第60話 ゾンビシホヒメ
ん……後頭部が熱い………………。
「ん!?」
目を覚ますと、シホヒメの顔がドアップで見える。
「うわああ!? し、シホヒメ!?」
「おはよぉ……エムくぅん……」
三日目ともなると、さすがに目の周りが黒いし、表情も暗いし、美人なシホヒメでもさすがに怖いな。
「お、おはよう……」
「よく眠ったぁ……?」
「お、おう……朝までぐっすりでした……」
「うふ……ふ……よかった……」
「今日こそは枕を引こう。俺も頑張るから」
「うん……うふ……ふ……」
なんだか、以前よりも酷くなってないか?
何年もまともに眠れていなかった時よりも、今日の方が酷く見える。
俺を皮切りに奈々達も起き上がって、先に起きた美保さんが用意してくれた朝食を食べる。
朝飲む紅茶は優雅で気持ちいいな…………シホヒメ以外。
色々な支度が終わって本日もダンジョンにやってきた。
できれば、違うダンジョンに行ってみたかったけど、安眠枕が引けないんじゃシホヒメが本調子じゃないので、今はガチャを引く優先だ。
《配信が開始されます。》
『うわっ!? 怖っ!?』
『急にホラースタートすんな!』
「シホヒメ! カメラにガン飛ばすな!」
「うぅ……」
「ゾンビみたいになってるぞ!」
『ゾンビ化した残念美女☆彡』
『リアルゾンビすぎてワロタww』
『歩くのもガニ股なんだけどww』
『残念美女。今日三日目か』
「ああ。二日も眠れていないから、三日目だな」
『三日目にしては重症だな?』
『エム氏が眠らせてくれなかったからな』
おい! 言い方! 色々あかんだろ!
『エム氏との夜は激しかったんだな……』
「俺はちゃんと寝てたよ!」
「うぅ……ずっと……エムくんを……見つめてた……」
「怖いから!」
『彼女を放置するスタイル』
『我らエム氏はMなのにドSプレイを望むらしい』
「お兄ちゃん? ドSプレイってなに?」
「うわあああ! や、やめろ!」
『ナナちゃん。今日も天使!』
『昨日の天使はもう終わったんだな』
『あ……白は見れないのか……』
「エンジェルブロッサムは出なかったからな。今度出たらな」
「お兄ちゃん? ドS――――」
「よ~し! 眠れないシホヒメのためにも今日もバリバリ狩るぞ~!」
『逃げたな』
『間違いないな』
『ドS☆彡 ドS☆彡』
こいつら……他人事だと思いやがって……。
今日は配信スタートから十層なので、移動よりも狩りをメインにする。
「アヤ! シホヒメをよろしく」
「は~い。ほら、シホヒメちゃん。こちらにおいで」
「あい……うぅ……」
レジャーシートを敷いてアヤの膝枕にシホヒメが横たわる。
『まじで目が怖すぎるって』
『エロいはずなのにエロくならないシホヒメすげぇわ』
『眠れなかった日にスカートやめろしww』
『ほら、エム氏はスカートじゃないとやる気を出してくれない彼氏だから』
「彼氏じゃねぇっ!」
ま、まぁ……男として? スカートの方が好きといえば好きかも知れない。別にズボン派を拒絶するつもりはないが。
それから次々ダークドラゴンを倒して魔石をどんどん集めていく。
今日は余裕もって百連を回せそうだが、もし引けなかったらもう百連引きたい。
魔石買ってきたら良かったかもな……。最悪リンにお願いして百連だけ引かせてもらうか。
リスナー達の煽りやら何やらでコメントが大盛り上がりを見せて、同時視聴者数も最大7,299人からさらに数を増やして8,538人になっている。
増え続ける理由はどうやら俺達のことがネット記事になっているらしくて、リンだけでなくナナの可愛さやリアルナースのアヤ、残念美女シホヒメの存在がどんどん広まっているらしい。
リスナーの大半が男性なのは間違いないが、最近増えるリスナーの中のコメントが『リンちゃん可愛い~』とかのコメントも多くて、どうやら子供達も見にくるようだ。
リンとナナの可愛さなら、どんな年代にも刺さるんだな。
配信時間が終わりに近づいたので、集めた魔石ポイントでガチャを回す。
「シホヒメ~ガチャ回すぞ~」
ゾンビみたいなシホヒメがその場からガバッと起き上がる。
ゴ〇〇〇みたいにサササッと四つん這いのまま近づいてくるシホヒメ。
「普通に歩けっ!」
思わず頭にチョップを叩き込む。
いつもの反応はなく、すっと起き上がったシホヒメが息を荒げながら俺を見続けた。
「じゃあ、回すから」
いつものガチャを回すと――――初めてみる色の筐体が現れた。
『紫!? SSRか!?』
『初めての確定演出キタァァァ!』
「枕……」
これで永眠枕なんて出てくれたら嬉しいんだが……。
ハンドルを回すと、黒いカプセルが大量に出てくるが、時々白も混ざっている。
白が出る度にシホヒメがビクッと反応する。
Rは1%から3%に上昇しているが、体感的にもっと出やすくなった気がする。
ボーナス二十連分の前の百連分で白が既に七つ出ている。
そこに、ボーナス二十連のうち、十九個が白だった。
そして、最後は初めてみる紫色のカプセルが現れた。
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