クマ・ノ・ヌイグルァァァミ
緋色 刹那
🐻
古雑貨屋さんで、クマのぬいぐるみを見つけた。
布がパッチワークで、可愛らしい。ただ、口元と爪がうっすら赤く汚れているのが気になった。
「この汚れって元からですか?」
店員さんは「そうなんです」と申し訳なさそうに答えた。
「定期的に洗っているんですが、日にちが経つと戻ってしまって……それでも構わないなら、お売りします」
私は悩んだ末、ぬいぐるみを買った。
赤い汚れも、口紅とマニキュアでオシャレしていると思えば、逆に良い。
家に帰ると、さっそくソファーの上に飾った。
私はぬいぐるみが大好きで、他にも動物や人間のぬいぐるみも持っている。多すぎて、雪崩が起きそうだ。
「そろそろ、別の置き場所考えないとなぁ」
私はトイレに行こうとして、視線を感じた。
振り返ると、今日買ったクマのぬいぐるみと目があった。
(あの子……さっき、こっち向いてたっけ?)
翌朝、クマのぬいぐるみの口まわりが、真っ赤に染まっていた。爪にも赤い汚れが真新しくこびりついている。
「昨日、何かこぼしたっけ?」
考えても、原因は分からない。
私は汚れがシミにならないよう、すぐにクマのぬいぐるみを洗った。洗剤をつけて、入念に。でも、汚れは完全には落ちなかった。
ぬいぐるみをドライヤーで乾かし、元の場所へ戻そうとして……気づいた。ソファーに置いていた人間の女の子のぬいぐるみが一人、消えていた。
その翌朝も、クマのぬいぐるみの口まわりと爪は赤く汚れていた。人間の女の子のぬいぐるみは、さらに一人減っている。
それと、洗い方が良くなかったのか、クマのぬいぐるみのお腹が少し膨れていた。
「ごめんね。元に戻すから」
私はぬいぐるみの縫い目を解き、中綿を取り出した。
すると、消えたはずの人形達のパーツが、中綿に絡まって出てきた。パーツは粉々で、赤く汚れていた。
「……食べた?」
クマのぬいぐるみは真っ赤な口で、ニヤリと笑った。
(終わり)
クマ・ノ・ヌイグルァァァミ 緋色 刹那 @kodiacbear
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます