序章

第0話 開戦



ある夕闇、突如としていつもの街中に原因不明の爆発音が鳴り響く。

辺りには嗅いだことのない火薬かやくの匂いが漂い、いつも見慣れているはずの景色の全てが恐怖の対象へとすり替わる。

そんな非現実的な世界に彷徨いこんだ二人の少年がいた。

見たことも聞いたこともないその非現実は、二人の少年に容赦なく襲いかかる。


「あれが見えないのか!?」

一人の少年がそう言ってある場所を指さす。

そこには真っ黒い壁のような存在が暗闇の中で蠢いていた。


よく目を凝らして見えた”それ“はなんと戦争時代の遺物『戦車せんしゃ』であった。

その存在をじっと見ていると、だんだん吸い込まれてしまいそうな恐怖感と、放っておいてはいけないという正体不明の責任感に頭の中を支配されるような感覚に陥る。


何故それがこの時代のこの場所に存在しているのかはまるでわからない。

わかることは自分達のいる場所が既にいつもの“日常”ではないことだけだった。


夕闇に揺れる赤と白。突き出した棒状の造形物。倒れる木々と砕ける壁。

“それ”はいつもの日常に恐怖と変化をもたらし、出逢いと別れを与える奇妙奇天烈で残酷な存在だということを…



       まだ誰も知らない。

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