第28話 野薔薇蝶々宅
野薔薇さんに案内されて、小綺麗なマンションへとやって来た。俺も大学に入る時「一人暮らししてみたいなぁ」と思ったけど、前より歳を取った気がする両親を見てやめた。二人が困った時、姉ちゃんはともかく俺なんか何の役にも立たないかもしれないけど、力仕事とか機械関係を教えることくらいは出来る。実家から遠い家に一人暮らししたら、それをするのにも電車での往復とかで遠慮されそうだから、実家暮らし継続。
まあ、母さんが掃除機かける時には決まって「邪魔」とパジャマを掃除機で吸われるんだけど……。
「お邪魔します…」
「わぁ、蝶々の家蝶々の匂いがする」
「キモイですね、追い出しますよ?」
「僕が嫌ならコスモス《お前》が出てけば?」
優しげな花の名前のエイリアン達は、名前とは裏腹に険悪な雰囲気を漂わせている。
「あ、これ、ゼリーです。急にお邪魔してしまってすみません」
「あら、ありがとう。早速みんなで食べましょう」
当たり前のようにコスモスさんがお茶を淹れにキッチンへ向かう様子を何となく目で追っていると、野薔薇さんは二脚しかない椅子とこじんまりとしたダイニングテーブルの傍に、座れそうな台?を二つ持って来ながらきまり悪そうに微苦笑した。
「私家事が苦手でね。家事が物凄く出来るコスモスがそれを見て、私のところへ来ることに決めたそうなの」
「言い方悪いですけど、要はコスモスさんの侵略方法は家事ってことですね」
「そうなります。できれば侵略でなく居候と言っていただきたいところですけどね」
とキッチンから声が返ってくる。うちの家族ならこの手の手土産ゼリーをもらったらそのまま出すが、素敵な《わりそうで怖い》お皿にゼリーをわざわざ出している。まめだな…見習お。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます