異世界に誤召喚されて私は勇者にはなれなかったので、推しと一緒に気ままに生活してみる!
リナ
1.
1.
「私の名前は、ラズリ・リークこの度は急な召喚にも関わらず快く引き受けてくれた事に感謝する」
国王陛下から感謝の言葉を頂いて居る最中なのですが、私、何故か目の前に居る男性の視線は私の隣に立っている一人の少女に向けられているのです。
その少女は、腰まで伸びた綺麗な黒髪に透き通る様な白い肌、それに、吸い込まれそうな黒い瞳を持った美少女でした。
私が、少女を見ていると不意に目が合いました。
すると、彼女はニコッと微笑み掛けて来たので私も思わず微笑んでしまいました。
しかし、何故でしょうか?
彼女の笑顔を見ると心が安らぐような気がしますね。
そんな事を考えていると、私の視線に気付いたのか彼女が話しかけて来ました。
「あのぉ~どうかしましたか?」
「いえ、何でもありませんわ」
「そうですか……」
そう言うと彼女少し残念そうな顔をしていました。
その表情を見て、何故だか胸が苦しくなりました。
どうしてなのでしょうか?
私には分かりません……ですが、これだけは言えます。
この子とは仲良くなりたいですね。
それから暫くして、私達は謁見の間から移動し今は客室に案内されていました。
そこで、これからの事を話し合う為だそうです。
それにしても、まさか本当に異世界に来てしまうなんて思いもしませんでした。
しかも、私達を呼んだ理由が魔王を倒して欲しいだなんて……正直言って迷惑以外の何物でもないですよね。
まぁ、でも折角こうして呼ばれたのですから、やれるだけやってみようと思いますけどね。
さて、そろそろ話し合いが始まる頃だと思うので行きましょうかね。
そう思い立ち上がると、隣の少女が声を掛けてきました。
どうやら彼女も一緒に行くようです。
二人で部屋を出て案内役のメイドさんについて行くと、大きな扉の前で止まりました。
恐らくここが会議室なのでしょう。
中に入ると既に何人か集まっており、その中には先程会った少年の姿がありました。
彼は、私と視線が合うなりこちらに近付いて来て話し掛けてきました。
因みに、彼の名前はカイト君と言うらしいです。
自己紹介を済ませると、早速本題に入りました。
まず最初に、この世界について説明を受けました。
この世界には、大きく分けて三つの種族が存在しています。
一つ目は人族、二つ目は魔族、三つ目は獣人族です。
それぞれの特徴としては、人族は平均的な能力を持ち、魔法適性が低いのが特徴です。
逆に、魔族は高い魔力を有し、身体能力も高いと言われています。
次に、獣族は高い身体能力を持つ反面、魔法を苦手としている者が多いです。
最後に、獣人族は高い戦闘能力を有しており、特に近接戦闘を得意とする者が殆どなのだとか。
そんな説明を聞いている内に、何やら外が騒がしくなって来ました。
何事かと思い窓の外を見てみると、そこには巨大なドラゴンの姿が見えました。
それを見た瞬間、私は咄嗟に駆け出していた。
何故なら、そのドラゴンには見覚えがあったからだ。
私が好きなゲームに登場するモンスターで、その中でも一番好きだったのだ。
だからこそ、その姿を目にした瞬間居ても立っても居られなくなってしまった。
そして、気付いた時には部屋を飛び出し走り出していたのだった。
後ろから呼び止める声が聞こえた気がしたけど、そんな事はどうでも良かった。
ただ、早く会いたい一心だった。
だからだろう、目の前に現れた人影に気付かずぶつかってしまった。
「キャッ!」
ぶつかった衝撃で倒れそうになった所を、目の前の人物が支えてくれたお陰で何とか転ばずに済みました。
「大丈夫ですか?」
そう言って心配そうに覗き込んで来たのは、とても可愛らしい女の子でした。
2.
年齢は私と同じくらいでしょうか?
髪は長く綺麗な黒髪をしていて、瞳は吸い込まれそうな程澄んだ黒曜石の様な瞳をしていました。
そんな彼女に見惚れていると、不意に声を掛けられたので慌てて返事を返しました。
「はい! 大丈夫です」
すると彼女は安心した様に微笑むと、そのまま立ち去って行きました。
その後ろ姿を眺めていると、ふとある事に気付きました。
(そう言えばあの子の名前聞いて無かったですね)
そんな事を考えながら再び歩き出そうとした時、突然背後から声が聞こえて来ました。
振り返ると先程の女の子が走って来る姿が見えたのですが、何故かその表情は必死の形相をしており、今にも泣き出してしまいそうでした。
何かあったのでしょうか?
心配になり声を掛けようとしたその時、突如地面が大きく揺れ始めました。
突然の事態に驚きながらも周囲を見渡すと、先程まで居た人達が全員地面に倒れているではありませんか!?
一体、どう言う事なのかと考えていると、今度は頭上から何かが落ちて来るような音が聞こえて来ました。
恐る恐る上を見上げると、何とそこには全長20メートル程の巨大なドラゴンがこちらを見下ろしているでは無いですか!
それを見た途端、恐怖のあまり腰が抜けてしまいました。
「グォォォォ!」
雄叫びを上げながらゆっくりと降りて来たドラゴンを見て、思わず死を覚悟しました。
もう駄目だと思った次の瞬間、突如として私の前に一人の女の子が現れました。
その姿はまるで物語に出てくる勇者様の様に凛々しく、それでいて美しい姿でした。
そんな姿に見とれる間も無く、彼女は軽々しくドラゴンの攻撃を躱すと、腰に差していた剣を抜き放ち目にも止まらぬ速さで斬りつけていました。
その光景を目の当たりにした私は思わず言葉を失ってしまいました。
だってそうでしょう?
あんな小さな子が自分より何倍も大きな化け物を相手に圧倒しているのですから。
しかし、そんな時間も束の間、遂に決着の時が訪れたのです。
彼女の放った一撃により、ドラゴンの体は真っ二つに切り裂かれてしまったのですから。
それを見ていた私はと言うと、あまりの衝撃的な光景に開いた口が塞がりませんでした。
それから暫くして我に返った後、彼女にお礼を言おうと近付いた所で異変が起きました。
兵士達が私を取り囲んだのです。
一瞬何が起こったのか分からず混乱していると、兵士の一人が話しかけてきました。
「国王陛下がお呼びです」
そう言われた瞬間、私の脳裏に嫌な予感が走った。
それはつまり、この先に待ち受けているのは尋問か処刑のどちらかだと言う事だ。
しかし、ここで断れば怪しまれてしまうかもしれないので大人しく従う事にした。
それから暫くして謁見の間に通されたのだが、そこで待っていたのは国王陛下以外誰もいなかった。
「まずは君の名前を聞こう」
そう問い掛けて来た人物は玉座に座りこちらを見下ろしていた。
その人物こそこの国の王であり、私を呼び出した張本人でもあるラズリ・リーク様だ。
「如月百合です……」
緊張しながらも答えると、彼は満足そうに頷いた後にこう告げた。
「では、早速だが本題に入ろうか……」
それから聞かされた話は信じられないものだった。
「貴殿のおかげで、勇者瑠衣は覚醒された、で、貴殿なのだが、申し訳ないが、誤召喚だったらしいのだ」
「なら、私は帰れるのですか」
「それは一生無理じゃ」
「そ、そんなぁ」
分かって居た事ではあるのです。
そう、私はここに来た時点で、二度と、日本に帰る事なんてできないのだろうと思って居ました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます