作者は経験したことしか書けない
鈴木怜
作者は経験したことしか書けない
作者は体験したことしか書けない、らしい。
そう前置きした上で、画面の向こうからこんな言葉が飛んできた。
『だからさ、ロリっ娘に抱き抱えられるぬいぐるみの気持ちはぬいぐるみになってみないと分からないんじゃないかな!?』
「うわ気持ち悪い!!」
電話越しになんてことを言っているのだろうか。
「いやあのね、web小説家のコミュニティだよここは。だからさ、昨日今日のSNSの話題だって当たり前のように出るよ出ない方がおかしいよ。でもさあそれはあんたの欲望のために出てきた話題じゃあないんだよう!! 大喜利と化しているけどさあ別にそういう訳でもないじゃない? このロリコンめどうせならもっと詳しいシチュエーションまで語り尽くすがいい」
『最後の落ち着いた口調が完全に「自分もロリコンです」と白状してるようなものなんだけどそれでいいのかな?』
「構わん続けたまえ」
『じゃあ続けるけどさあ』
と、そこまで言って、声が途切れた。言葉を選ぶような、そんな時間が流れる。
『どうせならよくいるロリっ娘よりもゴスロリ系着た子の方がよくないですか?』
「素晴らしいですね」
こちらが間髪入れずにそんな返答をしたものだからか、かえって向こうが困惑した。
『全てに対してオールオーケーでしたっけあなた』
「僕のことはいいからさあ」
『じゃあ続けますけどぉ……そんな子に抱き抱えられている武器が中にてんこ盛りになったぬいぐるみになりたい』
ちょっと斜め上から殴られた。
「バトルファンタジーっすか……」
『はい。で、戦うときに雑に扱われて、首をもがれながら武器を取り出されたり突っ込まれたり爆弾仕込まれて敵陣に放り込まれたいんです』
「おう、かなりバイオレンス」
『でも良くないですか!?』
「めちゃくちゃいいですね!!」
向こうの声も弾んだ。
『なんで今度のオフ会で超巨大なぬいぐるみを作りたいんですけど手伝ってもらっていいですか? 私を覆うようにして綿とか詰めて』
「やる気ですかあ!?」
後日、本当に手伝わされた。
ぬいぐるみになった気持ちもついでに聞いてある。
作者は経験したことしか書けない 鈴木怜 @Day_of_Pleasure
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます