ダブり

エリー.ファー

ダブり

「現実の定義とは何ですか」

「現実などありません」


「現実の定義とは何ですか」

「現実に興味を持ってはいけません」


「現実の定義とは何ですか」

「現実と非現実に差がありません」


「現実の定義とは何ですか」

「あんまり考えたくないんだよなぁ」


「現実の定義とは何ですか」

「難しいことを聞かないで下さい。お願いします」


「現実の定義とは何ですか」

「現実は分かるんですけど、定義って何ですか」


「現実の定義とは何ですか」

「現れる実と書いて現実です。はい、だからなんだってことですよね。うん。それは、もうちょい待ってね」


「現実の定義とは何ですか」

「想像から生まれる余白以上の価値はありません」


「現実の定義とは何ですか」

「考えてはいけません」


「現実の定義とは何ですか」

「定義したとして、役にたつことはないでしょう」


「現実の定義とは何ですか」

「では、非現実の定義を教えて下さい」


「現実の定義とは何ですか」

「仕掛けのない真実です」


「現実の定義とは何ですか」

「あなたが私に話しかけていること」


「現実の定義とは何ですか」

「あなたがあなたでいられる間」


「現実の定義とは何ですか」

「二重です。見誤ってはいけません」


「現実の定義とは何ですか」

「定義してはいけません。必ず抜け漏れが生じます」


「現実の定義とは何ですか」

「あなたにとって、何であったら満足なのですか。尋ねる前からある程度、考えはあるのでしょう。だったら、それを先に言うのが礼儀というものだと思いませんか。現実の定義について悩む人など少ないはずです。あなたがあなたにかけた呪い以上の価値はないはずです。そうでしょう。あなたが苦しむべき問題なのに、無理矢理、私を巻き込まないで下さい」


「現実の定義とは何ですか」

「死ねば考えなくて済みます」


「現実の定義とは何ですか」

「生きるために必要なすべてです」


「現実の定義とは何ですか」

「すみません。もう一回、言って頂けますか。ここ、うるさくて」


「現実の定義とは何ですか」

「あの、静かにしてください。ここ、図書室ですよ」


「現実の定義とは何ですか」

「定義は必要ありません。とにかく、壊れ物であると思っておけば大丈夫です」


「現実の定義とは何ですか」

「新鮮であることです」


「現実の定義とは何ですか」

「未知です。そして、道です」


「現実の定義とは何ですか」

「現実とあなたの距離はいくつですか」


「現実の定義とは何ですか」

「数値化できませんので、語れません」


「現実の定義とは何ですか」

「形がない。それだけです。それ以上のものではありません」


「現実の定義とは何ですか」

「何であってもいいものです。ですが、あなたにとって都合のいいものであるべきだと思います」


「現実の定義とは何ですか」

「本当に、定められると思いますか」


「現実の定義とは何ですか」

「何者のための定義ですか。そこによるのではありませんか」


「現実の定義とは何ですか」

「暇つぶしには丁度いい質問ですね」


「現実の定義とは何ですか」

「壁です」


「現実の定義とは何ですか」

「人間の定義と同じです」


「現実の定義とは何ですか」

「そんなことを考えるくらいなら、寝なさい」


「現実の定義とは何ですか」

「さあ、何でしょうねぇ」

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