第8話 日本各地の珍現象

丸エスブックセンター(東京)

オフィス街のど真ん中の大型書店。平台に積まれていたゆいおっぷは完売した。店員がゆいおっぷの在庫を尋ねる電話や店頭での問い合わせに追われている。


羽黒書店(山形)

店にくる若い男性客がレジに並ぶ間に動画投稿サイトに投稿された短い動画に夢中になっている。とりわけ人気なのが、天狗の羽黒高雲が本を紹介する動画だ。


乙亥堂書店(大阪)

「クェっちゆ!」

「クェっちゆ!」

「クェっちゆ!」

道頓堀にある店舗内で、3人の店員がこの言葉を発しながら動画を撮っている。このセリフはゆいおっぷの中に出てくる。言葉の滑稽さと可愛さの入り混じった響きが若い人の脳髄に刺さるのかもしれない。


さしす書房門司港店(福岡)

自称・天狗系Vチューバーの羽黒高雲が店にやってきた。Vチューバーというのは2次元のアバターで活動するユーチューバーのことを指す。にもかかわらずアバターではない天狗が店にやってきて一時は騒然となった。どうやら高雲自身がVチューバーという単語の意味をわかっていなかったようだ。しかし、高雲自身の人柄(天狗柄?)が客に伝わると瞬く間に店が繁盛していった。ゆいおっぷの売り上げもも九州の書店の中ではこの店舗が1、2位を争う。


ゆいおっぷの人気は日本全国の書店で高まっている。それが英心書店の渋沢栄一入りのおにぎりによるものなのか、それとも純粋な面白さによるものなのか、どちらなのかはわかっていない。

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