第29話 共生か、支配か
「だから、フラフ君が岳春君のところへ来たのにも理由があるんじゃないかしら?」
隣に座って足をブラブラさせているフラフは「ちょろそうだったから」と答える。
ムカつく。
「ねえ、蝶々。僕って可愛いでしょ?」
「ええそうね。控えめに言って美少年だわ」
特に心を揺さぶられた様子もなく、事実を告げるように淡々と答える蝶々さん。それが気に入らない様子のフラフが、口を引き結び頬を膨らませてわざとらしく怒った顔を作って見せている。
「コスモスが家事を侵略の手段にしてるように、これが僕の侵略の手段。この可愛さで人をダメにして、僕がいないと生きてけないってところまでにするんだ」
可愛く言ってるけど、やばいこと言ってるよなこのエイリアン。
「普通に考えてやばいですよね、エイリアンが居候だなんて」
「まあね。世の中何が起こるかなんてわからないって私も思ったわ」
「こいつが来てから家族がこいつにデレデレで、ちょっと心配な域って言うか…」
「私はコスモスの事を信じてるけど、フラフ君が安全で良い居候型地球外生命体とは限らないわ」
「ひどいよ蝶々」と横で甘ったるい声で訴えているが、目が明らかに殺気を帯びている。その事に俺が気がついた時には、いつでも蝶々さんを庇える位置にコスモスさんが立っていた。ティーポットを持って。
「気を悪くしたならごめんなさい。けど、岳春君は家族を心配して、フラフ君を少しだけ脅威に感じ始めてる。フラフ君の本来の目的は侵略じゃないでしょ?」
「うん、住む星がなくなっちゃったから、居候させてくれる場所にいるだけ」
子どもを諭すような柔らかな声音で、野薔薇さんは「なら」と続けた。
「フラフ君が目的を果たすためにしなくちゃいけないことは、侵略じゃなくて共生だよ」
「でも侵略っていう支配でなくちゃ、いつかエイリアンである僕は人間に裏切られると思う」
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