第3話「絶望」

「ゴボボボボッ!!!!

ゴバァッ!!ゴボボォッ!!!」


「よーし引き上げろ!」


ザバァ~!


「ブハー!!ゴホッ!ゴホッ!ゲッホッ!」


「ハハハ!!秀吉!!

何だそのマヌケな顔は!!」


2限から4限の間

"プロローグ"でリンチをしてきた連中から

パンツ一丁にされ両足に縄を巻かれ

プールで水責めの刑を受けている俺。


「ゴホッ……!ゴホッ……!

"ミラン"君……!もう…許じて……!」


"ミラン"……"ミラン・ベール"。

いつも俺を痛め付けてる

5人組不良グループのリーダーだ。

日本生まれ日本育ちのオランダ人。

年齢は15歳、学年は1年生。

身長220cm、体重145kgの骨太体型で

身体能力も生まれつき凄い。

どれくらい凄いかと言うと

パンチ力5t、キック力10t

ジャンプ力は一跳び15m

100mは5秒08秒で走りきる。

こんな化物に目を付けられた俺って

どれだけ災難なんだって話だ。

ちなみに取り巻き連中も皆恵体である。

(全身190cm越えの100kgオーバー)


「おいおい秀吉よぉ~……

この程度で根をあげてどうすんのよ?

まだ後25セット残ってるんだぜ?」


「お……お願いじまず…!!

もう勘弁じでぐだざい……!!

このままじゃ……死んでじまいまず……!!

どうが……お慈悲を……!!」


「…………しゃあねぇな……おい!

解放してやれ!」


ミランの発言により取り巻き達が秀吉を

プールサイドに引き上げ縄をほどく。


「ハァ……ハァ……ミラン君……

ありがとう……!」


「ああ……別にいいってことよ……

よし!秀吉!ちょっと校庭に行こうか!」


「え?」





ズザザザザザザザァァァァァ~!!!!



「ああああああああああああああああ

あああああああああああああああああ

ああああああああああああああ~!!!!」


「ヒャッハ~!!!どうだ秀吉ぃぃぃ!?

風を感じるダルルォ!?」


水責めから解放され

ホッとしたのも束の間。

俺にはさらなる地獄が待ち受けていた。

校庭に着くなりミランが用意したのは

奴の愛車である"日産GT-R"だった。

ミランの指示で取り巻き達が車体の後ろと

俺の両足を縄で繋げ、水責めの次は

車による校庭引きずり回しの刑を

行い始めたのだ。


「痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!

いだいよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

全身に砂利が当たってるぅぅぅぅぅ!!!」


「ハハハハハ~~!!!

なになに!?もっとスピード上げろって!?

よっしゃまかせろ~い!!!」


ブオオオオオオオオン!!


ミランはアクセルを踏み込み

校庭内で70km程のスピードを出す。



そんな光景を4限の授業中に

教室の窓から見ていた生徒達。


「おい見ろよ!狸猿が引きずり回されてる!」


「きゃはははは!ウケんだけど~!」


「風情を感じるなぁ~」


「殺っちゃえNISSAN」


生徒達は皆、秀吉の事を嘲笑っていた。

教師達も一緒になって嘲笑っていた。



ズザザザザザザザァァァァァ~!!!!


「ハッハー!!慣性ドリフトォォォォ!!」


(ヤ、ヤバい……!!マジに死ぬかも俺……!!)


俺がそう思ったその時……。


キーンコーンカーンコーン


4限終了の鐘が鳴った。

それとほぼ同時にGT-Rもピタッと止まった。

するとミランが扉を開けて出てきて

俺の方へと近づいて来る。



「秀吉ぃぃぃ~、悪いけど昼飯タイムだ

だから残念だけど遊びはここで終わりだ」


ミランはそう言った後

取り巻き達をゾロゾロと引き連れ

校舎の中へと向かって行った。


(……た……助かった……)


「あ、そうだ秀吉ぃぃぃ!」


「は、はい!?」


「放課後も"また遊ぼうな?"

いつもの校舎裏で待ってるからよ」


「え?」


「分かってると思うけど~

逃げたら"殺す"からな……

んじゃ、またな~!」


「……………………」


絶望する俺………。

逃げるか逃げないか

必死に考える俺………。

考えてる内に何か腹が減ったんで

一旦教室へ戻る事にした俺。


ヒソヒソヒソヒソ。

クスクスクスクス。


教室へ戻る道中

すれ違う生徒全員が

俺の方を見て笑っていた。

そりゃあそうだ。

だって今パンツ一丁なんだもん俺。


(フン……下等な連中め……

この格好は徳川家に代々伝わる正装なのだ!)


な~んて、心の中で強がってみる俺。

で、そんなこんなで教室へと着いた俺。

そして中に入り、ある異変に気付く。

何と……自分の席がないのだ。


(え……!?ど、どうなってんの!?)


俺が必死でキョロキョロと席を探してると

教室内にいた他の連中がクスクスと

俺の方を見て笑っていた。

そんな中、ある1人の男子が

俺に向かって言ってきた。


「おい狸猿ぅぅぅ~!!

オメーの席屋上に置いといてやったぞ~!!

猿は高い所が好きだろぉぉぉ!?」


「「「ギャッハッハッハッハッハ!!!」」」


ソイツの発言により教室内で爆笑が起きる。

そして俺は泣きそうになりながら

逃げるように教室を飛び出して

屋上へと走って行った。


「うぅ……ぐすん……ひっぐ……」


屋上に置かれていた席に座りながら

泣きじゃくる俺。

パンツ一丁な上に風が吹いているので

滅茶苦茶寒い。


「もう辛い……もう耐えられない……

もう死のう……」


毎日のいじめによる俺の精神状態は

とっくピークを越えていた。

席から立ち上がり、体をフラフラさせながら

フェンスの方へと向かい、そこをよじ登る。


「………この高さなら即死できるよな………?」


下を見つめながら呟く俺。


(今思い返せば……これまでの人生

良い事なんて一つもなかったな~……

どこ行っても嫌われ……

どこ行ってもいじめられ……

……もう人間なんてやりたくない………

……神様……どうか来世では鳥にでも

生まれ変わらせてください………)


そう心の中で言いつつ

俺は屋上から身を投げた。

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