第35話「羊水腐敗系女子」

「ふぁ~……」


午前5時。

秀吉はいつもより2時間程早く

ベッドの上で目が覚めた。


「ん~……むにゃむにゃ……」


「スー……スー……」


自身の両隣でまだ就寝中の寧々と茶々。

そんな2人を起こさないように

秀吉はそ~っと起き上がり

寝室から出ていった。


ピッ


「アサナンデス~!!!」


リビングに入ってソファーに座り

テレビを点けると

人気バラエティ番組の

アサナンデスがやっていた。


「さて!

早速本日のファッションコーナー!

今日は"30代女子"のための

夏コーデを紹介します!」


ピクッ


30代女子というワードに

秀吉は反応する。


「………なんだその矛盾した言葉は………

30代は女子じゃなくババアだろ………」


ややイライラ気味になる秀吉。

そして画面の向こうに

30過ぎのババアタレントが2人登場し

本日のテーマとなる服を紹介していく。


「今日紹介する服はこれで~す!」


花柄のワンピースを

視聴者に見せるババアA。


「やだ~!ちょ~可愛い~!」


ぶりっ子ポーズをしながら

腰を左右に振るババアB。


「ッッッッ!!!!

ババアがぶりっ子してんじゃねぇ!!!」


バリィィンッ!!!


ぶりっ子ババアを目の当たりにし

不快ゲージが限界突破した秀吉は

テレビを殴って破壊した。


「ハァ………ハァ………

チッ……朝から気分悪くなっちまった……

気分転換に散歩でもいくか……」






スタスタスタ


「女という生き物は

若さというものに

異様なくらい執着する習性がある

だからいくつになっても

"女子"というワードを使うのだ」


持論を唱えながら

近所の公園内を散歩していた秀吉。

そしてちょっと歩いた所で

40代くらいのババアと

リードを付けられた1匹の柴犬と遭遇した。


(うわぁ~……めっちゃ可愛いな~)


そう思いながら柴犬を眺めていると

突然飼い主のババアが

秀吉に怒鳴り付けてきた。


「ちょっとアナタ!!

何私の股関見てるのよ!!」


「は?い、いや……見てないですよ……

俺が見てたのはそこの可愛い柴犬ですよ」


「嘘をおっしゃい!!

ぜ~~~ったいに股関を見てたわ!!

"女子"はそういうのすぐに

分かるんだからね!!」


ピクッ


ババアの口から発せられた

女子というワードに

体を反応させる秀吉。


「全く!!

最近のオスガキはスケベすぎて

嫌になっちゃうわ!!

外を歩けば常に女子の股関に

目を向けてるんですもの!!」


「………………」


「ちょっと!!

黙ってないで何か言ったらどうなの!?」


「……黙れババア」


「は!?」


「聞こえなかったか……?

黙れって言ったんだよババア……!!

誰がてめぇの股関なんか

見るかっつーんだよ……!!」


秀吉は怒りに声を震わせる。


「まぁ!!ババアですって!?

女子に対してその発言は

失礼過ぎるんじゃないの!?」


「黙れ!!何が女子だ!!

女子っていうのは10代までの事だ!!

お前はどう見ても

40は超えてるだろうが!!

よってババア!!」


「……ッッッ!!!

わ、私ババアじゃないもん!!

まだまだ女子だもん!!」


「あっそ!!

じゃあいいよ女子で!!

でも女子は女子でも"羊水腐敗系女子"な!!」


「よ、羊水腐敗系女子……!?」


「ああ!!良い呼び名だろ!?」


「良くねぇわボケが!!!」


「フンッ!!おいババア!!

お前のデータは今チート使って

詳しく見させてもらったぜ!!

名前は馬場杏(ばば あん)、45歳独身!!

ハッハッハッハッハ!!行き遅れ~!!

羊水腐敗!!閉経完了!!出産不可!!

孤独死確定!!」


「ッッッッ!!!!!

キサマァァァァァァ!!!!」


ババアは突然激昂し

懐から仕込み刀を取り出し

秀吉に斬りかかる。


「うおっ!?」


咄嗟にバク転し回避する秀吉。


「あ、あっぶねぇ~!!

いきなり何すんだババア!!!」


「フ~!!フ~!!

殺す殺す殺す殺す殺す殺す

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!」


独身の事を馬鹿にされ

秀吉に対し殺意剥き出しのババア。


「ハッ!!立ち合いが所望かよ!!

上等だババア!!」


秀吉はチートを使い

右手に刀を出現させ

勢いよくババアに斬りかかる。


キィンッ!!


刀で防ぐババア。


「チッ!!

一発じゃ仕留めさせてくれないか!!」


「40代舐めんじゃねえぞ

クソガキ!!!!」


キィンッ!!キィンッ!!キィンッ!!


平日の早朝に公園の中で

激しい剣劇を繰り広げる少年とババア。


「クゥ~ン……」


そしてそんな2人を

やや距離の離れた所から

怯えた表情で見つめていた柴犬。


キィンッ!!キィンッ!!キィンッ!!


「ぬうっ……!!」


やや押され気味のババア。


(くっ……!!このクソガキ!!

単純な剣の腕は私より上か……!!

このままやり合っててもジリ貧……!!

ならば……!!)


「ブバーッ」


「うおっ!?」


ババアは秀吉の顔目掛けて

口から毒霧を噴射。

それにより秀吉は一時的に視界を失う。


「くっ……!!目が……!!卑怯者め!!」


「勝負に卑怯もクソもねぇわ!!!

いくぞクソガキ!!!

独身一刀流・膣ノ型・月経斬り!!!」


ザンッ!!

ザシュ!!ザシュ!!ザシュ!!

ザンッ!!


ブシャーッ


「かはっ……!!」


ドサッ


必殺の斬撃を喰らい

全身から血を吹き出して

地面に倒れる秀吉。


「フン……独身を……

40代女子を舐めるなよ……」


ザシュッ


「う!?」


ドサッ


決め台詞を吐いた直後に

何者かに背中を斬りつけられ

地面に両膝をつけるババア。

誰だと思い振り返ると

そこには目の前に倒れていたはずの

秀吉の姿。


「なっ……!?」


「残念、変わり身だ」


「か、変わり身……!?」


秀吉に言われパッと目の前を見ると

そこには1本の大根があった。


「だ……大根……!?」


「そうだお前が斬ったのは

俺ではなく大根だったのさ」


「……く……そぉ……」


ドサッ


地面にうつ伏せに倒れるババア。


「安心しな、急所は外してある

それに加えて救急車も呼んだ

だから命の心配をする必要はない」


秀吉はそう言い残し

自宅へと帰って行った。

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