とわに一緒に 【KAC20232】

はるにひかる

一緒にいようね


わたし、抜井嵎留美ぬいぐるみ、9才!






「──────無理があるか」


 パソコンに向かってネット小説サイトのネタを考えていた私は、深い溜め息と共に身体を背もたれに預け、天井を仰いだ。


 ──私の名前は、貫紅ぬきく留美るみ。24才。

 趣味で投稿する、ネット小説サイトのしがない1ユーザーだ。


 登録しているサイトで、数日毎に発表されるお題に沿った話を投稿するイベントがあり、今回のテーマがと言うことでどうしてくれようかと思案にくれた結果、自分の名前も似ているしいっそテーマをそのまま名前にして乗りきろうかと言う愚行に頼らざるを得ないほどに追い込まれていた。


 そもそも私は、というものに興味はない。

 友達の家に遊びに行った時にベッドの上に置いてあったりして、『まあ、可愛いかな』とは思うものの、自分の部屋に置きたいとは思わない。

 そんな私に、【をテーマにした話を書け】、とは何とも酷な話だ。

 ただの趣味なのだから、『浮かばないから諦める』という選択肢も無くはないけれど、それは何となく悔しいし、逃げグセが付くのもよろしくない。


「どうしようか。──ねえ、ルイス」


 天井から視線を落として訊ねた私に、パソコンの横にちょこんと座ったルイスは、いつもと変わらない笑顔を掛けてくれる。

 ルイスは無口で全然喋らないけれど、私はいつも、この笑顔に癒されてきた。


 ルイスは9年前、あるテーマパークに春のイベントのを開催中の時期に行ったとき、一目惚れして連れて帰ってきてしまった子だ。

 それ以来、私たちは苦しいときや楽しいとき、何処に行くときにも一緒だった。

 愛知県に住んでいる私たちは、その千葉にある東京の海に行くのは中々大変だけれど、世界の歴史的な民家などが展示されている野外民族博物館に連れていって撮ったルイスの写真は、どれも楽しそうだ。


「……よし、もう少し頑張ってみるか!」


 ルイスの笑顔に励まされ、以前友人の部屋で見たぬいぐるみのことを思い出しながら、思い付くままにキーボードを叩いてみる。


 ──大好きだよ、ルイス。

 ずっと一緒にいようね。

 ……永遠とわに……。

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