ぬいぐるみの中の殺人

ヤミヲミルメ

ダチョウの着ぐるみの首は細い

 親愛なる我が読者よ!

 今回の謎はハウダニット、犯行手段についてだ!

 手段がわかれば自ずと犯人の正体が見えてくる。

 これはそういうたぐいの事件だ。


 現場は遊園地の着ぐるみショーの楽屋。

 被害者はダチョウのぬいぐるみを着た状態で死亡していた。

 早速だが調査を開始しよう!



 このぬいぐるみは頭が大きい分、首の細さが際立つね。


 ぬいぐるみの手……というか翼は非常に短く、自由に動かせない。

 背中のファスナーに届かないのはもちろん、一度着てしまえば頭部を外すことすら自力ではできないだろう。



 では、ぬいぐるみの頭を取ってみよう。

 おっと、血だ。

 ポタポタとこぼれてきた。

 紫に変色した唇を血が伝っている。



 ぬいぐるみ自体に不審な点は……ふむ……

 どこを見てもキレイな縫い目だ。

 プロの職人の手によるものだな。





 手がかりは以上だ。

 急ごう。

 こんなにわかりやすい証拠を残しているということは、犯人は逃亡の準備を整えた上で犯行に及んだか、さもなければ……


 答え合わせは犯人を捕まえてからにしよう!




  ↓



  ↓



  ↓



  ↓



  ↓




 やれやれ、どうにか死に逃げは阻止できたな。

 殺人事件の犯人を無事に確保。

 警察が連行していった。


 では改めて、犯行手段の話をしよう。




 被害者の唇の色からするに、死因は窒息だ。

 血が出ていたのは、もがいているうちに口の中を噛んでしまったからだろう。


 では、犯人はいかにして、ぬいぐるみの中の被害者を窒息死させたのか?

 答えはこの、ぬいぐるみの頭部にある。


 見たまえ。

 中心に着用者の頭を入れるスペースがあり、裏地と表面の布の間に綿が詰まっている。

 これが一般的な着ぐるみの構造だ。


 ところがこの着ぐるみは……

 裏地と綿の間にビニール袋が仕込まれている。

 被害者は着ぐるみ越しにビニール袋を頭からかぶり、着ぐるみのデザインのせいで自力で脱げずに窒息死した。


 着ぐるみには、完成後にビニール袋を仕込んだような跡はなかった。

 ビニール袋は着ぐるみの制作過程で仕込まれていたんだ。


 つまりこの殺人事件の犯人は、凶器たるぬいぐるみを制作した職人だったのさ。

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ぬいぐるみの中の殺人 ヤミヲミルメ @yamiwomirume

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