「技術だけの魔力なしはいらんっ!」と騎士団を追い出された俺、魔力だけはある王女の体を手に入れて「剣聖」になる。~なんか騎士団が大変なことになっているらしいですが、「私」はしりません~

@TOKAGE123

第1話 邂逅

「技術だけの魔力なしはいらんっ!貴様を退団処分とする!」


…ああ、とうとうこの時が来てしまったか…。


騎士団長室呼び出された俺は、騎士団からの解雇を告げられた時、最初にそう思った。


俺はレント、栄えある王国騎士団の一人だ…この時までは。


貧しい農村で生まれた俺は、幸いにも剣術の才能がそこそこあった。


剣術の才能、というより先読みと反射神経の才能だ。


俺には相手が次に繰り出してくる技がわかるのと、相手が常人より遅く見える、そういう才能だ。


だが、俺は生まれつき魔力がなかった。


村を出て、剣術の才能のみでなんとか王国騎士団に入団することができたが、そこまでだった。


魔力がなく、剣士の必須技能「身体強化」すら使えない俺は、力押しさせると何もできず同期に模擬戦で勝ったことは一度もない。


その結果、俺がやらされていたのは書類仕事などの雑務や騎士団の中の落ちこぼれ(といっても俺よりましな)へ剣術を教えること。


…俺はそれでも腐らずに与えられた職務を全力でこなしていたつもりだった、だが結果はこれだ。


「王国は軍拡へと舵を切ったのだ、お前のような雑用しかできない役立たずを残す余裕はないのだよ!」


そう、王国は隣国との緊張の高まりを受けて軍事改革に舵を切って、その結果がこれというわけだ。


「…わかりました」


最早、俺に反論するほどの気力はない。


いつか花開くと思って、この10年耐えてきたが、どうやら無駄だったようだ。


「うむ、我ら王国騎士団はお前と違い才能ある若者を多く入団させるからな、今日中に騎士舎から出ていけ」


今日中か…数少ない世話になった連中に挨拶する暇もなしか。


「要件は終わりだ、さっさと出ていくがいい」


俺は失意の中、騎士団室を後にする。
















「先生!」


さっさと引き払うため、騎士舎に向かう途中声を掛けられた。


…俺を「先生」と呼ぶのは…俺が教えていた元落ちこぼれのみ。


「イリーナ、か」


そこに立っていたのは赤毛の凛々しいながら美しい女騎士。元落ちこぼれで、俺の元教え子、イリーナだ。


今は王国騎士団の中のエリート、「獅子隊」の一員だ


「どうされたのですか?こんな時間に、こんな場所で」


騎士団の中で馬鹿にされ居場所があまりない俺でも、こうして数は少ないが慕ってくれた連中がいた。


「…俺は今日で騎士団を首になったから」


「…へ?」


唖然とした表情をするイリーナ。


「…な、なんでですか!先生がいなくては騎士団は!?」


「いいんだ、イリーナ、身体強化すら使えない俺には変革を迎える騎士団には必要ない」


「でも!先生に救われて今の活躍している騎士はたくさんいます!…私、騎士団長に抗議してきます」


「…やめろ」


つい、少し強い言葉が出てしまった。目の前の才能ある若い騎士への嫉妬か…はは、いい年して情けない。


「せ、先生?」


「仮に君の抗議が通ったとして….俺はまた馬鹿にされながら雑用を続けるというのかい?」


「…で、でも」


「…いいんだ、イリーナ、俺はこれで、もうこれ以上、馬鹿にされ続けるのは…」


御免だ。


「…先生」


「…君は、出来損ないの俺の…誇りでもある、これからの活躍を祈っているよ」


「…」


暗い表情のまま黙り込む、イリーナ。


もう…話すことはない。


俺はそのまま踵を返して騎士舎に向かう。










「…ふう」


数少ない荷物をまとめて、騎士舎を後にした俺は、その後、王都の中心部から離れた場所にある安宿の部屋にいた。


さて、これからどうしようかな。


田舎に戻るか、それとも冒険者になるか。


魔力はなくとも、剣術の技術にはそこそこ自信がある。冒険者としてそこそこやっていけるだろう。


あと、こちらもそこそこ自信がある雑務能力でどこかの事務職をやるというのもいいだろう。


おお、以外に選択肢があるじゃないか俺。


はは…はは…はは…クソ、クソ、クソ。


今になって悔しさがこみ上げてきた。


俺は…騎士として大成したかった。人々を助け、国を守る騎士に。


「クソッたれが…」


ベッドに横になる、もう何の気力も湧かない。


もう、こんな人生、終わらせた方がいいのではないか、そうとすら思えてきた」


「クソ、クソ、クソ…




]




































「…ここは?」


気が付いたら俺は真っ白な空間にいた。


…ああ、そうかきっとあの後、寝落ちして…じゃあ夢の中か。


にしては現実感がある。明晰夢という奴か?


「あの」


「!?」


突如声を掛けられた、それは若い女性の声であった。


振り向くと、そこには、銀髪碧眼の美しい少女がいた。


「…君は?」


「私は…この国の第一王女リリー・フィーメル、です」


第一王女、だって?


混乱して何も言えない俺に対して、第一王女殿下は


「今日はあなた様にお願いがあって、あなたをここへ呼び出しました」


そう言った。

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