第8話 この乳はイカサマじゃないよー!顔も体も天然モノ♪
「お二人さん? 随分若いがどういうご関係で?」
「アタシたちは夫婦だよ。新婚バリバリ、イェイ」
「おい、呼吸をするようにさらッとウソをつくな」
二人は宿の受付の前にいた。一緒の部屋に泊まりたいルウシェと別々の部屋を用意して欲しいと願い出るミロン。
結局、ミロンが一緒の部屋に泊まるなら野宿すると言い出したので、仕方なくルウシェも別々の部屋を取ることに了承していた。
「なんだいなんだい。これだから女を知らないお子ちゃまは」
「おい、アンタの方が俺よりも一つ年下じゃなかったか」
「そう言うことじゃないの。ったく、だから無駄にイケメンは困るんだ。これからはキミのことを〈童貞王子〉って呼ぶからね」
「それはマジでシャレになってないヤツだから……」
二人はミロンの部屋に集まっていた。主に今後の予定を確認すると言う名目だったが、顔を合わせて早々に部屋を別々にされたルウシェの不満が飛び出していた。
風呂上がりでパジャマのボタンを多めに開けて胸元をアピールしているのにスルーされているのもその要因らしい。
しかし、事実は違った。ミロンはルウシェの小柄ながら神スタイルと言える身体。特に胸が気になって直視できなかったのだ。どうにも話に集中できず、持ち込んだ安酒をあおるミロン。この元王子、酒はあまり強くない。
真っ赤な顔で完全に目が座った頃、ミロンは酔った勢いに任せてずっと抱いていた疑問をぶつけた。
「な、なぁ。実はずっと気になっていたんだが」
「なんだい?」
「そ、その胸も……その……イカサマだったりってことは」
「は?」
「いや、だから。アンタって小柄なのに胸だけそんなに立派なんておかしくないか。だからその……
ルウシェは右の口角だけ持ち上げると、ニヒヒと満開の笑顔を浮かべた。
「この乳はイカサマじゃないよー! 顔も体も天然モノ♪ そっかそっか。実はそんなにいやらしい目でアタシを見ていたのか、このおっぱい星人のど変態王子は」
「だれがおっぱい星人のど変態王子だ!」
「無理しちゃダメだってぇ。ほうらぁ、本当は触りたくて毎晩悶絶級の苦しみを味わってるんでしょ? そんなに触りたいなら今触っとこ」
ルウシェは胸を服の上からぐいっと持ち上げると、ぷにぷにと揺らして見せつける。
「お、俺はそういうつもりでアンタと旅をしているんじゃない! さっきのは、酒のせいで一時的に頭がイカれただけだ!」
「いや、それは単に酔って理性が崩壊しそうになっただけだと思うんだけど」
「うるさいうるさい! あー、ちょっと頭を冷やしてくる」
言うなり、ミロンは部屋を飛び出して行って宿屋の庭の木にガンガンと頭突きをしていた。部屋に戻ってきた時には顔面血だらけの状態。酒で血行が良くなっているのか、額からはドクドクと血が溢れている。
「こ、これでもう大丈夫……」
「うん、全然大丈夫じゃないね。まったくキミってヤツは」
ルウシェは部屋に置いてあった救急箱と水で濡らしたタオルを持ってきてベッドに座ると、自分の膝の上を指差した。
「治療するから、ここに仰向けになって」
「はぁ? 男が女の膝の上に頭を乗せるなんてできる訳……」
「いいから早くしなさいー!」
「は、はい……」
大人しくルウシェの膝の上に頭を乗せる。思ったよりも顔が……というよりも胸がすぐ近くにあってミロンは目のやり場を完全に失い、バチッと目を閉じた。
ルウシェはにこやかに微笑みながら手際よく治療を行う。ミロンも反省したのか黙って受け入れていた。こういうのって何だかいいなと思いながら。
それからもミロンはルウシェに完全にやりこめられていたが、時間が過ぎるのは早く、気づけば日付が変わる少し前。それまで元気に騒いでいたルウシェがあくびをすると、目をこすりながら言う。
「ふわぁ……。もう眠くなってきたから最後に明日のミッションを確認をしておこう」
「ミッション?」
「そう。キミには街の南にあるエリアを見てきて欲しいんだ。アタシの予想だとそこはたぶん
「スラムか。それなら確かに危険な役回りだから俺が行こう。で、そっちの聞き込みってのは?」
「知り合いのことだよ。それがここに来た目的だったじゃない」
「あぁ、確かにそうだった」
「じゃあそっちはよろしく。アタシはカジノでしっかり聞き込みをしてくるから。明日は爆勝ちだぜぇ」
「おいおい、心の声がダダ洩れてるぞ……」
翌日。
朝食を早めに済ませると、二人はそれぞれの目的地へと向かうのだった。
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