離さない
まれ
相棒を
私には大切な相棒がいた。明るくて優しいそして愛らしい少女。両親にも愛されどんどんと成長していった。少女が幼い時から私とその少女はいつもどこへ行くにも一緒だった。一生一緒にいるんだとこの時は思ってた。
でも、ある日事件は起こった。その少女は私から離れていってしまった。誘拐だった。
この日も私と少女は一緒に出掛けていた。ずっと、手も繋いでいた。
夕方頃になり、帰宅しているときだった。少女の後ろから少女よりも大きな男が少女の口と手を縛り、別の男が大きな男ごと少女の頭から足までを大きな袋に入れた。その後、少女は白い車に乗せられ連れ去られた。
私と少女の手は少女が手を縛られたときに離れた。動けない私は声も出せず、数時間雨風に晒された。
事件から数時間後、現場に警察が来て私の身体も隅々まで調べ尽くされた。
その数日後、警察がこの事件の犯人である三人の男を捕まえた。私はようやく少女に会えると思った。
だが、しかし少女と再開することはなかった。少女は死んでいたのだ。私は悲しんだ。涙は出ない。
私は少女の実家に少女の遺品として仏壇の近くに供えられていた。
寒く、仄かに明るい場所のそば。
毎日決まった時間に少女の両親が来て、お供え物を持ってくる。
その後はチーンと鳴ってこの空間に響く。誰もしゃべらず、りんの音だけがする。
両手を重ね終えると私を一目見て泣き出す。この繰り返しだ。
ただ私には何もできなかった。
そのまま数十年の時が経った。少女の両親も亡くなった。少女の家にただ一人残った私と多くの遺品たち。後に業者が訪ねてきて、私は近くのお寺で供養
された。
そして、目が覚めると私の目には人間の手と人間の父親と人間の母親の顔が映る。
その手も私が思った方向へ動いた。どうやら、私の手らしい。
隣には可愛らしいうさぎのぬいぐるみがあった。
私は絶対にこの子を離さない。
同じ思いをさせないように。
離さない まれ @mare9887
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