!!!!!
よーし次の就職先でも探すか〜...
.........
...待てよ?
「そうだ!城には、お姫様がいるんだった!!」
私は指を「」の形にして、その指窓から前方の景色を覗く。
お城の一部である、塔の中。お姫様がそこに幽閉されている。
邪智暴虐の王は、自らの娘を狭い塔の中に押し込めていたのだ。
なんて残酷なのだろう。
「燃え盛る城を背に、涙ながらに決意を固め、今旅立たんとする孤独な若者がここにひとり......
そんな主人公の門出には、故郷の仇への復讐に燃える逃避行の同行者...お姫様が必要だよねっ!
......うん。そういうシチュエーションで行こうか」
私はこほんと咳払いをする。そして......
「ああっ!?あれは...火事!?!?!?
まずい!!!今すぐ助けに行かないと!!!!!!!」
私は白々しく......いいや、勇しく大きな声を上げながら、燃え盛る城へと勇しく駆けた。
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