第2話 暗殺ミッション

 しかしこの女神、レディースコミックの悪役令嬢みたいだ。それともWEB小説や文筆家になろう作品か。なんてツキのなさ。

 アニメ化が発表された推理文芸作品から、日間一位を奪取した反動か。あれはアニメ化発表直前だったが、これなら他の一位奪取ユーザーも巻き込まれるかもしれない。


 多弁なる薬局、アニメ化決定おめでとうございます。

 私は転生することになりました。

 誰か出来たら動画、送って下さい。

 なんとか観られるようにします。

 違法視聴は違法です。

 どうか法で裁くついでに助けて貰えませんか?

 しかし女神は、そんな俺の心情など構わず話を進めた。


「さあ、新たな人生の始まりよ。その手を汚し、見事期待に応えてみせなさい。このぬいぐるみを持って」


 見てくれだけは美しい女神に命じられ、ついにその時が訪れた。

 読む系企画の途中だったのに……。

 ライトユーザーはわずか十のポイント、そしてブックマーク一つに付随する二ポイントが欲しくて仕方ないというのに。すまない、もう俺に出来ることはない。

 日に二桁に満たぬPV作品を書き記す、力あるライトユーザー諸氏よ、俺のエッセイを遺訓としてこれからも頑張ってくれ。


 薄らぐ意識の中「他のサイトだと星が三つまでなのはなぜなんだろう。結局攻略出来なかったな」と最期に浮かんだのは、SNSな小説投稿サイトへの未練であった。


 ――そこは冒険者の街だった。

 俺は一人、冒険者ギルドへと足を運ぶ。

 仲間は不要。暗殺ミッションは少数に限る。たかが女一人、サクッと殺って全力の転生ボーナスを受け取らないと。

 中世ヨーロピアンだかナーロピアンだか分からない世界で一人、俺はギルドに訪れた。

 知りたいことはただ一つ、聖女は今どこにいるのか。鉄道や車、飛行機もないこの異世界。まともな移動手段がない以上、別の街にいると言われただけで詰みかねない。


「ダンジョン攻略中」なんて言われたら道中で確実に死ねる。転生のお陰か、一応冒険者らしい力とちょっとした女神の加護はあるようだが、聖女を殺らねばそれすら失いかねない。

 まさか魔王と戦ったりしてないだろうな。ざまあかざまぁか知らないが、どっかに追放されてたらどうしよう。


 女同士のいがみ合いは実におぞましい。なんでああマウントを取りたがるのか。

 平和が一番。なんで分からない。ほんと、女って生き物は最後まで理解出来なかった。全女に平和平穏がいかに重要か、諭してやることが出来なかったことも心残りだ。

 みんな、平和を愛する人でいて欲しい。

 他人を思いやり、皆と自然を慈しむ。人類はそれだけでもっと穏やかな社会を実現出来る。

 メッセージを残せず残念だ。

 もう、皆の平和を祈ることしか出来ない。


 では、平和な人生を実現する為暗殺ミッションを始めるとしよう。

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