俺をNTR系不良先輩と勘違いして、美少女があからさまに操を捧げようとして困る ~しかも一度気を許してくれたらやたらデレデレして可愛い~
神達万丞(かんだちばんしょう)
第一幕「私の体を許しても心までは許さないんだからね」
第1話神無月 雪之丞は巻き込まれ体質
夏は少女を大胆にすると先人達も語っているが、これはちょっとやり過ぎではないだろうか。
ハラリとジャージの上着が重力に従い床へ落下した。
引き続きゴクンと唾を飲み込む俺こと神無月雪之丞(かんなづきゆきのじょう)の眼前でユニホームへ手に掛けるスポーツ少女。
バスケで鍛えた美しい腹筋が見え隠れした。
俺の遅い春も素通りして夏までテイクオフかもしれん。
そしてこういうのだ、
「私の体を許しても心までは許さないんだからね」
白川桜華学園女子バスケ部のエース、竜石堂漆葉(りゅうせきどう うるは)は意思がつよそうな瞳から涙を浮かべて最後の抵抗をした。
悔しげに恥じらいながら頬は赤く染まる。
むむむ…………どうしてこうなった?
――数時間前
何気ない日常と共にある夕焼け。
紅く染まる白い雲とのコントラストが琴線に触れた。
人生で一度しか遭遇しない景観とはこんな瞬間なのかもしれない。
下校時間が過ぎた赤く染まる教室。
一人で贅沢に落ち掛かる陽を浴びる。
髪も制服も太陽かざした手だって真っ赤だ。
室内は騒々しい昼間と違って静寂が支配していた。
されど部活は続いているので遠くから、運動部の掛け声とか吹奏楽部は音色を奏でているがそれはそれ。
待ちきれずスマホ片手に窓を開けると気持ちいい空気が入り込む。
随時姿を変動する茜雲へ絶好の瞬間を見逃さずどんどん撮った。
暮れに沈む街並み、グランドに映る長く伸びた影、夕方セールでおばさん達の戦場になっている激安スーパーも追う。
どうしてそんな衝動に走るのか?
別に趣味という訳でもない。
性癖という業を全うするつもりでもない。
ただ純粋に遠く離れた留学中の妹へ近況を送るためだ。
故郷が側にあればホームシックにはならないものさ。
これが無力で駄目な兄貴が最大限家族へと捧げるご奉仕。
いい画像が送れたと自負していたが、『兄様へたくそです』クレームだった。
実はテレビ電話モードで絶賛生放送中。
されど俺が映り込むと怒られるので扱いに注意が必要だ。
「我が妹君よ、手作り独特の温もりがあるとは思わないのかね。真心とか優しいとか」
『そんなのいらないもん。リアルな報道こそ正義です』
「生きていく過程で忖度も大事なんだぞ」
『ゆいあきら的にそんなくだらない人生は送りたくはないです』
妹、神無月結晶(かんなづき ゆいあきら)の成長は嬉しいが童心とロマンは忘れてほしくはないな。
「何事も妥協と諦めは世の常なのだ」
『ごたくはいいのでもっと兄様の学校を撮してください。独り暮らしに難ありと母様に報告しますよ』
「了解しましたお姫様」
怒らしたくはないので妹様の命令に従った。
残念ながら親達の信頼は妹より遥か下流にあるので何気ないエピソードでも一大事である。
スマホは教室内を蝶のように舞う。
蜂のように刺さないが。
その際、俺の席は映さないように細心の注意を払う。
最後方、窓際、隣り合う席が隔離されて絶海の孤島になっているのでショックがでかいのだ。
別段いじめにあっているわけではないのだが、学園の異物として拒絶されているのは兄として威厳に関わる。
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